先日、ゼネラルエレクトリック(GE)が四半期配当を0.12ドルから0.01ドルにすると発表しました。1セント・・。これは事実上の無配転落と解釈できます。

2015年度61億ドルの赤字に続き、2017年度にも58億ドルの最終赤字を計上し同年に配当を50%カットしました。それからわずか1年で実質無配となりました。

GEの一株当たり四半期配当
0.24ドル(2017年初)

0.12ドル(2017年末)

0.01ドル(現在)

2016年に30ドル台だった株価は現在一桁9ドル台。株価とは将来の配当を集約したものです。また、遠い将来の配当よりも、数年後の近い将来の配当がより強く株価に反映されています。(実質)無配にまでなれば、株価が下がるのもやむなしです。

1990年代、エクソンモービルと並んでNY市場で最大の時価総額を誇った企業は、いまやNYダウからも除外されるに至りました。

配当再投資によって長期で高いリターンを狙うなら、株価が下落してもめげずにナンピン買いしていく必要があります。なぜなら、株価下落は配当利回りの上昇につながり、高い配当で下落した株を買い増すことで保有株数が増えるからです。そして、いつか来たる株価上昇局面で大きな利益を手にすることができます。

ただし、この理論は減配しないことが大前提です。投資家期待が低く株価の上値が重い銘柄は配当再投資戦略に適していますが、株価下落がミスターマーケットの感情によるものではなく、業績低迷・減配として実現してしまえば意味はありません。

20世紀後半にフィリップモリスが年率19%という超ハイリターンを実現できたのは、度重なる訴訟問題で株価が長期低迷したものの、一度も減配することなくむしろ増配を続けることができたからです。

保有銘柄が減配してしまったら、その後復活を遂げるとしてもS&P500平均のリターンを超えることはかなり難しくなりそうです。将来は誰にもわかりませんが、なるべく減配しない銘柄を選んできおきたいです。

ただ、GEの例からわかることはどんな優良企業でも減配はあり得るということです。絶対に減配しない銘柄を事前に選ぶことは不可能です。人生と同じで、投資も何があるかわかりません。一寸先は闇。

投資した後はしっかり決算内容をウォッチして、減配懸念を抱いたら損切りすることも必要です。

・・・

でも、そんなことできるものかな??

うーん、どうでしょうか。難しいかもしれません。ちゃんと財務諸表を読めたとしても、感情が邪魔をして損切りできなさそうです。

以下はFY08~FY17のGEの営業CFとフリーCFの推移、営業利益と純利益の推移です。

キャッシュフローを見ると年々営業CFが小さくなっていることがわかります。何とかプラスを維持してきたものの、FY16(2016年12月期)決算でついに営業CFはほぼゼロ、フリーCFはマイナスに陥りました。FY17はマイナスではないものの、営業CFもフリーCFも小さいままです。

損益計算書を見ると、FY15とFY17で最終赤字になっています。期ズレはあれど利益とキャッシュは連動しています。FY16でキャッシュフローがマイナスになるのも当然です。

今振り返ると、FY15~FY17の決算をウォッチする中で、今回起こった減配を予見して株を手放しておくべきだったと言えるかもしれません。

しかし、それは机上の空論に思えます。仮に自分がGE株ホルダーだったとして、実際にFY15~FY17の決算結果を見て株を手放す決断ができただろうか?

多分、無理だったと思います。

2016年末時点ではまだ株価は30ドル近くあってマーケットは今ほどの悲観ムードではなかったです。もう1年くらい様子見ようかなってなりそう。営業CFマイナスは不気味な感じがするけど、もう少し決算の様子を見てから決めようかなって思いそうです。自分の性格的に・・。

じゃあ、二度目の最終赤字を計上したFY17決算後はどうだろうか?

もうこの時はすでに株価は20ドルを切るまで下落しており、損切りするくらいなら将来の復活を信じてこのまま保有するという判断をしていたと思います。減配ならまだしも、無配になるほど体制が崩壊しているとは夢にも思いません。あと、理屈どうこうではなく、損失を確定したくないという心理面が行動の大きな制約になったのではと想像します。

「GEほど歴史ある優良企業なら、きっと復活するはずだ。」
こう考えそう。

営業キャッシュフローがマイナスの企業は危ない。

確かにこれは一般論として正しいですが、それでも1年くらいは様子を見ようと株をホールドすることは普通にありそうです。で、結局業績悪化に歯止めがかからないことが分かる頃には、すでに株価は半値に下落しており、「もーいいや!」って思って現実から目を逸らしちゃいそうです。

投資にかかわる決断で、ネックになるのは理論的な分析ではなく感情です。ファイナンス論の知識なんて何の助けにもなりません。

「あ、確かに過去税引き後利益は2回もマイナスになっているし、営業CFもマイナスになっているね。だからちゃんと財務諸表を見ていれば将来の減配も予測できますね。」などと教科書風に言うのは簡単ですが、それは今だから言えることです。第3者目線だから言えるに過ぎません。

実際に株主として、その境遇にいればそんな冷静に判断することはできないと思います。繰り返しですが、財務分析力の問題ではなく感情の問題です。ちゃんとGEのキャッシュフロー計算書、PLを見ていたとしても、事前に損切りすることは難しいだろうと思います。

じゃあ、どうすべきなのか?
対策はあるのか?

ありていな対策ですが、分散投資するくらいしかないと思います。あとそもそも個別株投資を止めてETFや投資信託にするか。

どんな優良銘柄でも減配のリスクはあります。最近はクラフトハインツ(KHC)やケロッグ(K)、ゼネラルミルズ(GIS)など伝統的な食品メーカーが苦戦しています。ハイテク大手は総じて好調ですがIBMには暗雲が立ち込めています。タバコはこれからも売れ続けるのでしょうか。石油エネルギーはどうなる・・。

クラフトハインツ、ゼネラルミルズ、IBM、フィリップモリス、エクソンモービルなどが将来減配を発表する可能性はゼロではありません。「優良株で永久ホールドだ!」と思って投資することが多い銘柄ほど、減配のリスクを感じても手放すことが難しいもんです。

私はかつて、GEへの投資を検討したことがありました。資本財セクターとしてGEかボーイングかスリーエムのどれかがいいかな~と考えていた時期がありました。結局、どれにも投資してませんが。

私がGE株を保有していないのは単なる偶然に過ぎません。なので、GEの無配転落は対岸の火事とは思えません。

どんな優良銘柄でも減配はあり得ます。個別株投資をする以上そのリスクを完全にゼロにすることはできません。栄枯盛衰、諸行無常。

たとえちゃんと四半期決算をウォッチしていたとしても、マーケットが悲観的になって株価が下がる前に、自分だけ先んじて株を手放して逃げるのは多分無理です。かなり難しいと思います。

だから、自分の保有銘柄でも減配はあり得ると想定、覚悟しておくしかありません。そのために、ちゃんと分散投資する。ありきたりな結論ですが、これしか思い付きません。脳ミソは自分が思っているほど合理的な判断はできないと、謙虚さを忘れずに投資を継続するしかありません。