私の死後、取締役会が報酬コンサルタントを雇ったら、私はこの世に戻ってくる。
(ウォーレン・バフェット)

日経新聞より

日経に載っていたこのバフェット氏の発言読んで笑ってしまったw。
取締役会最中にバフェット亡霊が現れたら怖いですね~。

バフェット氏は別に報酬コンサルタントを特別に毛嫌いしているという意味ではないです。

バフェットはコンサル全般があまりお好きではないようです。
それは、コンサルって専門家集団だからどうしても費用が高くなるので、コンサルを活用することが株主価値向上に反すると考えているからでしょう。

私は別にそうは思いませんがね。
特にシステム導入なんてコンサルの支援なしには事実上不可能ですし。
まあ、コンサル有用無用はここで議論することではないです。

やはり、バークシャー・ハザウェイが今まで無配を貫きつつも、常に株主利益を向上させてきた所以がこのバフェットの発言に滲み出ているなと思ったんです。

 

 

 

私は、しょっちゅう配当が大事だ、高配当な企業に投資をすることで長期投資パフォーマンスを向上させることができるはずとブログで言っています。
それは本心からそう言っています。

じゃあ、無配のバークシャーはどうなん?
って話になります。

なんでバークシャーは無配のまま、ここまで高い株主リターンを提供してこれたのでしょうか?
バークシャーの過去52年間の年率リターンは約19%です。

1年だけでいいなら19%もそう難しくはないです。
ちょっとヤマを当てればいいんです。

でも、19%を52年間続けるのは普通じゃ無理です。
20世紀後半最高の株式リターンを上げたフィリップモリスの年率リターンが約19%です。

何も知識がない状態で60年前にタイムスリップしたとして、フィリップモリス1銘柄に資金突っ込んで半永久保有できますか?
多分、無理だと思います。

100万円を年率19%で52年運用すれば、約85億円になります。
途方もない金額です。

このバークシャーの凄まじい投資リターンの秘密の一端が、冒頭のバフェット氏の言葉に表れていると思います。

私の死後、取締役会が報酬コンサルタントを雇ったら、私はこの世に戻ってくる。

つまり、とことん株主目線のお金の使い方をするということです。

株主利益にとって無駄になる可能性のあるお金の支払いはすべて拒否する。
株主資本の活用についてめちゃくちゃ厳しい。

それは、バフェット自身が大株主で利害を一般投資家と共有しているということもあるし、何よりもバフェットの真面目な性格による所が大きいと思います。

そもそもね、配当なんて本当はいらないんですよ。
配当なんて本当は早めにたくさんもらい過ぎると損なんです、税務的に。
配当貰う都度、所得税が発生するわけですから。

株式投資のリターンは突き詰めるとすべて配当だから、「配当いらない」って言うのはちょっと言い過ぎですが。
配当は欲しいのですが、その配当は今じゃなくて何十年か後にドーンと払ってくれる方がいいんです。
それまでは会社内で内部留保再投資してくれた方が、その間株主には課税が生じませんから。

感情的には都度キャッシュを貰ったほうが嬉しいのはわかるのですが、机上の計算としては利益は配当せずに内部留保して再投資した方が投資家にはお得です。
(ただし、再投資の投資利回りが資本コストを上回っている必要がありますが)

税金というキャッシュアウトはなるべく後回しにしたほうが、投資家にとっては絶対にお得です。

普段、配当が大事大事って言い続けていますが、本音を言えば配当支払いはなるべく後に繰り延べて欲しいです。
内部留保を増やして高い投資効率の事業に投資して、株価向上という形で株主リターンを上げて欲しいというのが本音です。

でも、それはあくまで理想論なんですね。
現実の経営現場ではそんな理想論通りにはいかない。

過剰に留保された利益は必ずしも株主利益向上に役立つ形で使われるとは限らない。
ちょっとお金がたくさん余っているから、経営戦略策定にマッキンゼー使うか~とか、予算余っているから得意先と会食会やるか~とか。

費用対効果って難しくて、費用は金額ではっきり目に見えるけど効果測定は難しいです。
マッキンゼーのコンサルティングサービスを活用して、どれくらい自社利益に恩恵があったのは事後的にでも測定するのは難しいです。

経営者にまで上り詰めるような人にはスマートで紳士な人が多いでしょうが、そんな彼ら彼女らも普通の人間としての感情を持っています。
経営者として有名になりたい、名を残したいと思う感情くらいあってもおかしなことではありません。

潤沢なキャッシュを目の前にしてそれをそのまま株主にお返しするより、野心的なM&Aに”チャレンジ”したいと考えるかもしれません。
その”チャレンジ”は言うまでもなく株主のお金でなされるわけです。

どれだけ優秀な経営者でも株主資本を株主利益のために使ってくれるとは限らないということです。

だから、投資家は”やむを得ず”配当を大切にした方がいいと言えます。
Show me the moneyに勝る経営者への株主監視機能(内部統制)はないということです。

長期投資で配当を重視する姿勢を貫くという行動は、経営者の野望や会社組織の暴走から株主資本を守るための株主の防衛策と言えると思います。
経営者や従業員を半分、、いや70%信用して仕事を任せるのですが、もう30%は信用しないというスタンス。
性善説と性悪説の間。
配当重視とは、そんな投資スタンスなのかもしれません。

 

で、バークシャーの話。
バークシャーの場合は、上述の「優秀な経営者でも株主資本を株主利益のために使ってくれるとは限らない」が当てはまらないわけです。

なぜなら、バフェットがいるからです。
彼の株主資本活用への飽くなき拘りがあるからこそ、バークシャー・ハザウェイは今までずーと無配を貫いてきたにも関わらず、高い株主リターンを達成できたわけです。

バークシャー株の投資リターンはすべてキャピタルゲインです。
無配ですから。

普通の会社なら無配にして会社内部のキャッシュが潤沢になると、色んな投資案件に手を出してしまいがちです。ですが、バークシャーはきちんと目利き選別をして高い投資リターンが望める所のみに資金を再投資してきました。
だからこそ、年率19%なんていう法外な投資リターンを株主へもたらすことができたわけです。

普通の会社ならコンサルが必要なら使おう!と簡単に稟議決裁が下りるところ、バークシャーはそうではないということ。

 

 

 

私は、今現在バークシャー・ハザウェイに投資していません。
それは無配が嫌だからというのが先ずあります。

ただ、バークシャーの無配は他のアマゾンやグーグルのような成長企業の無配とは違います。
バークシャー自体はある程度成熟企業であっても、CEOたるバフェットが「株主資本の管理者」としてバークシャー株主よりも魅力的なお金の使い道があると判断しているから無配なのです。

私は無配だからバークシャーに投資していませんが、別にバークシャーが無配なのに否定的な気持ちはありません。

バークシャーは実質的には有配の成熟企業だと思っています。
配当再投資を我々個人投資家に変わって、バフェット自身がやっているみたいな印象を持っています。
その結果無税で再投資できるのですから、バークシャー株主にはありがたいことです。

私がバークシャーの無配が嫌で投資していないというのは、経済合理性から離れたちょっと感情的な理由によるところが大きいです。

で、さらにバークシャーに投資していない理由があります。
それはバフェットの寿命です。

バフェット自身も「死後」の話に言及している通り、バフェットは1930年生まれで現在御年86歳です。
いつも元気にチェリーコークを飲んでいるように見えるバフェットですが、さすがに後30年も40年も生きることはできないでしょう(失礼ながら)。

バークシャーが無配という資本政策を貫き続けて、ここまで投資家課税を繰り延べた上で高い株主リターンを達成できたのは、やはりウォーレン・バフェットという個人の存在が大きかったと思います。

冒頭に紹介した言葉からわかる通り、常に株主利益を配慮したお金の使い道を熟考し続けているバフェットの人柄・性格がバークシャーの投資リターンに与えた影響は計り知れないと思います。

バフェットの銘柄選択術が並外れていることは言うまでもありませんが、バフェットの株主資本管理術もやはり並外れていると思います。
それはファイナンスやビジネスのスキルというより、もっと人間的な性格というかヒューマンスキルみたいなものかな~と思います。

バフェットの株主資本管理術はバークシャーの経営理念として浸透しているかもしれないし、有力後継者と目されているグレッグ・アベル氏に引き継がれているかもしれません。
ですが、それはわかりません、不確実です。

バークシャーハイリターンの秘密は、バフェットの投資スキルだけでなく、バフェットの人間性も大きくあるんじゃないかと思ってるんです。
で、投資に限らずですけど、スキル技術的な要素は継承できても、ヒューマン的な要素ってなかなか継承が難しいと思っています。

そういうわけで私は今まで一度もバークシャーに投資していないし、これからも投資する予定はないです。