昨夜、寝落ちするまでこの本を読んでました。休み前は夜中に気にせず好きなことできるのでいいですね。
長期的なリスク・リターンを最大化するには配当成長株が良いという著者の見解。高配当株ではなく配当成長株という点がポイントです。特に驚くようなデータ、見解はなかったけど、著者の意見には概ね共感でき一気に読了しました。
ただ、1点あまり賛同できない点がありました。著者は私以上に配当重視な方のようで、自社株買いにはやや否定的でした。自社株買いより配当の方がリターンを高めると。
決して「自社株買い止めてもっと従業員に還元しろー」的な労働者的発想ではありません。あくまで自社株買いは利益処分の一形態であるという冷静な視点で分析した上で、自社株買いより配当の方が既存株主にとって好ましいという意見。
自社株買いが配当に劣るとする著者の見解をまとめるとこんな感じ。
①自社株買いは事業リスクの繰り延べである
②経営者が高値でも自社株買いを行い既存株主と利益相反となるリスクがある
③いつどれくらい自社株買いを執行したのかわからない
①は言いたいことはわかるけど、あまり共感できない
①の事業リスクの繰延べとはちょっと抽象的な表現ですね。
自社株買いをすると株式数が減って、1株当たりの取り分が増えます。つまりEPS(一株当たり利益)が増えます。これをネガティブに表現すると「事業リスクを繰り延べる」と言えます。
自社株買いはEPSを押し上げるけど、それは将来きちんと純利益が稼げることが大前提です。EPS=純利益 / 株式数ですから。そもそも企業が衰退して利益が減ってしまえば、いくら自社株買いをしたとてEPSは下がります。
結局、企業が将来利益を稼げないと、どれだけ自社株を買い取っても、既存株主の富は増えません。どんな優良企業であれ事業リスクは伴います。我が世の春を謳歌しているアップル、マイクロソフトだってかつてのIBMのように転落するかもしれません。
であれば、さっさと配当として今すぐに利益を株主に返還すべき、株主の資金を事業リスクを解放すべきというのが著者の見解。
著者が言いたいことはわかる。ただ、著者は仮に配当として現金をもらっても基本的にそれを再投資して複利で資産を増やす戦略(配当再投資)を推奨しています。であれば、結局のところその配当として還元された資金は依然として事業リスクから解放されないことになります。だって、どうせ自分で事業に再投資するわけだから。
自社株買いは事業リスクの繰り延べというのはその通りだとは思うけど、配当を再投資するなら、その理屈で自社株買いを否定するのはおかしいなって思いました。まあ、でも言わんとすることはわかります。
②については同意
②は同意。経営者は自社の株価がわかっていても自社株買いをしたがる傾向にあります。そうすることで、自分の株式報酬が上がるからです。
配当は既存株主への利益還元ですが、自社株買いは潜在株主(ストックオプション保有者)にも還元対象が広がります。特に米国企業の経営者はほぼ例外なく株式報酬をもらっているので、どうしても配当より自社株買いを優先したくなるインセンティブが働きます。
ここは私も自社株買いのリスクだとは思っています。委託者たる株主と受託者たる経営者の利益相反問題(所謂エージェンシー問題)は、所有と経営が分離した現代の株式会社制度の永遠の課題です。完璧な解決策はありません。
この問題の解決策としては優良企業の株を買うことだと思います。長期的に繁栄できる優良企業は、最高値付近で自社株を買ったとしても、後から振り返ればそれが高値掴みにならない可能性が高いです。
たとえば、アップルは株価が250ドル前後の時に自社株買いをしていました。当初、かなり高値に見え既存株主に損ではないかと疑念が湧きましたが、株価400ドルを超えた今となってはむしろ既存株主にとってお得な取引だったと言えます。
③はその通りだけど、大きなデメリットとは思わない
自社株買いはあくまでも法的な枠を取るだけで、実際にどれくらい買い取ったかは後からでないとわかりません。決算報告書の中に発行済み株式数の推移が記載されているので、そこを見て初めて正確な自社株買い実績がわかります。あと、「今四半期に〇〇億ドルの自社株を取得しました」と決算発表で公表するのが一般的です。
10億ドル分の自社株買い枠を取っておきながら、実際には4億ドルしか実施しないこともあり得ます。配当に比べて透明性に劣ります。
これは確かに自社株買いのデメリットと言えますが、個人的にはそこまで気にしませんね。長期的な目線で株を持っているので。今年の自社株買い実績が想定より少なくても、また余った資金で来期に実施してくれればいいです。あるいはその分、配当を増やすとか。
長期投資できる優良企業であれば、配当でも自社株買いでもどっちでもOKかな
これが私の個人的見解ですかね。低配当or無配でも自社株買いはしっかりやってる企業ってありますね。アルファベット(GOOGL)やベリサイン(VRSN)など。そういう企業も有望だと思います。
株主還元を全く行っていない企業は、どれだけ成長していても投資しようとは思いません。コロナ禍でアマゾン・ドットコム(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)の株価は絶好調で、モメンタム的にはまだまだ伸びそうですが、私は買いません。
初めまして、3年近くブログ読ませてもらって初めてのコメントになります。
Hiroさんの投資理論・哲学の話、会計原則に裏付けされた非常に納得度の高い話ばかりでいつも勉強させてもらっています。
①自社株買いは事業リスクの繰り延べであるについては確かに共感できないですね。
リスクを減らしたいのであれば、配当を貰った企業とは別の配当成長株への追加投資の源泉にするなどして、ポートフォリオの分散化を図る方が効果的ではないかなと思いました。
ちなみにHiroさんはSNSやブログ村に登録されていないようですが、記事の紹介などはさせてもらっても良いでしょうか?
私はテック系グロース銘柄に投資しているのですが、数年前の記事でHiroさんがNon-GAAP営業利益に株式報酬が含まれないのを問題視しており、
テック企業でも同様にNon-GAAPが強調されることが多く、なんだかなーという思いを捨てられずにいます。
ブログ記事なので問題ないかな?と思い既に個人で書いているブログやTwitterで何度かHiroさんの記事を紹介させてもらったのですが、気になって初コメントさせてもらいました。
もしあまり好ましくないのであれば、削除しますのでよろしくお願いします。
はじめまして。
3年間もありがとうございます。
自社株買いは同じ企業への強制再投資ですが、配当だと別の企業への再投資も可能ですね。
そこは配当のメリット(自社株買いのデメリット)かなと思います。
いずれにしても事業に再投資する以上は、事業リスクからは解放されないですね。
著者はかなりの配当推しで、珍しいタイプのポートフォリオマネジャーだなと思いました。
Non-GAAP利益に株式報酬を除いている企業もあれば、含めている企業もありますね。
特に創業からの歴史が浅いテクノロジー企業は株式報酬の割合が高い傾向にあるので、株式報酬の取り扱いは要確認だと思います。
昔はGAAP利益にすら株式報酬は含まない会計基準だったので、その頃から比べると今はだいぶ進歩したとは思います。
当時はバフェット先生も不正確な会計基準に憤慨してました。
私の記事の紹介はご自由にどうぞ!
特に事前の確認も不要です。
よろしくお願いします。