「支出は投資、消費、浪費の3つに区分しよう」なんてよく言われますよね。

こんなこと言えるのは、個人だからです。
消費と浪費は個人(家計)だけに許された特権です。

世の中には3つの経済主体があります。家計・企業・政府の3つです。この中で企業と政府は消費が(浪費も)許されません。この2主体は常に投資だけを求められます。

企業で考えるとわかりやすいですよね。企業は株主から資金を預かって運用している営利団体です。常に利益を追求する責務があって、稼いだ利益を株主に還元しなくてはなりません。取締役と経営者は株主から経営を委託されています。その株主からの委託を忠実にこなさなければ法律違反となります。

取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない

会社法第355条

企業のあらゆる支出は投資としての意味がないと許されません。一見消費に見えるような支出も投資として解釈しなくてはなりません。

たとえば、経理部の忘年会を会社経費30万円使って行ったとします。みんなでお酒飲んでパーっと楽しんだとします。

これは消費?

いえいえ、やはり投資です(そう解釈する)。従業員の1年間のがんばりを労って、「来年からも皆で協力していい仕事をしましょう!」と士気を上げるための支出です。30万円の支出によって、従業員の忠誠度が上がって仕事を頑張ってくれて、ひいては会社の利益に貢献します。するはずです・・。

本当に効果があるかどうかは測定できませんが、少なくとも名目上はそのような理由での支出でなくてはなりません。それが株式会社の宿命です。消費は許されません。株主のお金で消費、浪費したらいけません。会社は利益を追求して社会に富を生む場所なのです。

やっぱりオンとオフの切り替えは必要だなあと感じます。仕事をプライベートの延長にするなんて、私には無理です。あ、ちなみにうちの会社は忘年会に1円も会社予算は出ません。

部長がビジネスクラスで出張するのも投資です。部長クラスともあれば、飛行機内でもしっかり仕事してもらって、また体もゆっくり休めてもらって、出張先での重要業務をきちんとこなしてもらう必要があります。それだけ付加価値の高い仕事を任されている立場です。ビジネスクラスの航空運賃は投資です。

たとえ部長がビジネスクラスでワイン飲みまくって仕事のことなど1分を考えることなく、むしろ二日酔いで仕事に支障をきたすようなことがあったとしても、ビジネスクラスの旅券代は投資なんです。

経理部にはほぼすべての事業部の稟議決裁が回ってきます。私は決裁権者ではありませんが、興味があって毎日ウォッチしています。

まあ、ようわからん決裁が回ってきますよ。

◆某有名書道家を招いて、屋形船で幹部新年会を開催する。幹部間のコミュニケーションを円滑にし、今後の業務を円滑にする。総額200万円。

◆ベルギーに出張する。一般社員の宿泊ホテルは会社規定を超過しているが、同行する執行役員〇〇さんとの仕事の効率を優先し、一般社員も同じホテルに宿泊する(某高級ホテル)。一泊300ユーロ。

などなど。理解できるようなできないような・・。

こういう支出も投資なんです。
あくまで投資です。消費ではない。

みなで宴会を楽しんで、書道家の達筆を楽しんで親睦を深めることが将来の仕事に活きるのです。ひいては、会社の売上・利益に貢献するんです。(ホントに貢献するかは知らんけど・・)。

まあ、とにかく会社の支出はすべて「投資」に分類されます。消費なんて1円も許されません。そりゃ会社はしんどい空間になるわけだ。

 

個人は違います。

個人は消費が可能です。経済性なんて追求する必要はありません。

リセールバリューを考えたら白か黒の車が良いけれど、赤が好きなら赤の車を買えます。周りにどれだけ馬鹿にされようとも、大好きなまいやんを応援するために乃木坂46のCD1000枚買うのも自由です。スマホでいつでも時間を確認できる時代ですが、好きならIWCのポルトギーゼ買えばいいです。自分の金なんだから、文句を言われる筋合いなんてありません。

個人は好き放題お金を使えます。

そんなの当たり前?

確かに、自分が稼いだお金なんだから好きに使えるのは当たり前です。ですが、その当たり前を大切にした方がいいな~と最近思います。

というのも、私たちは1年のうち大半を「投資」が強制される環境に身を置きます。会社です。会社での意思決定は常に「投資」の効果を求められます。

新製品を開発するにも、人を採用するにも、福利厚生制度を作るにも、宴会をするにも、出張するにも、あらゆる行為に経済性が求められます。

会社では何をするにもカネカネカネ。

そりゃ疲れるわ。

で、家に帰ってプライベートに戻ってもカネカネカネ。

はい、これ私のことです(笑)。

 

株式投資はその名の通り「投資」ですから、常に経済性を考えて意思決定します。いかに儲けを得られるのか、その1点のみを考えて意思決定をします。

せっかく「消費」が家計だけに許されている特権なのに、仕事から帰ってもなお「投資」のことしか考えてない人生は何だか味気ないな~と寂しく感じる時があります。気楽に楽しく投資に取り組んでいるとはいえ。

仕事では常に意味を求められます。
なんで、その支出が必要なのか説明できなくてはなりません。

なんで、1週間も出張が必要なのか?
なんで、そのシステムを導入する必要があるのか?
なんで、今のコンサルともう1年契約する必要があるのか?
なんで、その従業員に研修を受けさせる必要があるのか?


でも仕方ないです。会社はそういう場ですから。遊びじゃありませんから。

個人(家計)はお金の使い方に意味を見出す必要はありません。

個人のお金の使い方を批判するのは完全に余計なお世話というものです。何に価値を見出すかは人それぞれです。

意味のない支出、これが消費の醍醐味です。もちろん傍から見たら意味がないように見えるだけで、本人にとっては意味があるわけですが、意味があることを客観的に数字で示す必要なんてありません。自分が満足ならそれでOK。

なんとなく楽しい、持っているとワクワクする、インスタ映えする、カッコイイ、こういう理由で好きにお金を使えるのは個人(家計)だけです。それが消費です。

株式投資は「投資」ですから、数字でその経済合理性を説明できる必要があります。仮定、予測はたっぷりでも何らか説明を求められがちです。

なんで、インデックス投資が良いのか?
なんで、S&P500ではなく高配当ETFなのか?
なんで、日本株ではなく米国株なのか?
なんで、つみたてNISAではなく一般NISAなのか?

「投資」だから、数字で客観的に測れるリターンを求めているから、なんで?なんで?となるのは仕方ありません。そこを追求するから株式投資は儲かるわけですし。テキトーに投資して儲かる世界ではありません(猿が銘柄選んでも儲かるとも言われますが・・)。

株式投資はそれはそれで利益を追求すればいいと思います。

が、せっかく自由に金を使える個人(家計)なんだから、投資なんて忘れて消費をたくさんした方がいいな~とよく思います。人生を楽しむには投資より消費だなってやっぱ思いますね。当然のことを言ってるだけかもしれませんが、普段これだけ「投資」に染まっている私は意識的に消費脳に切り替える必然があるんです。放っておくと勝手に投資脳になっちゃうので。

投資脳を持てると人生をうまくサバイブしやすい気がしますが、それがイコール幸福な人生になるとは限らないかな~と思います。