P&Gマフィア
「P&Gマフィア」。プロクター&ギャンブルのマーケティング出身で、各界で活躍されている方をそう呼ぶそうです。フェイスブックジャパンの長谷川氏、日本コカ・コーラの和佐氏、スマートニュースの西口氏、日本マクドナルドの足立氏などなど。
経理畑の私はマーケティング=広告、販促くらいにしか思ってないのですが、そんなはずはないですよね、きっと。人間心理、統計、歴史など様々な学問の合わせ技なのでしょうか。知らんけど。
とにかく、P&Gなどグローバル消費財企業のマーケティング部門に優秀なマーケターが多く在籍していることは間違いありません。
プロクター&ギャンブルの株主は彼ら彼女らに高い給料を払って働いてもらっています。そのおかげで、プロクター&ギャンブルは高い利益を出し続け、株主は報われています。同社の2011年~2020年の年率リターンは+11.4%。
株式はほったらかしておくだけで複利で儲かると言われます。それは事実です。が、会社の利益のために粉骨砕身で働いてくれる経営者や従業員がいるから、株主はほったらかしにできるのです。
株式の表面利回りを意識してみる
株式投資の世界でPERという言葉は基礎基本ですね。
PERとは一株当たり税引き後利益(EPS)と株価との倍率のことです。EPSが10で株価が200ならPER20倍(200 / 10)。
その逆数が益回りです。先の例で言うと益回りは5%(10 / 200)です。
この益回りは実質利回りと言えます。なぜなら、企業の損益計算書の一番お尻の税引き後利益を見ているからです。
この利益は商品の原価はもちろんのこと、従業員の給料、経営者報酬、その他経費、税金などあらゆる費用を売上から差し引いた後に残った金額です。
プロクター&ギャンブルの2019年12月期の調整後EPSは5.1ドルです。対して現在の株価は129ドルなので益回りは4.0%。
1年前の利益と比較するのは違和感あるかもしれませんが、ちょっと手元にある最新データということでご勘弁を。まあ、P&Gは成熟企業だし良しとしてください。
この4%という利回りどう感じますか?
高い低い?
10年債利回り1%と比べればかなり高いですが、4%じゃちょっと物足りないと思う人もいるかもしれません。
ただ、繰り返しですがこの4%という利回り(PERで言うと25倍)は実質ベースです。P&Gの将来の成長のために投じた設備投資、マーケティング費用などすべて差っ引いた後の利益で計算した利回りです。
それで4%も残るなら十分だと思いませんか?
不動産投資で住宅の減価償却費、修繕費、追加投資、税金などあらゆるコスト家賃収入から引いて4%の利回りなんて残るでしょうか。普通は難しいでしょう。
ここで、プロクター&ギャンブル株の表面利回りはいかほどか考えてみます。
そもそも、株の表面利回りってどう考えればいいでしょうか?
表面利回りとは一般的には経費を差し引く前の収入と投資額の関係を示したものです。たとえば、年間家賃収入100万円で投資額1,000万円の物件なら表面利回りは10%です。
それを株に応用すると、一株当たり売上高と株価の関係が表面利回りと言えるでしょうか。
う~ん、それはちょっとやり過ぎかな。
ってことで、せめて売上原価を差し引いて、一株当たり売上総利益と株価の関係を株の表面利回りと定義します。売上総利益(粗利益)とは売上から原価を引いた金額です。
株の表面利回り=一株当たり売上総利益 / 株価
↑
私の勝手な定義なので覚えないでくださいねw
さて、2019年12月期のプロクター&ギャンブルの一株当たり売上総利益を算出すると14.0ドルでした。それを現在の株価129ドルで割ると利回りは11%になります。
おー、なかなか高い数字ですね。この低金利時代に利回り11%って悪くないですよね。
以下、まとめ。
利益種類 | 金額($) | 利回り |
一株当たり売上総利益 | 14.0 | 10.9% |
一株当たり営業利益 | 6.2 | 4.8% |
一株当たり純利益(EPS) | 5.1 | 4.0% |
(ソース:P&G会社資料、利回りは2021年2月1日終値129ドルに対する数値)
プロクター&ギャンブルの株主は11%の表面利回りを得ています。そこから、優秀なマーケターへの給料、設備投資(減価償却費)、法人税などが差し引かれて、最終的には4.0%という利回りに落ち着きます。
プロクター&ギャンブルのEPS5.1ドルは長期的に伸びていくと想定できます。
資本主義だから?
違います。経営者、社員ががんばって働いてくれているからです。
私たち株主は彼ら彼女らに給料を支払う立場です。社員への給料は株主利益を減らしますが、その高品質な労働のおかげで株主利益が成長していくわけです。決してほったらかしで利益が成長し続けるわけではありません。
フェイスブック、日本コカ・コーラなどで活躍できるような優秀なマーケターが日夜、売上アップのために働いてくれている。そのコストを差し引いた上で4%の利回りが残るなら悪くはない、むしろ投資条件は良いとさえ思いませんか。
P&Gに限らずですけど、私は米国優良企業の財務データを見る度にいつもこんなことを考えちゃいます。株式の利回りは、他の投資商品と比べて実はかなり高いんです。
google日本法人の新社長もP&G出身みたいですね~。
米国でもP&G出身者の華麗なる転身例は枚挙に暇がない印象です。
素直に「すげー」の一言。
P&Gのような企業には優秀な社員が大勢いますが、その人材価値はほとんどバリュエーションに反映されていないように感じます。
いまディフェンシブ株で唯一狙っているのがPGです。
やはり財務優秀です。