エクソンモービル(XOM)は1月31日に2016年度10-12月期の決算を発表しました。
結果は良くなかったです。
売上高は前年同期比2%増の610億ドルで、アナリスト予想の609億ドルを上回りました。
しかし、EPS(1株利益)は0.41ドルとアナリスト予想の0.7ドルを大きく下回りました。
売上高は達成しているのに、利益は未達成。
なぜか?
それは、エクソンモービルが20億ドルという多額の減損を計上したからです。ロッキー山脈での天然ガス開発に関して評価損を計上しました。
私は、、今回のエクソンの会計処理にちょっと恣意性を感じています。
これはエクソンを退任して米国務長官に就任するティラーソン元CEOの置き土産に見えます。
誰に対するかって?
ダレン・ウッズ新CEOへのお土産です。
素人の直感ですが。
まあ一応私は会計士なので、素人ではないかもですが。
これは権益資産の減損です。
何か難しく聞こえますが、過去に行った投資が回収できなくなったというだけです。企業が権益のような無形資産に投資した場合、普通はその投資額でずっとバランスシートに載っています。
しかし、業績が悪化して将来キャッシュを稼げないことが判明すると評価額を落とさなくてはなりません。これを減損損失と言います。
減損を計上することで、将来キャッシュが回収できないという緊急事態を前もって市場にアラートすることができます。
エクソンが20億ドルもの資産を減損をしているということは、エクソンの投資の内回収できない部分が20億ドルありました!ということを意味しています。
ちなみに、エクソンが資産の減損をするのは1990年以来の出来事です。
これね、、一見正しい正当な会計処理に見えるのですが、私は違和感ありますね。
今さらかよ!!って感じです。
そもそも、いくらで販売できるかって石油業界って曖昧ですよね。定価がないから。
原油相場がこれだけぐわんぐわん動くわけですから、将来の販売価格は予見できないはずです。
でもそこは一定の仮定のもと、合理的に将来の販売価額を見積もることになります。その見積もった原油価格をもとに将来のキャッシュフローを算出して減損判定をしているはずです。
その仮定が何かというと、やはり原油の市場価格ですよね。
これは過去3年の原油価格チャートです。
これを見ると最近は1バレル50ドル付近まで原油価格が持ち直して、横ばいで推移していることがわかりますね。だから、やっぱり今かよ!って思います。
やるなら2015年12月決算だろ、、って個人的には思います。
結局ね、見積もりなんですよ。
会計処理って見積もりの要素が入りすぎるから、何が正しいっていう絶対的な答えがありません。
こういう減損絡みは特にそうです。
過去、原油価格急落時に同業他社が減損を計上するなか、エクソンだけが計上してきませんでした。
そのことをSECにも指摘されていたという経緯があるのは事実です。
でも今回エクソンは評価損を計上したいインセンティブがあったとも私は踏んでいます。
それはCEOが交代するからです。
ダレン・ウッズ新CEOは自分が就任してから業績が向上しているように見せたいという誘惑があります。
2016年度で20億ドルもの費用を前倒しで計上するということは、その分2017年の利益が押し上げられるということです。
エクソンの総資産は330億ドルほどですから、20億ドルの減損とは結構な規模であることがわかります。
こういう会計処理するとね、業績がV字回復しているように見えるんですよ。実態は何も変わらないのに。
昔日産にカルロス・ゴーン氏が就任したときも、同じような会計処理をしていました。
自分が就任するときにドカッと減損を出して、その後V時回復だ!みたいな。
まあ実際に成果を上げている経営者だから非難されるわけではありませんが。
エクソンにはPwC(プライスウォーターハウスクーパース)という超一流の監査法人が会計監査に入っています。
だから、明らかに不当な会計処理はできません。
その辺はアメリカはとても厳しいです。
でもね、私の浅い経験から言わせてもらえば、見積もりの要素が大きい減損の処理って会社の社長が「こうやる!!」って言い出したら、よほどのことがない限りストップできません。
だって見積もりだから、いろいろ合理的に聞こえる説明されたらもう反論できません。
そりゃ、今後米国のGDPは毎年10%で成長することを前提に将来CFを見積もって・・とか言われたら「いやいや、あり得ないやろ!」ってなりますが。
成長率が3%か2%かとかの違いは、もう主張する人の考え次第ですから。
経営者がこれは100円で売れると主張したら、監査法人が「いや~せいぜい90円でしょ」って思ってもあまり反論できません。
将来のことは誰も正確に予想できませんから。
ティラーソン氏はもう十分な功績を残しています。
自分の最後の就任期間に20億ドルの損失を負担して、ダレン・ウッズ新CEOの船出を応援している、そんな風に私には見えます。邪推かもしれませんが。
今回の減益決算発表でエクソンの株価はやや売られました。ただでさえ、年初から下落していた株価がさらに下がりました。
2017年2月6日時点でエクソン・モービルの株価は$83.54で配当利回りは3.6%もあります。
今回の20億ドルの減損で2017年のエクソンの業績はほぼ間違いなく増益決算なるでしょう。だって20億ドルも前倒しで費用計上しているのだから。
未来はわかりませんが、放っておくと2017年はグングン株価が伸びてしまうかもしれません。今のエクソン・モービル株はかなりの買い場だと個人的には思っています。
(※投資は自己責任でお願いしますね!)
いつも大変参考にさせて頂いてます。
XOMは私も100万に満たないですが所有しています。増配銘柄に配当再投資し、数十年後に大きくなれば、、、と言いながらも株価に一喜一憂してしまうのが小市民の辛いところです。株価は安いほど良いはずなのに。素人には気付けない視点で考察頂いた内容は、勇気付けられる一方、株価上昇したらしたで複雑な思いを抱くのが小市民ですねw
小市民はコツコツ買い進めるのみです。今後とも宜しくお願い致します!
いつもコメントありがとうございます。
XOMは原油価格が暴落した厳しい市況環境でもしっかり増配してきました。
増配自体が喜ばしいというよりは、その株主重視の姿勢が嬉しいです。
保守的に経営して、常に株主の方を向いているその経営陣のマインドこそXOMの強みだと感じます。
株価は下落しても、上昇しても残念に思うのが投資家心理ですよね笑。
とてもわかります。
実は私は、最近なんか株価がホントにどうでもよく思えてきて「あれ、これは投資家として一つ成長したかな」と思う時があったのですが、多分間違いでした。。
最近株式投資以外に、色々と夢中になっていることがあって(趣味みたいなものですかね)、それで相対的に株式投資への思い入れが減っているんだと、自己心理分析しました。
ということで、我々小市民が株価に一喜一憂しないためには、「熱中できる趣味を見つけることだ!!」という半ば無理矢理な論理で回答の締め括りとさせて頂きます(笑)。
初めまして、いつも興味深く拝読させていただいております。
定年という声が聞こえてきた、じじいなのですが。老後のために、遅ればせながら投資を始めたところです。ひたすら本を読み、ネットを探りながら、恐る恐る始めました。投資信託を少し、日本株を少し購入したところです。
アメリカ株にも興味があったので、今回の記事を参考に、エリクソンモービルを取りあえず購入しました。日本株を購入するのも、右往左往でしたが、外国株はさらに右往左往。まぁなんとか購入できました。まぁ何事も勉強だと思って、一つ一つ楽しみながらやっています。
今後とも、宜しくお願いします。
はじめまして、いつもご覧いただきありがとうございます!
平均寿命が長くなっている時代ですので、定年間近から株式投資を始めらても全く遅いことはないと思います。
などと、若造の私が申し上げても説得力はございませんが。
>今回の記事を参考に、エリクソンモービルを取りあえず購入しました。
記事を書いた者として大変責任を感じるところでございます。
ただ、エクソンモービルは変動するエネルギー市況に晒されながらも連続増配34年の「The ディフェンシブ株」な銘柄です。
私は、再生可能エネルギーが注目を浴びれば浴びるほどエクソンの投資リターンは上がるだろうなと思っています。
エクソン株への投資が高いリターンになることをお祈りいたします。
>まぁ何事も勉強だと思って、一つ一つ楽しみながらやっています。
はい、私もこれが一番大事だと思っております。
定年が近づいてきた方からのコメントと聞き、私は自分の上司である経理部長からコメントを頂いているような錯覚に陥り大変恐縮しているところです。
人生経験浅い若輩者がワーワー騒いでいるだけの投資ブログではございますが、今後ともお付き合い頂けますと嬉しく思います。m(__)m
コメントありがとうございました。