株主は損をすることがありますが出資額を限度とします。株主有限責任と言います。損失リスクをテイクするから株主には儲かるチャンスが与えられます。しかし、損失リスクと言っても最悪でも元本をすべて失うだけです。

この有限責任というセーフティー・ネットが資本の集結をもたらし、現代の大企業が形成されるに至りました。「金を失うのは怖いけど、出資金以上に損しないなら投資してもいいぞ!」という人が大勢いたわけです。あなたもそうですよね。無限責任で私財まで失うリスクがあるとしたら株式投資やってましたか?

ビジネスの総リスク量は変わりません。100あるリスクを誰にどれだけ配分するかの問題です。100すべてが株主に配分されているよう見えるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら株主は有限責任だからです。各ステークホルダー間でうまくリスクを分散しています。万が一会社が倒産したら債権者は泣き寝入りになるかもしれません。株主にまで請求することはできませんから。

私たちが住む地球は奇跡の星です。地球がこれほど生命に満ち溢れた星になれたのは、あらゆる要素のバランスが絶妙だったからです。太陽とのほどよい距離、ほどよい公転軌道、空気を宇宙に流出させないくらいの程よい重力を生む質量、ほどよい風をもたらす自転速度。すべてがほどよかった。

動物が互いに協力できるのは普通は数十人くらいが限度らしいです。『サピエンス全史』で読みました。それが現代の人間は、数万人が同じ企業に属して協力し合っているいることもあります。これは資本の集約がもたらした奇跡とも言えます。資本の集約をもたらしたのが絶妙なバランスでのリスク配分です。最適なリスクの配分比率を決定し、法律などの規制などでその比率を保証する。あらゆる主体のリスクとリターンがうまく均衡しています。

地球誕生が自然の奇跡なら、株式会社誕生は人工の奇跡とでも言いたいくらいです。