中国の格差縮小政策
当局の締め付けを嫌気してここ数か月、中国株が大きく下げていますね。不動産や学習塾、ゲーム業界などが特に狙い撃ちにされています。
これまでは国家の富拡大のために純粋資本主義を許容してきましたが、ここに来てついに共産党の本来の思想である社会主義に傾きつつあるということでしょうか。富の創造よりも分配に力を入れるという当局の強い意志を感じ取ります。
中国企業の株式を保有していた資本家はたまったもんじゃありません。国家による富の強奪みたいなものです。こういう政治リスクは予見不可能で怖いですね。下落しているからといって、今の中国株に手を出す気にはなれないです。不透明な政治リスクに見合うリターンではないと感じます。
さて、中国は「共同富裕」を掲げて格差の縮小を目指しています。その発想自体は個人的には否定的ではありませんが、上手くいくとは思えないです。
テクノロジーが社会の生産性を大きく向上させましたが、富はそのテクノロジーを生み出した起業家、資本家に集中しています。リスクを取ってビジネスを成功させた対価を得ているわけなので、富が集中するのは仕方ないことです。
ただ、とは言え、いくら何でも経済格差は拡大し過ぎだから何とかせねばという焦燥感が、為政者にはあります。
当局が強い力を持っている中国では、あれほど急激かつ強大な企業の締め付けが可能なわけです。無理やり中央に金を差し出させ、それを国家の裁量で分配しようとしています。
確かにそうやって内陸部の貧しい人々に資源を配分すれば経済格差は縮小するかもしれません。
でも、私有財産権を否定しちゃうと社会は円滑に運営できないと思います。
仕事を頑張るのは自分の好きなように給料を使えるからです。危険を承知で起業するのは、成功すれば金持ちになっていい生活を送れると信じれるからです。企業が研究開発に力を注ぐのは、その成果を特許として国家に保証してもらえるからです。
私有財産の保護が認められないなら誰も頑張らないです。一生懸命頑張っても、その成果を国家や他者に奪われるからです。社会のために努力する者が馬鹿を見る社会は繁栄しません。
経済格差があまりに酷いから、成長から分配に舵を切ること自体は決して反対ではないけれど、株価を暴落させて資本家の財産を奪ってしまう環境では豊かな社会は実現できないと思います。
西側先進諸国の格差縮小政策
じゃあ、西側先進諸国はどうなのか?
アメリカも日本も年々経済格差は広がっています。
西側の民主主義国家は、中国のように国家が無理やり資本家の富を奪い取って国民に分配するという荒業はできません。相続税や金融所得税を厳しくするだけでも一苦労です。金持ちは政治力を持っていますから。
西側諸国の経済格差縮小の手段は主にMMTになるというのが個人的意見です。コロナ禍である程度は紙幣を刷ってばらまいても社会は混乱しないことがわかりました。金利もさほど上がっていません。
例の10万円の特別給付金のようなヘリマネが正しいかどうかは議論が残るところですが、政府が借金して市中経済に金を流通させていくという流れは不可逆だと思います。
ただこれも問題があって、経済に流通するマネーの量が増えれば増えるほど最終的には資本家の口座にお金が流れていくということです。
日本では金融緩和が続いていますが、豊かになったのは株や不動産を所有していた資本家だけですよね。労働者の給料はほとんど上がっていません。金融緩和で景気が良くなったと言っても、労働者層に実感がないのは当然です。
金を刷って国民に配れば一時的に所得格差を縮小させることができますが、最終的にはそれが資本家を利して格差を広げてしまうというジレンマがあります。
西側でのゲームに勝つための基本戦略
資本主義でも社会主義でも、すべてをぶち壊す戦争でもない限り、経済格差の縮小は不可能というのが今の私の見方です。
中国の「共同富裕」政策は成長を犠牲にし過ぎる。西側のMMT政策は結局資本家を優遇してしまう。
「資本主義の欠点は、幸運を不平等に分配してしまうことだ。社会主義の長所は、不幸を平等に分配することだ」とチャーチルは言いました。
完璧な制度はありませんが、どっちがマシかと聞かれれば資本主義ではないでしょうか。日本に生まれて良かったです。
資本主義は幸運を不平等に分配する制度なわけですが、重要なことは幸運を多く分配してもらえる場所にいることです。これからこの不平等の度合いがさらに強まると予想します。
お金じゃぶじゃぶの世の中と言われても、労働者の立場ではそれを実感できません。なぜなら、労働者には幸運が平均以下しか分配されないからです。
今みたいにお金の価値が薄まっている時代は、なるべく安くお金を借りて「資産」(資本)をたくさん持つことが西側でのゲームに勝つために必要な基本方針になると思います。
勝つための戦略があるだけマシです。社会の経済格差を縮小させたいなんて高尚な願望はありません。政治家でもないし。自分と家族がいかに豊かになれるかに全力を注ぎます。
Hiroさん
いつも勉強させていただいております。2020年代は資本を持つものと持たないものの格差拡大はこれまで以上に加速すると思っています。その要因は自動化が大きく進み、本格的に人がいらなくなる社会が到来するところにあると考えています。すでに技術的には完全自動化まであと一歩の業界もありますよね。タクシーは運転手がいらなくなり、スーパーからレジ打ちが消え、窓口オペレーターもAIに置き換わる。そんな社会が2020年代に実現する可能性があります。
そうなったときに、職に就けない人の所得確保のため、将来的にはベーシックインカムの導入は不可避だと思ってます。失業者だらけでは資本家も共倒れですからね。この辺の政策がどうなるかですが、心配しなくても資本家がうまく政界にはたきかけてくれると思っています。
結局ベーシックインカムが導入されても全て資本家に吸収される。
これからの社会、資本主義社会で正しいポジションをとっておくのは、非常に大切でしょう。
みのさん
こんばんは。
考えていること全く同じですね。
これからはガムシャラに無我夢中で働くよりも、甘い蜜を吸える居場所をうまく見つけることが重要になってくると思います。
つまり資本家でいるということですね。
リベラルな思想の流行、最近の米国の自主退職ラッシュ、これらは労働の価値が薄まっているから起こっていることだと解釈しています。
先進国では最低限の衣食住を得るのは簡単ですが、生きがいを見つけるのは難しい時代。
良いことなのか悪いことなのか。
今はまだ過渡期ですが、100年200年後はどんな世の中になってるんだろう?とたまにふと思います。
労働なんてものは完全に消えている可能性もありそうです。
Hiroさん
一応シンギュラリティが2045年と言われていますので、そこに向けて株式相場がどう動いていくのか興味あります。自動化社会が実現性を帯びてきたとき、そして自動化社会を受け入れられる社会体制が整いつつあるとき、株式PERが急騰すると予想してます。2030年前後になるだろうと考えています。米テック大手企業は、2030年からみると現状の株価でもバーゲンセール状態だと思っています。私は35歳ですが、今が勝負どころだと蓄財に励んでいます。
みのさん
私もたまにそんな未来を想像します。
私の場合は、今の低金利が未来のマネーストックを急激に増加させ、それが企業利益を押し上げるのかなと思います。
つまりMMTですね。
ただ記事に書いた通り、MMTは表面的には労働者支援ですが究極的には資本家支援策で格差を拡大させてしまうので、どこかでブレーキがかかる気もしています。
自動化は基本的に資本家に恩恵をもたらすものですが、今の中国ほどではないにせよ、政府がある程度は資本家の富を奪うことになるのかなと予想します。
なので高PERは正当化されるものの、どこまで期待してよいのか判断が難しいなあと思っています。