単発でかつ金額が大きい取引の交渉には警戒して臨みましょう。人生に一度とまでは言わなくても、数回しか経験しないような取引です。

たとえば、
・住宅の購入
・大型家具の購入
・家のリフォーム工事
・整形など非保険の医療サービス
・車の購入
・保険の契約
・結婚式の開催
などでしょうか。ぱっと思い付くのは。

情報の非対称性

これらに注意すべきなのは金額が大きいからミスした時のインパクトが甚大というのもありますが、それよりも情報の非対称性があまりに大きいからです。

こちらは人生で初めての買い物なのに、売り手である企業は百戦錬磨で様々な顧客を見てきています。こちらにとっては一世一代の買い物でも、企業にとってもワンオブゼムです。数多くいる顧客の中の一人に過ぎません。

どうしても交渉は不利になります。よほど勉強してない限り、知識では負けます。いや、どれだけ勉強しても負けるでしょう。知識がないと、相手の言い値で取引金額が決まってしまう恐れがあります。相手の提示額が割高でも気付けないし、怪しいと思っても理論的な反証ができないからです。せいぜい「もうちょっとまけてよ~」と言うくらいしかできません。

リフォーム工事なんて特にリスキーな分野だと思います。マンションの購入よりも、リフォームの方が価格の妥当性の判断が難しいです。家の値段は周辺の同クラスの物件と比較したりできますが、リフォームは個別性が強すぎて比較が難しいですね。うちの実家は数年前に浴室など水回りの改装を行いましたが、値段はいくらだったんだろうか。ローン組んだらしいから安くはないはずです。

スーパーで野菜を買う場合、情報の非対称性はほぼありません。売り手のスーパーより、何度も何度も食料品の買い物をしている主婦の方が情報強者なくらいです。騙される可能性は低いです。仮に割高を掴んでしまったとしても、単価が安いので大した問題ではありません。

リピート性の有無

単発取引が危険な理由をもう一つ挙げるとリピート性のなさがあります。リピーターのお客さんによって収益が生まれるビジネスモデルであれば、企業側は顧客を不快に思わせるような条件を提示しません。なぜなら、次の購入に繋げる必要があるからです。

スターバックスやアップルは熱心なリピーター顧客によって高い収益を生んでいます。スタバでは、ホットコーヒー1杯だけ注文して3時間居座っても文句を言われません。こんな客ばかりだと採算は合わないでしょう。でも、ゆっくり長居して勉強、読書、談笑できる環境を割安で提供することで、結果として長期的な収益を最大化しています。スタバを好きになってくれた顧客が、フラペなど利益率の高い商品を買ってくれますから。

YouTubeに質の高い動画が増えているのは、チャンネル登録して再訪してくれるリスナーを増やすことで広告収入を最大化できるからです。

単発型の取引では、顧客が不快に感じたとしてもとにかく売り切ってしまえばこちらの勝ちだ、という発想がどうしても生まれます。こちらの都合は無視して、ガンガン押し売りされる可能性があります。押し売りする人が悪いのではなく、そういうインセンティブがある以上は仕方ないことです。

質の低いアフィリエイトサイトは、一度成約しちゃえばこっちのもんという発想で、顧客と長く付き合うつもりなんて鼻からないのです。

ネットのおかげで幾分はマシになったが

最近は悪いサービスだとネットやSNSですぐに拡散し炎上します。なので、ネット以前の社会よりかは私たち顧客側の交渉力は高くなっています。しかし、そうであっても、単発で大型の取引には警戒して臨んだ方が身のためです。

資本主義の世界には大なり小なりマネーゲームの要素があります。取れるところからはたくさん取る、というのはビジネスをやる側としては当然の発想です。