情報世界のお金と物理世界のお金は違う。情報世界で稼いだお金を物理世界で使うと秩序が乱れる。異なる通貨を発行してでも、情報マネーと物理マネーは分けるべきだ。 一見、非現実的に見えるけどそれは可能なはずだ。

こんな主旨のことを、認知科学者の苫米地英人氏が書籍で言ってました。氏の本を初めて読んだ時は(たしか25歳くらいの頃)、何のこと言ってるのかさっぱり意味がわかりませんでした。でも、最近苫米地さんが言ってた意味がちょっとわかってきた気がします。

今日のウォールストリートジャーナル紙に「マイクロソフトがシアトル近郊で住宅支援540億円」という記事が掲載されていました。マイクロソフトが本社を置くシアトル近郊で不動産価格が高騰しているため、地元住民を支援するために資金を拠出するとのこと。

マイクロソフト従業員への福利厚生じゃないですよ。会社とは全く関係ないシアトルの昔からの住民が、家賃高騰で地元から追い出されないように支援するというものです。

シアトルの住宅価格は2011年~2018年にかけて2倍近く上昇しているとのこと。

なぜ、シアトルの家賃はこれほど高騰しているのでしょうか?

私は不動産の専門家ではないので詳しいことはわかりません。

勝手な持論ですが、マイクロソフトが情報世界で荒稼ぎした多額のマネーを、シアトルの住宅市場という狭い物理世界で使ったことが、住宅価格の高騰を招いている面があると思うんです。

情報が富を生む、情報は21世紀の原油だ、なんてよく言われますよね。確かに、その通りだと思います。効率的に富を生むのは情報が付加された製品、あるいは情報そのものです。20世紀は情報よりもモノの比重が大きかったけど、1990年代以降の情報革命を経てモノより情報が富を生むようになりました。

モノか情報か、これは分かりやすい違いに見えて、実際は抽象的で区別が難しい概念だと思います。

コカ・コーラはモノか情報か。ぱっと見ではペットボトルや瓶に入った目に見える飲料だからモノと思ってしまいそうですが、コカ・コーラの付加価値の半分以上は情報だと思います。でもやっぱ飲料メーカーだから、物理世界の住民でもありますね。

マイクロソフトの製品はOSのウィンドウズや、Officeソフトなどですが、これらは完全に情報です。ソフトウェアですから分かりやすいですよね。マイクロソフトは100%情報世界の住民です。

情報って複製にほとんどコストがかかりません。情報の複製によるマネタイズの効率は、モノの製造のそれより遥かに高いです。またシェア拡大のスピード感も情報ビジネスの方が圧倒的に早いです。

今NY市場の時価総額上位にはアマゾン、マイクロソフト、アップル、アルファベットとハイテク大手が名を連ねています。アマゾンは1994年設立。アルファベットの前身グーグルは1998年設立。ほんの四半世紀でエクソンやウォルマートといった物理世界の巨大企業の時価総額を追い越しました。情報世界ではマネー増殖のスピードがメチャクチャ早いのです。

そうやって情報世界で増殖していった大量のお金というデータを、物理世界で使い過ぎるとインフレが起きます。住宅という供給に物理的限りがあるものに対して、無尽蔵に増え続ける情報マネーを投下すると住宅価格が高騰します。

シアトルの住宅は土地、建材という物質的な制約があります。でも、マイクロソフトの情報ビジネスにはほとんど物理的な制約がなく、グローバルでお金を荒稼ぎします。そのお金のほんの1%でも狭いシアトルの住宅市場に降り注げば、住宅価格は跳ね上がります。

苫米地さんがおっしゃる通り、情報世界のお金を物理世界で使うと秩序が乱れる。現にシアトルの住宅マーケットが乱れている。

苫米地さんはこの歪みを防ぐために、情報世界と物理世界でお金を分けるべきと指摘しています。しかし、言うまでもなくそれは非現実的でしょう。ドル(情報世界)、ドル(物理世界)なんて2種類のドル紙幣が存在する世の中なんて想像できません。

ということは、現実的に考えて、情報世界と物理世界の格差は今後も残ります。それどころか格差は広がり続けるでしょう。ジェフ・ベゾス氏の個人資産は15兆円です。デパートで洋服買うかのようにワシントンポストを買収しました。

残念ながら金持ちがますます金持ちになる世の中の流れは変わりそうにないです。極端な貧富の格差は社会を不安定にするので良くないこと。それは社会の問題として議論する価値があるとして(そこは政治家に任せるとして)、それよりも先ず大事なことはあなた自身が金持ち側にいれること。金持ちになればそれで幸せとは思いませんが、金銭的に貧しいのは嫌ですよね。

で、あれば大切なことは情報世界でお金を稼ぐことを意識することだと思います。それは別にブログやアフィリで稼ごうなんて、そんな単純な話ではありませんよ。

落合陽一さんが「限界費用ほぼゼロで価値を生み出せる領域を探すべき」と以前、講演会で語ってました。これが本質だと私は思います。情報世界でお金を稼ぐことの本質は、この落合さんの言葉に凝縮されているように思います。目に見えるモノかどうかは本質ではないです。目に見えない情報を売った方が、規模拡大に伴う限界費用がほぼゼロになるので、結果として情報世界が有利になるだけです。

借金をしてビジネスにレバレッジを掛けると金利というコストが発生します。限界費用はゼロじゃない。でも、現代は借金せずともビジネスにレバレッジを掛ける手段があります。たとえば、インターネット。YouTuberとして人気になれば、追加コストほぼゼロでより多くの人に価値ある楽しい動画を届けることができます。

物理世界に留まると、どうしても貧しい側になりがち。どういう働き方が理想なのか価値観は人それぞれだけど、経済的に豊かになりたいなら少しでもいいから情報世界でマネーを稼ぐことが必須です。

そんなの難しい?

ですよね。
なんだか難しい話ですよね。

でもきっとあなたは大丈夫。株式投資を通じて情報世界と繋がるだけでも十分だと思いますから。

株式投資で稼いだお金も、情報世界のお金と言える側面があります。マイクロソフトが情報世界でお金を稼いでいるということは、マイクロソフト株主も同じということですね。

よく言われることだけど、これからの時代、ますます(株式)投資をする人としない人の経済格差は広がっていくと思います。情報世界の住民になるかならないか。限界費用がほぼゼロの世界にいるかいないか。ここが金持ちと貧乏を分ける境界線になると思います。