まずまずの企業を素晴らしい価格で買うより、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことの方がはるかに良い。
ウォーレン・バフェット
長期投資で高いリターンを実現する上で最も役立つ言葉が、このバフェットの発言かなと思ってます。座右の銘は言い過ぎですが、初めて知った時からずっと心に残っている言葉です。
歴史に残る名言って概して抽象的なもんです。抽象的だからこそ、あらゆる人にとって参考になるという面があります。人の心を打つ話は、具体的なストーリーであることが多いですが、長く人の記憶に残る言葉はシンプルに一言で表現されたものが多いものです。
奥深い意味が凝縮された短い言葉は人の記憶に残りやすく、長く語り継がれやすいですが、抽象的であるが故にその言葉を実生活に応用しにくいという特徴(デメリット)があります。その言葉を発した当人の脳みそを移植でもしてもらわないと、言葉の真意は完全にはわかりません。
バフェットが言う「素晴らしい企業」とは何なのか?
それは営利企業なんだから、高収益な企業だろう。。
でも長期的に高収益が続く構造的に儲かる体質の企業って何だろうか・・?
それを測る一番の方法は過去の実績をしっかり確認することですね。このブログでは主要米国企業の過去10年分の財務データを集計していますので、興味のある方はご参考下さい。
参考:米国株銘柄分析
過去の結果を見ることは大切ですが、そもそも過去高収益が継続している企業はなぜ高収益であり続けることができるのか、そこを理解できた方がより安心して、納得感を持って長期投資できます。コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンなどの一部の優良企業は、なぜブラックマンデーもリーマンショックも余裕で乗り越えて利益を出し続け、これまで欠かさず増配を続けてこれたのでしょうか?
企業の構造的な強み(Economic Moat)をモーニングスター社が分析して、以下の5つの視点を提供してくれています。これはとても参考になる視点だと思います。
・ネットワーク効果
・無形資産(ブランド価値など)
・コスト優位性
・スイッチングコストの高さ
・効率的な規模
今回はこの5つの中のネットワーク効果に注目したいと思います。
ネットワーク効果とは、利用者が増えれば増えるほど事業の価値が高まる性質を言います。
顧客数そのものがサービスのクオリティーを上げるということです。「みんながやってるから、俺もやる!」って思わせるのがネットワーク効果です。
パスドラやモンストなどのスマホゲームはネットワーク効果の恩恵を受けやすいです。利用者が増えれば増えるほど、そのゲームは賑やかになり話題を呼び課金者も増えて収益性が高まります。だから、無料でも楽しく遊べる設計になっています。現代のスマホゲームは強者総取りになりがちです。キング・デジタル・エンターテインメントの「キャンディ・クラッシュ・サーガ」は、ダウンロード開始から5年以上経ちますが、今世界で最も稼いでいるモバイルゲームの一つです。新たな人気ゲームをたくさん出すよりも、ネットワーク効果を活かして古株の人気ゲームを維持していく方が収益に繋がります。
「ネットワーク効果」という言葉だけを聞くと、ネットワーク事業者にこそネットワーク効果がありそうなもんですが、意外とそうでもないです。ネットワーク事業者とはAT&T(T)やベライゾンコミュニケーションズ(VZ)、コムキャスト(CMCSA)のような企業です。
AT&Tやベライゾンは最近コンテンツビジネスに参入しようとしていますが、事業の中心は通信インフラの提供です。日本で言えばソフトバンクやNTT、KDDIなどに該当しますね。
これらの企業が提供しているネットワーク事業には「ネットワーク効果」があるとは思えません。
あなたはスマホをお使いでしょうか?
どこのキャリアと契約していますか?
NTT、au、ソフトバンクの3大キャリアでしょうか。それとも、Y!MobileやUQモバイルを使っていますか。最近は、プランの柔軟性があってアフターサービスもしっかりしていると評判のマイネオが人気らしいです。
(余談ですが、私は最近ソフトバンクからUQモバイルに乗り換えました!)
どのキャリアと契約するか、何を基準に決めますか?
色んな視点がありますが、先ずは値段でしょうか。当然通信量は安い方が嬉しいですよね。他には通信スピードも大事ですかね。キャリアによっては昼間の通信スピードがかなり遅くなるものもあるみたいです。3大キャリアだとお値段は高いですが、通信量の大さと通信スピードの速さは保証されています。値段、通信スピード、あとはサポート体制なんかも大事ですかね。
何を優先するかは、人それぞれです。
(ちなみに、私は値段の安さと通信環境とのバランスが取れているらしいという理由でUQモバイルにしました。)
ただ、「ネットワーク効果」を期待してキャリアを選ぶ人はほとんどいないと思います。「みんながソフトバンクのネットワークを使っているから、僕もソフトバンクにしたい!」という感覚はあまりないはずです。ちょっとあるとしたら、家族間の通話割引くらいでしょうか。
ソフトバンクの回線を利用する人が増えれば増えるほど、ソフトバンクの回線の経済的価値が高まるってことは考えにくいです。全くゼロではないでしょうが、あまりその要素は高くありません。
私は最近ソフトバンクからUQモバイルに乗り換えましたが、特に不便はありません。いつもと変わらぬ通信環境です。普段はWi-Fi(WiMAX)を使っていますし。
AT&T(T)やベライゾンコミュニケーションズ(VZ)は、配当利回りが高くインカムゲイン好きな米国株投資家に人気です。TやVZの配当利回りを超える銘柄はそう多くありません。VZはダウの犬の常連です。私はTもVZも保有しています。
TやVZのネットワーク事業自体は今後も安泰です。世界の通信量は増える一方です。これからはモノとモノがネットで繋がる時代になるそうです。ソフトバンクは英ARM社やウーバーに多額を投じていますが、それはIoT時代の未来を見据えての行動でしょう。
スマートフォンはそこまで伸びないかもしれないが、IoTチップは伸び、1兆の契約者を得ることができる
孫正義
スプリントとTモバイルUSとの統合が破談に終わりましたが、それは孫さんがスプリントの支配権を絶対に手放せないと考えたからだと言われます。なぜ、孫社長はスプリントの支配権にこだわったのでしょうか?
それは、来たるIoT時代のインフラであるネットワーク事業を持っていることが、ソフトバンクの事業上不可欠だと判断したからです。
ネットワーク事業はもはや生活必需サービスです。AT&Tやベライゾンは今後「電気通信」から「コミュニケーションサービス」という新たなセクターに移る予定ですが、「生活必需品」でもいいんじゃないかと思うくらいです。
米国の通信インフラ業界トップ2であるAT&Tとベライゾンのビジネスそのものは、今後100年安泰だと思います。両社とも永続してキャッシュを生み出す企業に違いありません。しかし、ネットワークという目に見えないサービスの差別化は大変難しく、価格競争に陥りがちです。米国では2017年携帯サービス料金が10%以上も低下しました。
TやVZに限った話ではないですが、きちんと銘柄は分散させることが重要ですね。高い配当利回りが魅力的な両社ですが、その高利回りに誘惑され過ぎないよう注意していきたいところです。特に、私は高配当に弱い性格なので・・。