3つ年下の会社の同僚で、たまに飲みに行ったり映画に行ったりする程度のそこそこ仲が良い女性がいます(Yさんとします)。

Yさんは洋服とかの買い物が大好きで、たまに新宿のルミネやマルイで買い物に付き合ってあげることがあります。彼女は平気で2、3万円くらいする洋服をカードでポイっと買っちゃいます。「は~、今月お金ないわ」とよくぼやいていますが、んだけポンポン高額な買い物してたら、そりゃカツカツになるよなって思います。都内で一人暮らしだと家賃も高いし。別に他人の買い物にいちいち口出しなんてしませんけどね。横で一緒に見てるだけです。

不思議に思ったのが、買い物の後、ランチで800円のメニューと1100円のちょっと豪華なメニューにするかで、Yさんはずーっと悩んでいたこと。「さっきまで、万単位の買い物バンバンやってたのに、急に300円で悩むなよ・・」って心の中で思ってました。

ご飯が終わった後にちょっと聞いてみたんです。
興味本位で。

「あのさ~、ちょっと不思議なんやけどさ、数万円の洋服は即決で買うのに、なんでランチの数百円でそんなに悩むの??」

そしたら、こんな答えが返ってきて面白かったです。

ええ~、だって洋服はモノとして残るけど、ご飯はモノとして残らないでしょ。モノとして残らないものにはなるべくお金は使いたくないのよ。

はあ~、なるほど、そういう発想か。
ふーん。

あえて会計的に言うと、資産計上(洋服)か費用処理(ランチ)かの違いですかね。

なるほど、確かにお金を払っても資産計上できればPLは悪化しません。彼女にとって洋服は資産だから、2万円を使ってもそれほど痛みはないのか。でも千円ランチは費用だから負担感がある。ってことかな・・。

資産計上ってみんな大好きです。経理やってると、「Hiroさん、これは資産計上できる案件ですか?」とかしょっちゅう聞かれます。「仮に資産計上できるとしたら、何年で償却になる?」と。経理部の上司からというよりは、事業部門の担当者から聞かれます。各事業は損益に責任を持っているわけですが、投資を資産計上できれば少なくとも目前のPLは悪化しません。もちろん、資産計上しても最終的にはPLで費用化されますが。

大きな機械を買うとか、工場を建設するとか、そういう案件は議論の余地なく資産計上です。でも、生産設備を修繕したとかシステムを改修したとかは、費用処理(PL)か資産計上(BS)か議論の余地があります。また、資産計上するにしても、何年で償却すべきかという問題があります(普通は法人税法に合わせますが)。あと研究開発費を資産化できるかどうかもたまに議論になります。

とにかく、事業部門は資産化したがります。なぜなら、PLが傷まないからです。僕ら経理部は事業部をいじめたいわけでは決してないけど、ダメなものはダメときちんと言う義務があります。資産化できないものをこっそり資産化したら、それは粉飾決算だし、監査法人に突っ込まれるリスクもあります。資産化したい気持ちはよーくわかるけど、無理なものは無理と突き返します。

資産化って面倒なんですよ。資産に登録するということは、その資産を管理しなきゃいけないということです。固定資産を管理するシステム(固定資産台帳と呼ぶ)に登録しなきゃいけません。システム管理ならまだマシですが、エクセルで管理するような案件も稀にあります(特に無形資産関係)。一度資産に計上すると、それがすべて費用になって簿価がゼロにまで管理する必要があります。費用に流せば、そういう面倒な事務処理は発生しません。

そういう事情もあって、経理の実務担当者としては費用処理したいのが本音。そっちの方が楽ちん。「数百万円のコストでいちいち資産計上なんかせんでええやろ~。めんどくせー。費用に流そうぜ~。」ってのが心の中の本音です。もちろん、そんなこと事業側には言いませんよ。事業部は数百万単位で頑張ってコストを管理しているわけだから、そんな無神経な発言はしません。きちんと検討して、資産化が正しい処理なら資産化します。登録作業が面倒であっても。

僕はこういう経理の目線があるからというわけではないのですが、形に残るものを買うのがあまり好きじゃないです。洋服にお金を使うより、美味しいご飯にお金を使うことに価値を見出すタイプです。

いや、個人の家計だから、企業みたいに資産計上してシステムに登録してとか、そういうことは当然ありませんよ。個人の家計において資産計上か費用処理かなんて、心の会計に過ぎませんから。

単純に所有が好きじゃないってだけです。所有より利用派です。形あるモノを買うと、管理コストが発生するじゃないですか。それが嫌。実際に所有コストが発生するのは車とか家くらいかもしれません。テレビや冷蔵庫、本を持っていても、税金や手数料がかかることはないです。スペースは取りますけど。管理コストと言っているのは金銭支出というよりは、もっと何か精神的なものです。モノがあるということ自体に負担感を感じるんです。

洋服なんてその最たる例です。昔買ったTシャツで、ここ2年くらい一度も着ていないものが数枚収納ボックスに放置されています。捨てればいいんだけど、「もしかしたら」という思いで置いてあるものです。こういうのが好きじゃない。別に着ないTシャツがあるからって、お金がかかるわけじゃない。嵩張らないからスペースを取るわけでもない。ただ、不要なモノがあるのが嫌なだけ。そろそろ整理して捨てようかな。

冬になったらユニクロでフリースを買いますけど、今くらいの季節になったら捨てます。次の冬まで持ち越さない。また新しく買い直します。そんなに高いもんじゃないし。もったいないと思われるかもしれませんが。

本も多いです。昔はkindleが気に入ってましたが、特に専門的な書籍は紙の本の方が好きです。「あの本にこんなこと書いてあったな!」と思ったときに、ペラペラとめくれる方がいいです。繰り返し読み返すような投資本などは、必ず紙の本を買います。ただ、本もできればデータで保管したい気持ちはあります。やむを得ず紙の本を買っていますが、部屋の中に本が散乱しているのは嫌です。本棚もそこそこ大きいの用意せないかんし。

いくら形に残らないモノが好きとは言え、すべての買い物でそれを実現できるわけじゃないです。どうしても所有する必要があるモノは結構あります。スーツ、靴、冷蔵庫、電子レンジとか。そういうのはしゃーないけど、なるべくモノを持ちたくない気持ちが強いです。形に残らないものにお金を使う方が好きです。

先日、母が還暦だったの家族で叙々苑に行きました。お昼にもかかわらず5万円くらいかかりましたが、僕はこういうお金は喜んで払います。お世話になった人や後輩にご飯を驕るのは全然構わないです。5万円のダウンジャケットを買うのは抵抗あるけど、美味しいご飯に5万円払うのは抵抗ありません(さすがに、食事に5万円となると特別な時だけですが・・)。

5万円の洋服を買ったら手元にモノが残る(資産計上)。
5万円の焼肉食べたら手元にはモノが残らない(費用処理)。

僕は圧倒的に後者が好きですね。しっかり楽しんで、その分きちんと対価を支払って、そこで完結する方がいいです。その方が気楽。「無形のものを買うことは体験価値なんだ!」とかカッコつけたことを言うつもりは全くないです。洋服買うのだって別に体験価値と言えるし。ただ単純に、形に残らないモノにお金を使う方が後腐れなくって気楽で好きってだけです。