仕事のやりがいを感じないと悩む後輩

経理部で働いてるんですが、最近会社の後輩に「今の仕事を続ける気はない。いつか辞めたい。」と相談というか愚痴を言われました。お金の問題かなって最初は思いましたが、そうではなく、仕事のやりがいを感じないというのが理由でした。何のために毎度あんな細かい仕訳処理をして、決算資料を作っているのかわからないと。

確かに、経理ってやりがいを感じづらい仕事だなって思います。新卒で入社して希望外で配属されてしまった人には同情します。

「やりがい」って簡単に言いますけど、具体的に何なのか。これは人それぞれでしょうが、一般的には感謝されることじゃないでしょうか。お客さんの役に立って「ありがとう」と言われたら、今までの努力と苦労が報われた気持ちになるもんですよね。

経理って誰のために働いているかと言うと、一義的には証券市場、投資家のためです。投資家に安心して株を売買してもらうために、会計基準に準拠した正確な決算書を作成して金融庁に有価証券報告書を提出します。

株を持っている人、株の購入を検討している人をまとめて投資家と呼びます。経理部は全国、全世界にいる不特定多数の投資家のために仕事をしているわけで、どんな投資家がいるかはわかりません。顔は見えません。たくさんいるのは知ってるけど、何人いるかは知り得ません。そういう事情があるので、お客さんを意識することは少ないです。てか普段はほとんど意識しません。当然ながら、投資家から「ありがとう」と言われる機会もありません。

仕事の価値は「単価×数量」に分解できる。どちらを重視したいか

仕事の価値を「単価×数量」に分解するとします。明確に数字に落とし込めないのはわかっていますが、思考の為に無理矢理そういう発想をするだけです。

単価が高く、かつ数量も多い仕事は付加価値も高くなりますが、そんな仕事は滅多にありません。大抵は単価か数量、どちらかに重点を置いています。数量も単価も低い仕事は存在しますが、そういう職業はどうしても収入が低くなります。そこそこ稼ぐためには、単価か数量どちらかを重視しないといけません。

単価が高い仕事としてぱっと思い付くのは医師です。医師は特定の患者さんの治療を担当します。1日に千人の患者さんに医療サービスを施すのは不可能です。数量はどうしても少なくなります。しかし、医療は高度な専門知識が必要で高付加価値です。1回の医療判断、手技に高い値段が付きます。医師は単価で勝負する仕事です。

数量が多い仕事としてわかりやすい例は有名ユーチューバーです。登録者100万人を超えるような。動画をアップしたら、数日で100万再生を超えます。それだけで広告収入は少なくとも10万円は超えるでしょう。1再生当たりの収入は小さいけど、それが100万回も積みあがると大きなお金になります。コンテンツビジネスは数量勝負になる傾向があります。コンテンツで高いお金を取るのは難しいですから。なんせハリウッド映画を観るのすら2000円もしませんから。

これは私の考えなんですが、単価重視と数量重視とでそれぞれメリット・デメリットがあります。

単価重視の良いところは、お客さんに近くて仕事のやりがいを感じやすいところです。直接顧客と接することが多く、「ありがとう」と言われることも多いです。医者を想像するとわかりやすいと思います。一方で、単価重視の欠点は労働集約的で心身を消耗しがちという点です。お医者さんは激務ですよね。ホント頭が上がりません。日本の健康インフラは、献身的な医者、看護師、薬剤師さん達が支えています。

数量重視、つまり業務にレバレッジが掛かっていることのメリットは、業務が仕組み化されていることが多く、心身を消耗しない傾向にあることです。数量重視のデメリットは、不特定多数の顧客に間接的に価値を提供することが多く、結果として仕事のやりがいを感じづらいことです。お客さんと直接やり取りすることは少ないです。少ないどころか、全くないこともあります。

簡単にまとめてみます。

これはあくまで一般論というか、私がこういう傾向があるかなと思うだけで、実際は各仕事によって千差万別だとは思います。

大企業の間接部門というのは、典型的な数量重視型の業務です。企業に所属する大勢の社員のため、ないし外部ステークホルダーのために働いています。「ありがとう」と言われることは少ない。しかも、最初に言った通り、経理部は具体的な顧客(投資家)の姿が見えないという事情まであります。「やりがいを感じない」と悩む後輩の気持ちもよくわかります。

ただ一方で、レバレッジの効いた業務は心身を消耗しないというメリットもあります。特定の顧客との接点がないから、クレームを言われたり怒鳴られたりすることもありません。上司から怒られることはありますが。あと業務にレバレッジをかけるためには必然的に仕事を仕組み化する必要があり、結果として体力を使わないことが多いです。空調の効いた空間でPC相手に仕事をすることも多いです。 土日もたいてい休めます。

経理がつまらないからって、たとえば会計コンサルとかに行けば、仕事のやりがいは感じやすいかもしれないけど、仕事量は間違いなく増えます。コンサルは労働集約的で激務です。医者と同じく高付加価値(単価重視)で勝負する業界です。

労働集約的な仕事の方がお客さんとの接点が多くてやりがいを感じやすいけど、仕事内容は大変なことが多いです。やりがいと(相対的な)気楽さ、どっちを取るかですね。 どっちもあるのがそりゃ理想ですが、現実はなかなかそういうわけにもいきませんね。

どっちを重視するかは人それぞれ、仕事観次第ですね。私はいかに心身を消耗しないかを重視しています。仕事は真面目にがんばりはするけど、サラリーマン稼業にそれほどやりがいは求めていません。まあ、そうは言っても私はファイナンス関連の仕事は好きですけどね。誰からも「ありがとう」と言われないのは確かに微妙なところですが、もう慣れました。