投資・金融の世界でオプションとは「将来の特定の期日ないし一定の期間に、特定の商品を決められた価格で売買できる権利」を意味します。

ちょっと小難しい定義に見えますが、要は価格保証です。1年以内にコカ・コーラ株を1株45ドルで買う権利や、半年以内にコカ・コーラ株を1株50ドルで売る権利などです。

オプションを買うと安心できます。1株45ドルでコカ・コーラ株を買える権利を持っていれば、もし株価が高騰して50ドルを超えるようなことがあっても45ドルで買えます。オプションを買うことでマーケットが予想外の方向に動いてしまった時でも、損失(機会損失含む)を限定できます。

もちろん、そんな便利なオプション(権利)をタダで貰えるわけはありません。お金を払って買わなきゃいけません。ストック・オプションとは株式を安値で買う権利ですが、これだってあくまで労働の対価です。世の中甘いことはなく、オプションを手に入れるには犠牲が伴います。犠牲を払ってでもオプションを手に入れたいと思うか、それは人それぞれです。考えが人それぞれだからこそ、オプションの売り手と買い手が存在し、オプションの売買が成立します。

僕はオプションが好きです。オプションを得るためには、進んで犠牲を払う性格です。

「え、オプション取引なんてやってたっけ?」と思われたかもしれません。

金融取引としてはオプション取引はやってません。しかし、実生活ではオプションをたくさん買ってます。お金を払って買うこともあれば、別の犠牲を払って買うこともあります。

僕、ちとビビりです。
ビビりはオプション好きなんです。

良く言えば、慎重。
そう、慎重な人もオプション好きなんです。

日常生活に潜むオプション取引

私は小さなリュックサックで出勤しています。ほとんど何も入っていないので軽いです。ですが、唯一常に入っているものがあります(財布以外で)。

それは折り畳み傘。

いつ雨が降っても大丈夫なように常にリュックに入れてます。普通の傘をいつも持ち歩くのは面倒ですが、折り畳み傘なら問題ないです。降水確率0%の日でも傘は常に持ってます。もしかしたら、雨が降るかもしれないから。いちいち天気予報を見て、持っていくか持っていかないか考えるのが面倒だからという理由もあります。

「折り畳み傘を常に持ち歩く」

これは私にとってオプション取引です。

雨が降ったらいつでも傘を開いて濡れなくて済むというオプション(権利)を買っています。このオプションを買うためにコストは掛かっているか。はい、タダで買えるオプションはありません。折り畳み傘を持ち歩くことによってリュックが重くなること、これがオプション料です。

晴れているのに折り畳み傘を持って出かけるのはちょっと虚しいです。使わない可能性が高いのに、わざわざリュックに入れてるからです。大した重量ではないものの、ちょこっと重くなったリュックを背負って歩かないといけません。休日はよく都内を散歩しているので(運動不足解消を兼ねて)、少しリュックが重くなるだけでも腰にダメージがあるかも・・。

いや、言い過ぎかな。所詮折り畳み傘です。軽いもんです。別にリュックに折り畳み傘が入っていようとなかろうと、背負っている感覚は変わりません。しかも、休日はノートPCが入ってます。リュックの重量の大半はPCであって、折り畳み傘の有無はあまり関係ないです。

つまり、「折り畳み傘を常に持ち歩く」というオプション取引はコスパがいいと判断しています。支払うオプション料(ちょっとリュックが重くなる)に対して、得られる対価(いつ雨が降っても大丈夫という安心感)は大きいと感じています。

東京から福岡に帰る時は飛行機ではなく新幹線を使うことが多いです。時間を決めず適当に東京駅に行って、その場でチケットを買います。この時、往復チケットを買えば少し割安になります。確か3000円くらいはお買い得になったはず。

でも、僕は往復チケットは買いません。福岡から東京に戻る予定日は大体決まっています。なので往復チケット買っても全然問題ないわけですが、買いません。3000円の割引という経済的メリットを放棄してます。

なぜか?

帰りは新幹線ではなく、飛行機で帰りたくなるかもしれないからです。福岡空港って福岡の都心からすっごくアクセスがいいんです。博多駅から電車で10分くらいかな。空港アクセスは日本一だと思います。

5時間半新幹線に乗るのがだるいな~と思う時もあります。そんな時は福岡空港から飛行機に乗れば、東京まで一時間ちょいです。格安航空を選べば、チケット代は新幹線より安いくらいです。

こういう時、もし新幹線の往復チケットを買ってしまっていたら、嫌でも新幹線に乗るしかありません。2万円近いお金を払っているわけだから、それを放棄して飛行機に変更するのは厳しいです。

「新幹線の往復チケットを買わない」

これもオプション取引です。

帰る手段を自由に決めるオプション(権利)を持っておきたいのです。新幹線という一つの手段に限定したくない。そのために3000円の割引を放棄しています。この3000円の機会損失がオプション料と言えます。もし、帰りも新幹線に乗ることになれば、往復チケットより3000円高い代金を支払うことになりますから。

僕は「自由な感じ」が好きです。それは選択肢が多い状況と言い換えることができるかもしれません。選択肢、権利、つまりオプション。オプションが好きなんです。将来の選択肢を多くするためであれば、多少の犠牲を払う覚悟はあります。たくさんのオプションを手にしても、結局そんなにオプションは行使しないかもしれません。それはもったいないことかも。そこは自己責任です。

私にとって最大のオプション取引。それは賃貸住宅に住むこと。

今紹介したオプション取引はほんの些細なことです。金額も小さいです。折り畳み傘にいたっては金銭の支出もありませんし。

いま私が行っている最大のオプション取引、それは賃貸住宅に住むということです。家賃とは高額なオプション料です。

賃貸は身軽です。お隣さんに変な人が引っ越してきたら、引っ越せば解決します。東京から札幌に移住したいな~と思えば、仕事のことを無視すれば簡単に引っ越せます。実家がある福岡へも簡単に戻れます。

賃貸にすることで住む場所を自由に変えることができます。もちろん引っ越し費用や仲介手数料、礼金といったコストが掛かるので、ポンポン引っ越すのは難しいですが、そういう多少の金銭問題を無視すれば住む場所は柔軟に変えれます。

賃貸にすれば、1Rの小さな家から3LDKの広い家に移り住むこともできます。逆に大きな家から小さな家に移り住むことも可能です。うちの両親は分譲マンションに住んでますが、子ども二人が自立した今となっては部屋が余っている状況です(母曰く、孫が泊まれるスペースになるからそれで良いとのこと)。

家賃とは「住む場所、家を自由に変えることができる」というオプションを買うためのコストと解釈できます。

都内の高い家賃を払い続けていてヒシヒシと感じることですが、広告費などが業者利益がたんまり乗った高級マンションでもない限り、家は借りるより買った方がお得だと思います。賃貸と購入の損得計算とは定期的に経済誌などで話題に上がる定番テーマですが、ああいうのは前提条件次第でどうにでもなります。

所有よりも利用の方がコストは割高です。賃借は所有リスクをオーナーに転嫁している分、高いコストを払う必要があると考えるのが自然です。最近、カーシェアリングやカーリースといった車の一時利用サービスが人気ですが、ああいうのは車の利用頻度が低い人にとっては経済合理的です。でも、毎日車に乗るのであれば購入した方がお得だと思います。計算したことはないですが。

一般的に言って、稼働率が高いものは借りるより買った方がお得です。車は稼働率が低いケースもあるので(乗るのは休日の昼間だけなど)、レンタルがお得になる場合が結構あります。でも、自宅は稼働率がめちゃ高いです。平日仕事で出払っているとは言え、帰宅してから翌朝出社するまでは家にいます。働いていない奥さんや子どもがいれば、家の稼働率は100%に近くなります。

家は稼働率が高いので、賃貸より購入の方がお得になる気がします。うまく中古物件を選別できれば、購入の優位性がより際立つでしょう。

家賃は高いです。私は月6万円という都内にしては安い家に住んでいますが、それでも年間で72万円、10年で720万円にもなります。30年では2000万円を超えます。50年では、、ああもう計算したくない。

オプションを買ったら、そのオプションを行使しないともったいないという感情がふつふつと湧き出てきます。全くオプションを行使しないにもかかわらず、何年も真面目にオプション料を払っていると段々バカらしくなってきます。まあ、オプション料とはそういうもんですけどね。保険みたいなもんだから。

家賃とは不動産の所有リスクから解放され、自由に住む場所を変えれるオプションの対価。こう考えると、定期的に引っ越したくなります。引っ越さないと、賃貸住宅に住んでいる意味が半分失われる気さえしてきます。

もし定住する覚悟があるなら、低利で借金してうまくローン減税も利用して家を買った方が、賃貸よりも遥かに安く済むと思います。支払いが終われば、毎月の支払いゼロで住居を確保できるのも安心です。

私はまだまだ立場的に住居のオプションが必要です。東京で働き続けるかわからないし、将来家族を持つこともあるかもしれません。今東京に一人暮らしサイズのマンションを買うのはちょっとリスキーです。将来の選択肢があまりに狭まってしまう。

少なくともあと5年~10年は、家賃という高額なオプション料を払い続けることになりそうです。というか本音を言うと、私は一生賃貸生活をしていると思います。なぜなら、選択肢が多い「自由な感じ」が好きだからです。縛られるのが嫌いだからです。

でも、「自由な感じ」を得るためとは言え、都内の家賃は高過ぎる気もしています。10万円程度の家賃(=オプション料)が全く気にならないくらいの経済力があればいいのですが、その領域には全く達していません。米国株投資がんばれってことか。

にしても都内の住宅費はホンマに高い。香港やカリフォルニアに比べれてば全然安いのでしょうけど・・。身軽な生活はコスト(オプション料)が掛かります。