サッカー日本代表が辛くもグループリーグを突破し、決勝トーナメントへの進出を決めました。グループリーグ最終戦ではポーランドに0-1で敗れましたが、同時刻に開催されていたコロンビアvsセネガル戦でコロンビアが勝ったため、日本はギリギリで決勝Tに進むことができました。セネガルとは勝ち点、得失点で並んでいましたが、警告数(イエローカード、レッドカード)の差で日本が2位ということになりました。

何はともあれ、結果オーライ良かった良かった。一安心。

ポーランド戦のラスト15分の日本の戦術に対して、各方面から辛辣な批判が寄せられています。日本は「キャプテン翼」で言うところの鳥かご作戦を実行しました。要は時間稼ぎです。セネガルがこのまま0-1でコロンビアに負ければ、ポーランドに負けても警告数の差でセネガルに勝てると分かっていた西野監督は、点を取りに行くのを止めて、安全にボールを回してこのまま試合終了まで持っていくように選手に指示しました。ポーランドも消化試合だったし、1-0で勝てるならそれでいいやってことであまり積極的にボールを取りにこなかったです。そういう相手心理も踏まえた上での作戦指示だったでしょう。

作戦は幸いうまく行って、日本は”予定通り”0-1でポーランドに敗れ、決勝トーナメントに進出することができました。

これに対して
フェアプレーじゃない!
スポーツマンとして恥ずべき行為だ!
この試合を観ている子ども達は失望するだろう。
などなど、数多くの批判が言われています。試合会場もブーイングで包まれました。

確かに、こういう批判が出てくるのは理解できます。観客は全力で戦っている選手を観て応援したいわけですし、あんな「逃げ」のボール回しで自分から敗退するなんて納得できない、スポーツマンシップに則ってないと思われても仕方ありません。

色んな意見があって然るべき。

僕の意見を言います。僕は世論に反するようですが、西野監督の”逃げ”の鳥かご作戦を支持します。

 

プロスポーツはちょっと特殊なショー・ビジネス

バルセロナのイニエスタが32.5億円というアホみたいな移籍金で日本に来ます。レアルのクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表)の推定年収は約100億円、バルセロナのメッシ(アルゼンチン代表)の推定年収は約90億円です。

ほんの一部の上位選手だけが日の目を見ることができる世界とは言え、一流のプロサッカー選手は億単位のお金を稼いでいます。なぜ、サッカーをするだけでお金を稼ぐことができるのか?

それは、ハイレベルなプレーを魅せて観客を感動・興奮させることができるからです。ロナウドのキレッキレのドリブル、縦に落ちるフリーキックを観たいと思うからお金を払ってまでスタジアムを訪れる人がいます。ワールドカップは世界中で大勢の人がテレビに釘付けになるので、凄まじい金額の広告掲載料、放映権料が成立します。

ちなみに、もっとも大々的に広告してもらえる「FIFAパートナー」に選ばれている米国企業としては、コカ・コーラ(KO)やビザ(V)があります。1億ドル以上のお金をFIFAに払っています。昔はジョンソン&ジョンソン(JNJ)もFIFAパートナー企業でした。

サッカーを巡ってやり取りされるお金の量は莫大です。それだけ、世界中の人がサッカーを愛して楽しんでいるということです。

ファンの皆さんに支えられてのサッカー業界です。ファンがいなければ、サッカー選手はお給料を貰えず貧困になってしまいます。だから、選手はファンを大切にします。これはサッカーに限らず、プロ野球も一緒です。

 

世の中には数多くのショー・ビジネスがあります。アイドルのコンサート、サーカス、劇団四季ミュージカル、ディズニー映画、漫才、そしてサッカーなどのスポーツ観戦。ショービジネス、つまりコンテンツ産業は21世紀の成長産業でサッカー観戦も成長市場です。

色んなショービジネス(コンテンツ産業)がありますが、プロスポーツはちょっと特殊だと思うんです。プロスポーツ選手には、サーカスの劇団員やアイドル、お笑い芸人など他のエンターテイナーとはちょっと異なる性質があります。それは、スポーツ選手は自ら積極的に観客を楽しませようと思っているわけではなく、試合に勝つために全力で一流のプレーすることで、結果として観客を興奮させ楽しませているという点です。

ここは、プロスポーツ選手が特殊な職業であり、他のエンターテイナーとは大きく異なる点です。

お笑い芸人はお茶の間を笑わせて人気者になろうと策を練ります。いかにお客さんに笑ってもらって人気を獲得できるかが勝負です。アイドルはCDを買ってコンサート会場に来てくれるファンを楽しませるために、一生懸命パフォーマンスをします。性に合わないと思っても、ファンが喜ぶならぶりっ子キャラも厭わないです。

みんな社会の方を向いています。当たり前です。それが仕事ってもんです。自分が何をしたいか、ではなく社会が何を求めているかを考え、その社会のニーズを満たすエンターテインメントを提供してお金を稼ぐのが普通です。乃木坂46の各メンバーがそこまで考えているかは分かりませんが、少なくとも秋元康さんはそれを(社会のニーズを)考えているから成功しています。

お笑い芸人もアイドルも社会を向いています。お金を払ってくれるファンの方を向いて日々仕事をしています。

一方で、プロスポーツ選手は社会の方をあまり向いてません。別に社会のニーズを満たそうと思ってサッカーをやってるわけではありません。彼らはただ全力でプレーするのみです。そして目的は試合に勝つこと。それでビジネスが成立するのが、スポーツの凄いところです。

選手はファンのことを大切にはしているでしょうが、試合中に「アクロバティックなプレーをしてファンを楽しませよう」とは普通は考えません。ただただ試合に勝つことだけを考えています。ファンにとってもそれで問題ないわけです。一流のプロ同士が勝つために全力でプレーすることで生まれる白熱した試合を観たくて、そんな頑張っている選手たちを応援したくて試合会場に来ているわけです。テレビで観戦しているわけです。

本田圭佑はポーランド戦での鳥かご作戦を踏まえて、こんなことを言っています。

サッカーってエンターテインメントでしょ。そういう意味では結果主義じゃダメ、と僕はずっと思っているんですよ。でも、結果を出さないと誰も俺の発言を聞いてくれない。俺は結果だけを追い求めてきているんですけど、本当はダメなんですよ。本当はいいサッカーしてナンボなんですよ。ブーイングを送っていた、面白いサッカーを見たかったファンには申し訳なかったと思う。でも勝たないと、次に進まないといいサッカーをしてファンを喜ばせることもできないという意味では、理解してほしいなという風には思います

FOOTBALL CHANNELより

さっすが、世界のケイスケ・ホンダ。サッカービジネスの本質をきちんと理解しているんだな~と思います。

本田圭佑がおっしゃっている通り、プロサッカーってエンターテインメント事業です。ショービジネスです。観客を楽しませてナンボです。観客を楽しませることができないサッカーに経済的な価値はありません。観客が楽しんでワクワクしてお金を払ってくれるから、プロサッカーはビジネスとして成立します。

本田圭佑のプロ意識はさすがだと思いました。

でも、(畏れ多いですが)僕は敢えて本田圭佑さんに言いたいです。「そこまで考えなくていいんじゃない」って。

選手自身が「エンターテインメントとして観客を楽しませなくては」っていう使命感を背負う必要は別にないと思うんです。それはいいから、とにかく全力で試合にぶつかって一流のプレーを魅せてくれて、そして試合に勝ってくれればそれでいいです。そうやって、ある意味で観客を無視して、自分がエンターテイナーとして飯を食っているということを忘れて、ただただ少年の気持ちで全力で試合に臨んで欲しい。その全力プレーが結果として観客を楽しませることになります。ビジネスマンとしての冷静さ、客観視をスポーツ選手には求めません。

そういうビジネスマンとしての客観視力がなくても、お金を稼げるところがスポーツ選手の凄いところです。普通のビジネスマンはみんな社会のニーズを汲み取ろうと必死に分析して仕事をしてます。それが普通です。でもスポーツ選手はただ試合に勝つためだけに全力でプレーすることが、結果として社会に価値を生み出します。ショービジネスの中でも、プロスポーツはちょっと特殊です。

選手と監督はただ試合に勝つという1点のみを追求すればいいと思うんです。もちろん、守るべき法律や倫理観は必要ですよ。勝つためだからって、相手選手を買収して八百長試合にすることは許されないのは言うまでもないことです。

 

選手と監督がただ勝つことだけを考えずに、「もっと観客を楽しませなくては」ってことまで考え出すとプロスポーツビジネスはおかしなことになります。

プロ野球のペナントレースのパ・リーグで仮にソフトバンクホークスが、破竹の50連勝を成し遂げたとします(実際にはあり得ないけど)。ソフトバンクの独走です。そうすると、ソフトバンクファンは嬉しいかもしれませんが、段々と試合会場に足を運ぶファンは減ってくるかもしれません。

なぜなら、ソフトバンクの圧倒的独走で激しい優勝争いが起きないからです。「もうソフトバンクの優勝は決まったようなもんだな。これ以上応援する必要もないかな。」「選手も消化試合でやる気出ないかもな。」っていう発想になる可能性があるからです。

プロ野球をビジネスとして捉えると、特定の1チームがペナントレースで独走し過ぎることは良くないことです。最後の1試合までどこが優勝するかわからないくらいにバチバチ白熱したペナントになる方が、観ている方は楽しめます。その方がプロ野球を巡って使われるお金の量も増えます。

でも、だからって50連勝しているソフトバンクの工藤監督に「今のままじゃペナントレースがつまらないものになって観客が減って球団の収入が減る。ちょっとわざと負けろ。」なんて言えるわけないです。

選手と監督に、スポーツのショービジネスとしての価値向上を求めるのって酷だと思うんです。選手と監督に試合に勝つこと以外を求めてはいけないと思うんです。ルールはきちんと順守したうえで、試合に勝つことだけを考えて欲しいです。それが結果として楽しくて興奮できるスポーツショーになります。

選手と監督にただ勝つことだけを求めることは、時に弊害を生みます。それが、先日のポーランド戦です。西野監督と選手は勝つこと(=決勝トーナメントに進むこと)だけを目的に行動しました。その行動が結果として、観ている人にとってはつまらないショー、観る価値のないエンターテインメントをもたらしてしまいました。

サッカービジネスがコンテンツビジネスである以上、観ててつまらないショーを開催してしまった西野監督には責任があるかもしれません。でも、それは仕方ないです。プロスポーツの選手と監督は社会のニーズを満たすことを考えて行動しているわけではなく、ただ勝つために行動しています。それでいいんです。勝つためだけを求めて行動することで、99%のサッカーはショービジネスとしての価値あるものになります。

でも逆に勝つことだけに専念することが、サッカーのショービジネスとしての価値を下げちゃうことがあります。そういう弊害もあります。それは仕方ないことです。本田圭佑が言っていた通り、サッカーは観客を楽しませてナンボのエンターテインメントです。でもだからって、監督と選手がエンターテイナーになることを意識する必要はないと僕は思います。勝つことを絶対使命とするプロスポーツ選手であって欲しいです。

 

ってことで、勝つことに専念してリスクを取った西野監督の鳥かご作戦を私は支持します。プロスポーツの選手・監督はただ勝つことだけに専念してくれればいいです。それが今回のようにスポーツのショーとしてのエンターテインメント性を引き下げることもあります。そんな時もあります。しゃーないです。それが、エンターテインメント性を高めてくれる時の方が圧倒的に多いわけですから、たまに起こる弊害は我慢しないと。

 

終わったことはしゃーない。応援するのみ!

なんか理屈っぽいことを長々と書いてしまいました、失礼。

まあ、色んな意見がありますがもう過去のことです。今は決勝トーナメントのベルギー戦に集中するのみです。7月2日(月)の深夜3時キックオフです。遅い時間でしんどいですよね・・。

私はこの試合のために3日(火)は有休を取得すると上司に宣言してきました。2018年Hiroは社畜と化しています。マジで社畜です。土日も会社に居ること多々あり、有給消化率は5%にも達していません。そんな社畜の私が、Q1決算が始まって忙しい7月に有休取るなんてただ事じゃありませんw。

今回のベルギーはタレント揃いで優勝候補です。守り続けて一発カウンターで何とか1点もぎ取れれば御の字。1点取れれば試合終了まで全力で守備(死守)。勝つとしたら、このシナリオしか想像できません。厳しい戦いが強いられます。

ちょっとミスれば、日本中からいや世界中から批難される選手たちのストレス、プレッシャーはいかほどのものか想像もできません。とにかく頑張って欲しいです。勝つために全力でプレーして頂いて、素晴らしいサッカーショーを魅せて欲しいです。心から楽しみにしています。都内のクッソ狭い1Rマンションからひっそり独りで応援しています。

ガンバレニッポン!!