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決算書から分かる企業のブランド価値。たとえばディアジオ(DEO)。ディアジオの決算書は超カッコイイ

   

ブランド価値などの見えない無形資産が企業の競争力を陰で支えています。

コカ・コーラなる「黒い砂糖水」があれほど世界中でバカ売れするのは、コカ・コーラ社が今まで多額のマーケティング費用を投じて築き上げてきた製品イメージがあってのことです。世代を超えて飲み継がれます。

モーニングスター社は企業の経済的な濠(エコノミック・モート)を測る上で、いくつかの視点を提示しています。ネットワーク効果やスイッチングコストなどです。

その中の一つが無形資産です。具体的にはブランド価値や特許、ライセンスなどがあります。

Intangible Assets. Patents, brands, regulatory licenses, and other intangible assets can prevent competitors from duplicating a company’s products, or allow the company to charge a significant price premium.

モーニングスターのサイトより

↓ がんばって日本語訳します(汗)。

無形資産:特許権やブランド価値、規制に対するライセンスなどである。それらの無形資産は、競合企業が自社製品を模倣するのを防ぐことができ、自社の製品をプレミアムが乗った価格で販売することを可能とさせるものである。

モーニングスターのサイトより(Hiro訳)

 

無形資産のことを英語で”Intangible Assets”と言います。”Intangible”とは「実体のない」とか「ふわっとして雲を掴むような」という意味です。

“Intangible Assets”とは掴みどころがない曖昧な資産です。ブランド価値なんて客観的に金額で測定するのは無理ですよね。たまにブランド価値を金銭評価していることがありますが、眉唾物でしょう。

 

無形資産の会計処理

さて、こんなふわっと曖昧な”Intangible Assets”(無形資産)は実務でどのように会計処理されるのでしょうか?

実は、ブランド価値などの無形資産は原則として会計上認識できません(禁止)。
(※あくまで原則の話です。)

コカ・コーラ社の貸借対照表の資産の部(左側)に、「コカ・コーラのブランド価値 100億ドル」なんてものは計上されていません。

実際にはブランド価値はあるのですよ。コカ・コーラ社に経済的なブランド価値があるのは言うまでもないことです。でもそれを会計上認識することはタブーです。

なぜタブーかと言うと、金額を正確に測定できないからです。客観的に金額測定できないものを企業が主観的に評価して決算書に反映してしまっては、投資家はそれを信用していいかわかりません。

監査法人だって、会社幹部が「うちの会社のブランド価値は100億ドルあるんだ!」と主張して、それなりの計算資料を提示されたら拒否できませんよ。会社内部のことについては、監査法人よりも会社経営陣の方が詳しいに決まってますから。

原則は、ブランド価値などの無形資産は決算書に載せてはいけません。
理由は、根拠も金額も曖昧だからです。

ですが、例外的に無形資産を決算書に反映して良いケースがあります。

それが外部から購入する場合です。よくあるのがM&Aで会社を買収した時に、被買収企業が持つ無形資産を買収企業が資産計上することです。

M&Aで企業を買収した時、被買収企業に無形の価値があればそれをバランスシートに乗せることは可能です。

なぜM&Aの時はOKかと言えば、M&Aでは実際にカネが動くからです。

企業を買うために買収企業は対価として現金(対価は現金とは限りませんが)を払いますね。カネが実際に動くので、無形資産の評価額測定もいくらかは客観的に行えます。そこでM&Aでの企業買収の際には企業は無形資産を決算書に反映させることができます。これは日米共通です。

「自社には素晴らしい特許があるんだ!」と言って勝手にその特許権の価値を見積もって資産計上することはできません。でも、会社を買収する時に被買収企業が保有する特許権を資産計上することは可能です。

「自社には素晴らしい顧客リストがあるんだ!」と言って勝手にその顧客資産の価値を見積もって資産計上することはできません。でも、会社を買収する時に被買収企業が保有する顧客資産を資産計上することは可能です。

あなたが企業のバランスシートを見ると何らか無形資産が計上されていることが多いはずです。それら無形資産は、すべて外部から調達したものです。自社で内部開発した無形資産は決算書には反映されていません。

その決算書に反映されていない企業独自の無形資産の価値がもしも株価に適切に織り込まれていないとしたら、、それは”買い”ですね。まあそれを個人投資家が見抜くのは困難でしょうけど。

 

原則として無形資産を決算書に反映させることはダメで、外部からの購入時(特にM&Aの)だけ認められているのですが、近年M&Aは活発なので無形資産が計上されていることは珍しくありません。

よりイメージを持ってもらうために無形資産を計上している日本企業を例示してみますね。
()内は無形資産の内容です。
・中外製薬(技術資産)
・エーザイ(技術資産)
・三菱商事(顧客関連資産)
・マネックス証券(顧客関連資産)
・アステラス製薬(仕掛研究開発費)

こんな感じで日本企業もたくさん無形資産を計上しています。繰り返しで恐縮ですが、これらの無形資産はすべてM&Aなどで外部から購入したものです。

 

 

さて、一度資産として計上された無形資産は原則として徐々に費用化されていきます。5年~20年ほどかけて、少しずつ損益計算書に落とされていきます。

減価償却という言葉をご存知でしょうか?

企業が100億円掛けて工場を建設したら、その100億円はすぐに費用となるわけではありません。資産計上された後40年ほどかけて徐々に費用化させていきます。

この一度資産計上して徐々に費用化する手続きのことを減価償却と呼びます。

無形資産も同じです。一旦資産としてバランスシートに計上されますが、その後徐々に費用化されていきます。

なんですがね。。
無形資産を徐々に費用化させるのが大原則なのですが・・。

実は、費用化することなく半永久的に資産計上される無形資産もあります。
(日本基準では無理ですが。)

これって凄いと思いませんか??

経年劣化しない無形資産は(減損されない限り)永遠に資産としてバランスシートに置いておくことが認められているのです。

費用化不要な半永久的無形資産を持っている会社は、競争力のある優良企業だと言えます。

日本企業で言えば、ソフトバンクがあります(ソフトバンクはIFRSです)。

ソフトバンクはスプリント買収に伴って認識したFCCライセンス無形資産を償却(費用化)せずに、バランスシートに置いたままです。FCCライセンスは米国連邦通信委員会(FCC)が付与する周波数を利用できるライセンスですが、これは最低限のコストで更新できるため半永久的な価値があると判断して償却していません。

ソフトバンクはこのような強固な無形資産を持っている強い企業と言えます。ただし、決算書に反映されている以上、その無形資産価値は株価にしっかり反映されていますけどね。

 

ディアジオ(DEO)の無形資産の開示は超カッコイイ!!

さて米国株のブログですから、償却しなくてよい(費用にしなくてよい)価値ある無形資産を保有している米国株銘柄をご紹介しましょう。

紹介したいのはディアジオ(DEO)です。

ディアジオはロンドン本社の英国企業でADRとしてNYに上場しています。ウォッカの「スミノフ」、ギネスビール、ウイスキーの「ジョニーウォーカー」などのブランド製品を多数保有しています。

ディアジオはSEC提出の決算書で以下の様な無形資産(取得ブランド)を開示しています。そのすべてが、非償却の無形資産です。費用にする必要はなく、半永久的に価値があると解釈されている無形資産です。

日本語に訳してご紹介します。

以下、ディアジオ決算書より(一部省略してます。)
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主要な取得ブランドは以下の通りです。

(単位:百万ユーロ)

ブランド名 主要マーケット 金額
Crown Royal whisky 米国 856
Captain Morgan 全世界 702
Johnnie Walker Whisky 全世界 625
Windsor Premier Whiskey 韓国 501
Sminoff Vodka 全世界 482
Shui Jing Fang Chinese white sprit トルコ 469
Bell’s whiskey 中国 214
Saegram’s 7 Crown whiskey 南アフリカ 179
Ypioca cahaca 米国 144

ブランドは商標権によって保護されており、当該商標権は商品が販売されているすべての主要な市場において、不確定の期間にわたって更新することが可能である。これらブランドの耐用年数を制限するような法律や規制、あるいは契約上の取り決めはないと考えられている。

プレミアム飲料業界の特色として陳腐化が滅多に起こらないという点があり、ブランドの耐用年数が不確定となることは決して珍しいことではない。

また、当社ディアジオは100年以上も前に創設されたブランドを多数保有している。

これらのことから、当社経営陣はこれらのブランドについて耐用年数が確定しないものとして取り扱い、会計上の償却は行わない方が適切であると考えている。

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どうです、このディアジオの決算書。僕はこの決算書を見て震えました。経理部としてこんな有価証券報告書を作ってドヤ顔で開示してみたいです。

ディアジオの無形資産の開示、超カッコイイ・・

自信満々に自社のブランド価値を誇り高く開示しています。経営陣の自信あふれる表情が目に浮かびます。

ディアジオ経営陣は、自社のブランド価値が永久不滅だという自信があるので費用計上していないのです。

資産に置いたままにすると減損リスクが発生します。万が一、不祥事等でブランド価値が落ちれば多額の一時損失が発生するリスクがあります。費用化せずに資産のままで置いておくということは、良いことばかりではありません。

それでもディアジオ経営陣は自社のブランド価値に絶対の自信を持っているため、償却しない決断をしています。

いいですね~、ディアジオ。ディアジオがどれほど長期投資に有望な銘柄かがよ~くわかります。

ディアジオは長期投資にふさわしい超優良銘柄です。英国ADRなので税務的にもお得です。NISAで狙いたい銘柄の一つです。

 

 

ちょっと余談失礼します。

whiskeyはアイルランド産でwhiskyはスコットランド産だそうです。産地によってスペルが変わるんですね。初めて知りました。普段ウイスキーなんてあまり飲まないです。大人の飲み物って感じです。

 

決算書を見るだけで分かることはたくさんある。

ブランド価値など無形資産は目に見えない資産です。

ですが、決算書からはっきりと読み取れる無形資産もあります。

投資経験が長くなると、色んな情報筋からインサイダー情報を取り寄せようとしてしまうかもしれません。しかし、企業の決算書に勝る情報はそう多くありません。

ましてや、私たちは短期的な値上がり益を求めているのではなく、長期的なリターンを期待して投資しているはずです。長期的な強みがあるかどうかは決算書を見るだけで十分にわかるものです。

今回は無形資産注記を紹介しましたが、先ず見るべきは無形資産注記の前に損益計算書とキャッシュフロー計算書です。

個別銘柄への投資を考えている投資家はネットでごちゃごちゃ情報詮索する前に、先ずは企業の決算書をしっかり見た方がいいですよ。それだけで十分だと思います。

投資の天才ウォーレン・バフェット氏の主な情報源は企業のアニュアルレポート(年次報告書)です。

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