長期金利の上昇を嫌気したのか、リセッション入りの兆しなのか、何が理由かはわかりませんが米株価はこの2日間(10月10日、11日)で大きく下落しました。NYダウは1,300ドルの下落。と言っても率で言えば5%でまだまだ暴落と呼ぶには程遠いですが。

S&P500指数も当然下げているわけですが、PERで見ると割安感はありません。現在のS&P500指数の予想PERは、株価下落を加味しても約17倍くらいはあるでしょうか。

PER17倍ということは益回りは約6%です。

つまり、今S&P500指数に100万円投資したら今後一年で6万円の利益が見込めるということです。株価と今後1年の利益(EPS)の関係を示したのがPER(益回り)です。

投資利回り6%を高いと見るか低いと見るかは人それぞれです。インフレ率2%を差し引くと実質4%のリターンしかないわけで、株式の高いボラティリティを負担する割には実質4%じゃ満足できないな~と思う人がいても不思議ではありません。

が、、私は優良企業集団S&P500指数の予想PERが17倍というのは、長期保有前提なら全くもって高いとは思いません。なぜなら、目前の利益に対してすでに6%も利回りがあるということは、将来の増益を加味すればもっともっと高い利回りを普通に期待できるからです。

私の勝手な解釈ですが、株式益回りというのは最低保証リターンみたいなものです。S&P500のPERが17倍で益回りが6%あれば、「あ~、S&P500に今投資して30年保有すれば、どんだけ不運でも年率6%のリターンはあるかな~」と思えます。

あ、これはどんな金融商品にでも言えることではなく、S&P500のような将来の増益がほぼ間違いない優良インデックスだけに言える話ですよ。個別銘柄だとここまで楽観的にはなれません。

 

21世紀これまで(2000年~2017年)のS&P500のEPS成長率は約5%(複利ベース、名目)でした。+30%の年もあれば▲40%の年(リーマンショック)もありましたが、17年間を平均すると年率+5%でした。

21世紀の米国のインフレ率は0%台から高くても3%台。このような低インフレ環境で、しかもITバブル崩壊とリーマンショックという二つの危機を経験しながらも、S&P500の利益は年率5%の成長を果たしました。

これからの米国経済がどれほど発展するのか、インフレがどれくらい進むのか予想は難しいですが、年率5%くらいのEPS成長は期待できそうです。もしくは7%か楽観的に見れば9%くらいの成長が可能かもしれません。まあ、名目の成長率なんてインフレ率次第でどうにでも変わりますがね。。

今後30年のS&P500企業のEPS成長率(インフレ率は現状維持と想定)を
悲観:+5%
中立:+7%
楽観:+9%
ということに勝手にします。

中立ケースだとS&P500の利益(益回り)はこうなります。(スマホだとちょっと小さい図です。ごめんなさい。)

S&P500に1000投資したら、最初の1年目の期待利益は60です(益回り6%)。その利益が複利で年率7%で成長したら30年後には427にもなります。投資額1000と比較すると益回りは43%にもなります。

よく期待リターンは年率7%だとか9%だとか言いますが、当初の投資額と将来の利益との利回りを出せばその数字は遥かに大きくなります。

皮算用なのはわかっていますが、S&P500ETFを30年保有すればこんな世界が待ってるわけです。株式投資が長期じゃないと儲けを実感できないのは、この図を見てもらえば一目瞭然かと思います。最初の10年は我慢の期間です。増益を待ち続けることで、最初の投資額は余裕でペイできる利益水準にだんだんと成長していきます。

ちなみに、投資額1000を回収できるのはこのケースでは12年目です。12年目で総利益は1073となって投資額1000を回収できます(実際は将来利益を割り引く必要があるがそれは無視する)。つまり、13年目以降は利益率が100%になるという解釈もできます。そういう意味でも、やはり最初の10年くらいはじっくり待って育てる期間と言えます。

 

さて、せっかくなので楽観ケース(利益成長率+9%)のグラフも載せます。

1年目の利回りは同じ6%ですが、30年後の利回りは73%にもなります。インフレを考慮しても大きな利益であることは感覚的にわかりますよね。

このケースだと投資額1000を回収できるのは11年目です。中立ケースの12年目と1年しか変わりません。成長率が7%だろうが9%だろうが最初の10年くらいは、我慢の期間になるということがわかります。

ただ30年後の益回りは大違いです。中立ケースの43%を大きく上回る73%という結果になりました。長期的に増益増配できる商品を選ぶことが、将来の投資リターンに大きな影響を与えることがよくわかります。

「PERが18倍の銘柄Aより17倍の銘柄Bの方がお得かな~」、「配当利回り2.3%の銘柄Aより、3.5%の銘柄Bの方がお得かな~」などと、そんな買い値で悩むよりも「銘柄Aと銘柄Bとで、どちらの方が長期的な増益率が高くなるのか」を真剣に考えた方が長期投資ではよほど有益だということです。

銘柄選びが難しいと思えば、S&P500を買っておけばいいと思います。楽観ケースは無理でも、中立ケースくらいは期待できそうじゃないですか。S&P500に投資しておけば10年ちょっとで投資額を回収でき、そこから先はウハウハボーナス期間になります。30年後の(期待)益回りは43%。ちなみに50年目のそれは165%です。

 

こういう妄想?をしていると、S&P500に長期投資したらほぼ大儲け確定だなと思ってきます。だって、30年あれば、益回り40%とか70%とかそんなレベルになるのですから。

ただそれは簡単なことじゃないです。じっとETFや投資信託をホールドし続けるのは、誰でもできることではありません。途中でお金が必要になることもあるでしょうし、暴落にビビって売ってしまうこともあるかもしれません。

並外れた結果を出すために、並外れたことをする必要はない。

ウォーレン・バフェット


バフェットはこんなことを言ってますが、バフェット流の長期投資を続けることは「並外れたこと」だと思うわけです。優良企業の株を何十年も保有し続けるって(途中ブラックマンデーやらリーマンショックとかあったのに)、「並外れたこと」だと思います。

S&P500ETFを30年保有し続けることも「並外れた」ことです。常人じゃ無理です。

でもやる価値はあります。相応のリターンで報われます。上のグラフで示した通りです。