「ダウの犬投資戦略」という投資法があります。ダウ工業株30銘柄のうち配当利回りが高い銘柄を上から10銘柄選んで投資する方法です。

ダウの犬常連銘柄がいます。
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)です。

VZは米国通信セクターの大手企業ですが、市場が米国内に限定されていることもあって投資家の成長期待は低くいつも高配当です。配当利回りは平均して4~5%あり、インカムゲイン目的の投資家に人気です。2017年のダウの犬でもあります。

VZと業界を2分しているのがAT&T(T)です。TはVZ以上に配当利回りが高いです。

AT&Tとベライゾン、この2社は高配当銘柄として真っ先に名前が挙がります。配当好きの私はTもVZも保有しています。2017年11月現在、Tの配当利回りは約6%、VZのそれは約5%もあります。この低金利時代にこれだけのインカムゲインを頂けるのは素直に嬉しいです。

ワイヤレス市場、携帯電話サービス事業は成熟しており企業間の価格競争も激しいです。各社生き残りを掛けてM&Aなど成長戦略を打ち出しています。

そんな業界再編の激しい昨今の通信業界ですが、TとVZの通信インフラ事業は今後も社会に必要とされ続けるはずです。ネットワークインフラの重要性は今後ますます高まるでしょう。携帯電話市場は飽和しているものの、人々がスマホを手放すことはないでしょうし、これから家電などの物がネットに繋がるIoT時代を迎えると言われます。アマゾンが熱心にAIアシスタントの「アレクサ」を売り込んでいるのは、ジェフ・ベゾス氏がIoT時代を見据えているからだと思います。

これからも優良銘柄のTとVZを保有し続けて、まったり配当再投資を続けていきたいと思っています。

なんですが・・

TもVZも長期投資していきたい優良銘柄だと思っているのですが・・

私はTとVZへの長期投資に一抹の不安を抱いています。

その不安とはインフレです。

インフレという悪魔が急に米国経済を襲ったらTとVZは大丈夫かな~とちょっと心配してます。

 

株式は長期ではインフレに勝つ。ただし、インフレを販売価格に転嫁できる強い企業であることが重要です。

株も債券も短期ではインフレに弱いです。債券は長期でもインフレに負ける可能性がありますが、株は長期ではインフレに負けません。株はがんばってインフレに追いきます。

米国株(S&P500指数)は過去一定の測定期間をとれば、常に実質リターン7%を株主にもたらしてきました。実質リターンが一定ということは、インフレ率が上昇してもそれに負けないくらい名目リターンが上昇したということです。

なぜ株は長期ではインフレに負けないのでしょうか?

それは株とは紙ではなくモノだからです。

インフレとはモノの値段が上がることです。100円の缶コーヒーが110円に値上がりすることがインフレですよね。

株は株券という紙ではありません。株を保有するとは投資先企業の一部を経済的に所有することを意味します。投資先企業が保有する建物、機械、土地、無形資産すべて株主に帰属します。インフレで企業が保有するモノの値段が上がれば、株の価値もそれに連動して上がりますよね。

株は実物資産から生じる利益に対する株主の請求権であり、この実物資産は機械設備、労働、土地、知的財産などを指す。

ジェレミー・シーゲル

そう、株とはモノ(実物資産)だから長期ではインフレに負けないのです。

んん、、じゃあTもVZも長期保有なら別にインフレを恐れる必要ないじゃん!
って思われるかもしれません。

いやいや、株がインフレに負けないのは株がモノ(実物資産)だからっていう理由では不十分なんです。

ストックベースでインフレに負けないだけでなく、フローベースでもインフレに負けずにいれないとダメです。てか、むしろフローでインフレに勝つことこそ重要です。

ストックベースでインフレに負けないとは、バランスシートにある資産(モノ)の価値が上昇することです。

フローベースでインフレに負けないとは、インフレ相当分を販売価格に上乗せしてインフレ相当分利益が押し上がることです。

株式のリターンがインフレに負けないためには、フローベースの方が大事です。長期投資なら尚更です。インフレ率が上がって世の中の物価が上昇しても、それに負けない勢いで自社の製品を値上げできないとジリ貧です。

世の中の物価が平均的に10%上昇しているのに、とある企業は3%しか値上げできなければその企業の価値は相対的に落ちるでしょう。「相対的に落ちる」と言っているのは、簡単に言えばS&P500平均をアンダーパフォームするということです。

 

これが私がTとVZへの長期投資において、以前から密かに抱いている一抹の不安です。

世の中のインフレ率が上昇していった時、果たしてAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズはサービス価格の値上げを敢行できるのでしょうか?

今は米国も低インフレです。目標の2%に届いていません。しかし、失業率は4.1%と歴史的低水準です。いつ物価が急上昇するかわかりません。いつ急に債券利回りが急騰するかわかりません。

(期待)インフレ率が上昇して債券利回りが急騰すれば、あらゆる株が売られるでしょう。アップルもグーグルもコカ・コーラもどんな優良銘柄も売られると思います。しかし、インフレを販売価格に転嫁できる強い企業はそこから復活します。一度グッとしゃがんでもそこからぴょーんとジャンプしてきます。

TやVZはインフレを販売価格に転嫁できるのかちょっと不安に思っています。

米国では近年携帯電話料金の値下がり圧力が凄まじいです。携帯電話市場が飽和しているので、AT&T・ベライゾン・Tモバイル・スプリントの4社間で熾烈な顧客の奪い合いが起こっているからです。各社顧客を引き付けるため、無制限のデータプランを用意しています。今年ベライゾンも無制限データプランを復活させました。

米労働省によると、携帯電話事業者が現在提示している料金の指標である携帯電話サービスの消費者物価指数は、5月に前年同月比12.5%低下した。4月は過去最大の下げ幅となる13%を記録

WSJより

10%以上も値下がりするって相当ですよ。日本では通信料金が下がる気配なんて全く感じませんが、米国ではここまで携帯通信料金が値下がっています。

FRBイエレン議長は、米国のインフレ率停滞が一時的である要因として携帯電話料金の値下がりを指摘していました。米国全体の物価指数に影響を与えるくらいの値下がり具合だということです。

ネットワーク自体はコモディティですから、どうしても価格競争に陥りがちです。ベライゾンでもAT&Tでも、どこのネットワークも品質に差はないでしょう。専門家ではないので詳しくは知らないですが。

最近スプリントとTモバイルの統合が白紙になりましたが、これも通信業界の競争をより一層激しくします。

とまあ、こんな感じでAT&Tとベライゾンはサービス料金の値下げ圧力が強い状況ですから、今の状況で米国のインフレ率が上昇したら、TやVZはより一層苦境に陥るかもしれないと危惧しています。これはインフレの問題というよりTやVZの通信インフラ事業そのものの競争力の問題と言えるかもしれませんがね。

考え過ぎでしょうか?
杞憂に終わることを願います。

 

私事ですが・・

私事ですが、通信業界のビック2であるAT&T(T)やベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)を、ポートフォリオの主力まで格上げするか大変悩んでいます。私にとっての「主力」とはポートフォリオ全体の約10%を占めるレベルです。現在Tは2%、VZは5%ほど保有しているに過ぎません。

今私のポートフォリオの個別銘柄の「主力」はアルトリア・グループ(MO)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、エクソンモービル(XOM)、コカ・コーラ(KO)の4銘柄です。

TやVZも「主力」になるまで追加投資を続けるか考え中です。高配当はとても魅力的ですが、配当利回りに釣られ過ぎてはダメだと思っていまして。。

長期投資で大切なことは、バフェットのこの発言に集約されると思います。

まずまずの企業を素晴らしい価格で買うより、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことの方がはるかに良い。

ウォーレン・バフェット

失敗することもあると思いますが、試行錯誤考えながら投資を継続していきたいです。投資は難しいです。日々勉強です。