21世紀は、20世紀よりも株式のPERが上昇する傾向にあると言われています。
実際に上昇しています。
PERが上昇するってことは、株式の収益性が落ちるということです。
なぜ、PERが上昇するかと言うと、株式投資を行うことへのハードルが下がっていることが挙げられます。
昔は個人が株式投資するのは大変手間のかかることでした。
証券会社に電話して注文しなくてはなりません。
また、売買コストも今より高かったはずです。
今はネット証券で簡単に低コストで個人が株を買うことができます。
昔は株価をリアルタイムで確認することも無理でしたし、マーケットや企業情報も一部の機関投資家と個人との間では大きな格差がありました。
今は、個人でも機関投資家でも誰でもネットで株価やらバリュエーション指標やら、企業情報を確認することができます。
21世紀になって株式投資のハードルは格段に下がりました。
株式という金融商品に対する投資家のリスク認識が下がることで、株価が割高になりPERが上昇している面があると思います。
「誰でも簡単手軽にネットで株式投資!」みたいなキャッチフレーズがあります。
ネットで低コストで株式投資ができてありがたい限りです。
でも、それはメリットばかりではありません。
みんながみんな簡単に株式投資を始めると、その分株価は上がってしまい株式の収益性が落ちてしまうデメリットもあります。
また、暴落が起きそうにないというのも株式に対する世間の楽観的な態度も、PERの増加を助長させています。
トランプ大統領の政策不透明感からやや株が売り込まれる場面はありますが、2008年のリーマンショックのように流動性が枯渇するような事態は当面は起きる気配がありません。
最近のS&P500指数のPERは17倍程度ですが、これは過去から見ると高い水準です。
PER17倍ということは株式益回りは5.9%です。
年率リターンが5.9%だと、株式投資としてはちょっと物足りないかもしれません。
ただ、このPERの高止まりには別の要因もあると密かに思っています。
それは会計的な要因です。
具体的にいうと、時代遅れな無形資産の会計です。
無形資産会計が21世紀型の企業のビジネスに追いついていない為、PERが不当に高騰している面があるかもな~と思っています。
過去平均より高いPERにそんなにビクビク怯える必要はないと考えています。
20世紀の企業のビジネスモデルは大量生産大量販売でした。
大きな工場を建ててでっかい機械を稼働させて、大量の製品を製造する。
そして、それを世界中に輸出する。
今もそういうビジネスは変わらずあります。
ですが、21世紀になってビジネスのコアコンピタンスは特許や知的財産、ブランド力、人材といった無形資産に段々と移り変わっています。
すごい単純化すると、
20世紀:有形資産の時代
21世紀:無形資産の時代
と言えるかもしれません。
で、ここで問題なのは無形資産の会計処理がそういう時代の変化をキャッチアップできていないことです。
有形の工場建物や機械設備ってきちんと資産計上されて減価償却を通じて徐々に費用化されます。
費用は毎年少しずつなので、毎年の損益に与えるインパクトは薄まります。
100億円で工場建てても、その100億円は毎年2億円ずつ50年かけて費用化されていきます。
一方で、無形資産は資産化がとても難しいです、てか現状ほぼ不可能です。
ブランド力、顧客価値、教育レベルの高い人材、研究開発成果、こういったものをきちんとバランスシートに載せて評価することは実務的には大変困難です。
というか、無形資産を企業の判断で勝手にBS認識することは会計基準的に原則タブーです。
現代は工場の機械が富を生むというよりは、人の頭脳や情報が富を生みます。
特許収入が多いクアルコム。
ロイヤリティ収入が多いマクドナルド。
ソフトウェアを販売するマイクロソフト。
広告打ちまくってブランド力で売るコカ・コーラ。
(コカ・コーラは20世紀からですが。)
コカ・コーラってもはや製造業ではないですよね。
物を作って売ってるように見えて、利益の源泉は全くもって製造ではありません。
コカ・コーラはほとんどマーケティング会社だと思っています。
優秀な人材に対する給料や経営者報酬であっても、すべて払った瞬間に費用処理です。
マーケティングコストも費用処理です。
バランスシートの資産に計上されることは”ほぼ”ありません。
“ほぼ”というのは研究開発員の給料は資産化されることがあります。
(日本の会計基準ではありませんが、米国や欧州ではあり得る。)
普通の感覚として、給料とか経営者報酬、マーケティングコストって費用でしょっていうイメージをあなたもお持ちだと思います。
確かに、給料やマーケティングコストは会社にとって費用です。
あなたの毎月のお給料は、会社の帳簿で人件費としてbookされています。
でも本当にすべて費用でいいのでしょうか?
本当は資産としてバランスシートに一旦載せたうえで、建物の減価償却のように徐々に費用にしていく方が実態を表しているかもしれません。
なぜなら、現代のビジネスの収益の源泉はアイデアや研究開発、マーケティングだからです。
確実に売上に貢献しているマーケティング費用は、一度資産化したうえで徐々に売上高計上に応じて売上原価として費用化していく方が、実はより企業の実態を表した会計処理なのかもしれません。
しかし、そういうマーケティング費用や給料を資産化することは事実上不可能です。
これは仕方ないんです。。
想像するだけでも、難しいと思いませんか?
この会社のブランド価値は〇〇億円だ!
この研究開発プロジェクトの資産価値は〇〇億円だ!
この顧客リストには〇〇億円の価値があるんだ!
このマーケティングは〇〇億円の価値があるんだ!
っていうのを定量的に測定してバランスシートに反映するのはやはり難しいです。
今のところ米国でも欧州でも、これらの無形資産を資産化することは一部例外を除いてタブーです。
人件費もマーケティング費用もすべて費用処理。
で、この事実を株式投資家としてどう受け止めるべきか?
それは、現代の(特に高収益優良企業の)会計上の利益は不当に低く測定されている可能性があるということです。
それによって、PERは不当に高く測定されている可能性があるということ。
なぜなら、本来はバランスシートで資産化して徐々に費用化すべきコストを、すべて一括して費用化しているからです。
やむを得ず。
これって嫌なことに見えて、実は良いことかもしれません。
PERは割高割高って言われがちな昨今ですが、それは企業の利益が不当に低く測定された結果かもしれません。
利益(EPS)が低いと、PERは高くなりますね。
PER=株価 / EPS です。
株式投資が容易になった昨今の投資環境のおかげで株式のPERは高くなったと言われます。
本当にそれだけなのでしょうか?
企業の無形資産が会計的にBSで評価されず即PL費用処理されるがために、PERが高くなっている面もあるだろうと思っています。
EPSが下がっても株価はそれによって下がっているわけではないでしょう。
会計処理がどれだけ変わっても、キャッシュは変わりませんから。
「(会計上の)利益は意見、キャッシュは事実」です。
見かけの利益に騙されるほど、アナリストも機関投資家もアホではありませんから。
ということは、、実質的なPERはもうちょっと低いのかもしれません。
これは私の推測に過ぎない話ですし、その実質的なPERがどれくらいかと聞かれてもわかりませんが。
PERが高いと投資に不安を持つことがあるかもしれません。
確かにPERは大切な指標ですし、過去と比べてあまりにPERが高い時は投資に慎重になることも大切だと思います。
ですが、21世紀はこういった無形資産の会計処理の影響でどうしてもPERが高くなりがちだ、ということも頭の片隅に入れておいて欲しいです。
WSJなどでは「S&P500のPERは過去最高水準で割高!」という報道が散見されます。
でも私から言わせれば、現代の投資環境の改善・暴落の恐怖感の減退・時代遅れな無形資産の会計処理、を考えればPERが過去最高なのは何ら驚くべきことではありません。
「現代の投資環境の改善」と「暴落の恐怖感の減退」は純粋にPERを押し上げるものだと思います。
要するに、株式の収益性を落とします。
でも、後者の「時代遅れな無形資産の会計処理」は見かけのPERを悪化させているだけです。
PERが高い高いとビビッて投資を止めていれば、30年後振り返った時に後悔するかもしれません。
ということで、一見割高に見える局面でもコツコツ投資を続けましょう、という有り体な提案で記事を締めさせて頂きます。
追記
この無形資産会計の限界を特に感じたが、ソフトバンクの英ARM社買収でした。
ソフトバンクはARMを3.3兆円で買収しましたが、うち「のれん」が3兆円です。
これ、、めちゃくちゃですよね。
ARMの価値3.3兆円のうち、バランスシート上の純資産はたったの0.3兆円で、残りの3兆円はARMのバランスシートに載っていない無形資産の価値ということです。
ソフトバンクの孫社長はARMに無形の価値が3兆円あると判断したわけです。
その孫社長の判断が合理的か否かはわかりませんが、ARMに凄まじい無形資産価値があって、それがARMのバランスシートに載っていないという事実があるのは間違いないことです。
半導体の設計というARMの業種も関係しているのは理解できますが。。
ARMの技術価値、人材価値を評価してバランスシートに載せることは現代会計では不可能なんですね。
ARMには3.3兆円の価値があるけど、ARMのバランスシートでは0.3兆円しか表現できていない。
残りの3.0兆円はどこに隠されているのでしょうか・・
こういうM&Aがあればその隠れた価値が明るみに出ますね。
(孫社長の主観的な価値とは言え)
”時代遅れな無形資産会計が”見かけの”PERを押し上げている”ご意見の通りだと思います。
確かに現状の会計制度においては費用化が大半で無形資産の計上は極めて限定的ですね。単体決算では税務上(会計の費用処理=ほぼ損金になる)という取扱いの影響が大きいと思いますし、IFRSでは多少異なると思いますが、日本基準では連結でも修正にはなりません。
またM&AにおけるPPA(無形資産の時価評価)に関しての経験でも、かつてとは随分変わりましたが、それでも知的財産権やロイヤルティー、研究開発費などの資産計上に関する会計監査人の考え方は限定的(保守的)だと感じた事が多いです。(経営層の理解・関心薄く、のれんが大きくなっても取り敢えず良しとしてしまうケースもありましたが)
しかし、過去の会計制度の考え方(ある意染みついてしまった常識)では、評価基礎が曖昧な資産計上については保守的にならざるを得ない部分もあるかと思います。正直なところ、私の経歴(現在61歳、会社勤めの殆どの期間を企業の会計部門で過ごしてきました)にしてみますと、連結決算、企業結合会計(最近また大きな変化がありました)など、かつての会計ルールにおいては全くなかった考え方が次々と導入され、実務上大きな変化に翻弄されてきたというのが実感です。
税効果会計、減損会計、キャシュフロー計算書、etcも考え方や実務上の対応に随分苦労しました。
Hiroさん世代には常識的な制度であり考え方かもしれません。ロートルの泣き言でした。
こんにちは。
おっしゃる通り、単体決算ではどうしても税務が優先される現実はあると私も実務の中で実感するところでございます。
税務上損金経理できるのに、敢えて資産化して法人税を前倒しで払うのは損です。
あるべき会計処理の追求と税務上のメリット、普通は後者の税務メリットが優先されますかね。
今日本では連結決算のみでIFRS適用が認められておりますが、今後は単体決算でも適用できるよう金融庁は検討中のようです。
ただし、やはり税務のハードルが高いと思われそんなに簡単には実現しないだろうと思っております。
IFRS適用に合わせて、単体決算から会計処理を変更しようとしてもどうしても税務のハードルがあるのが現実です。
M&AでのPPAでも、現在はなるべく無形資産として認識してのれんは少なくしようという時代の流れはございます。
とは言え、これもおっしゃる通り、PPAであってもなかなか無形資産認識できないのが現実です。
というか、無形資産認識するためにはコンサル(デロイトやKPMG、EYなど)にお金払って評価してもらう必要がどうしてもあります。
そうでないと、監査法人がそのPPA結果を認めません。
それもPPAでの無形資産認識が進まない一つ原因じゃないかと勘ぐっております。
また、米国基準やIFRSでは無形資産認識するかのれんにするかで会計処理が大違いです。
無形資産は償却しますが、のれんは非償却で減損テストをするのみです。
のれんにしておくことで非償却で済むので、費用が圧縮されます。
これも、無形資産ではなくのれんで認識したいと経営者が望む一因かもしれません。
監査法人が保守的というのはおっしゃる通りですよね。
ただ昨今の不正会計問題を踏まえると、そのような姿勢になるのは致し方無いとも思います。
>現在61歳、会社勤めの殆どの期間を企業の会計部門で過ごしてきました。
そうですか、人生のまた経理の大先輩からコメント頂き大変恐縮でございます。
SOUTHPAW-YASU様は会計ビッグバンの真っ只中で実務を経験してこられたのですね。
私は、大学生の時に会計士試験の勉強をしている時にはすでに、四半期決算、連結会計、退職給付、減損、企業結合、税効果すべて存在しておりました。
当然あるものだと思って学習しておりました。
これらを机上で学習することはなく、実務の中で仕事をしながら覚えるって大変なことだったんだろうとわかります。
この頃(2000年前後)に経理実務をされていた方はとても大変だったと思います。
まさにSOUTHPAW-YASU様はその時バリバリの経理マンだったのですね。
不謹慎かもしれませんが、ちょっと羨ましいです。
最近は会計ネタはIFRSなのでしょうが、色々雑誌等では議論されていますが、正直言って日本基準とそれほど変わりません。
のれん非償却というのがかなり大きなインパクトですが、それ以外はそんなに影響ないなあと思っています。
なので、あんまりIFRSについて深く勉強しようとは思ってないです。。
でも、初めて減損とか税効果とか導入されたときはもう勉強するしかないですよね。
将来キャッシュを見積もってそれをBS評価に反映させるなんて、20世紀の日本の会計実務ではあり得ないことですからね。
そんな会計激動の時代に経理実務を経験されていることを羨ましく思う次第です。
私は現代の会計は、有形資産の評価については見積もりの要素が入り過ぎてちょっと客観性がないように感じております。
逆に、無形資産についてはもう少し見積もりの要素が介入してもよいから、積極的に資産認識したほうがいいんじゃないのかなって思います。
会計基準策定面でも実務面でも難しいのは百も承知なのですが、今の会計では企業の実態を表せていないな~と思います。
そこは会計の限界として理解して、あとは投資家の自己責任で投資するしかないのでしょうけどね。
大変興味深いコメント下さり、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
Hiro様
たわいのないコメントに丁寧に返信を戴き恐縮です。
「まさにSOUTHPAW-YASU様はその時バリバリの経理マンだったのですね。不謹慎かもしれませんが、ちょっと羨ましいです。」
不謹慎だなんてとんでもありません。そんな風に言っていただけると、能力も乏しい自分が与えられた責任を全うするんだというプライドだけで仕事に取り組んでいた日々が懐かしく思い出され、嬉しいコメントを戴いたなと思っています。
>現代の会計における見積りの在り方についての見解、私も同感する部分が多いです。
私の所属している会社は良く言えば明治に遡る歴史があり戦後の花形産業、名経営者といわれる方も輩出したメーカーですが、その後の現実は本業がズルズルと衰退するのを小出しの縮小策を重ねて時間とコストを無駄にし、結局生産の大半は海外の製造子会社に移転して国内は空洞化してしまいました。救いだったのは私が入社した前後から技術的な関連で派生した事業のいくつかが国内外への投資、買収などを通じて収益の柱に育ってきたことと、有価証券や工場跡地を売却することで成長事業への投資とリストラ費用を何とかカバーし健全な財務体質を維持できたことです。土地の分譲事業を始めて営業利益を嵩上げしたり(当時、会計的には筋の悪いやり方だと反論し経営層から何を言うかと不興を買いましたが、反面、信念をもって発言することで経理マンとしての信頼は得られたように思います。不本意ながらも会計監査人と「どの程度まで事業の実態が伴えば不動産事業として営業活動として認めてもらえるか」妥協点を見出す迄話し合ったことを思い出します)特別利益の計上なども併せて何とか業績を維持(糊塗)してきましたが本質は過去の遺産の切り売りに過ぎず決して褒められたものではありません。投資家の視点で見れば、もっと適宜・適切な事業の見切りが出来ていればリストラコストが少なくて済み株主還元に回せる余力があった筈です。従業員の立場から本音を言えば退職者の方にもそれなりの手厚い処遇ができましたし、残った従業員もそれなりの賞与、退職金を貰うことが出来てハッピーという事ですが、余り投資価値が見いだせない経営ですよね。それを反映してPBRは常に1倍割れです。(勧められても持株会には決して入りませんでしたので少し白い目で見られたりしました。中にいると会社のアラばかり見えてしまいがちなものですが)
>そんな経緯で、金額的には小ぶりなものが多かったですが事業多角化のため新規事業に投資しては上手くゆかず減損という場面も多く経験しました。勿論兆候の認識・測定・計上に至るプロセスはルールに従い進めるわけですが、事業計画に基づく将来キャッシュの回収可能性の見積りでは、事業部門の描く予測(同じ会社の一員としては「正しい予測を」と依頼できても、それなりに根拠も付して出てきた計画に嘘だとは中々言えません。経営層からは将来のための研究開発投資というのが本音だが研究部門扱いでは客先に本気度を疑われるから事業部門にしている。減損対象にはあたらないと納得してもらえなどと言われ)バラ色の計画に基づいて何とか先送りをしたものの、結局実績は下方修正で減損計上を余儀なくされるということを繰り返し、監査人から「御社の事業計画はよりプレッシャーをかけて見ざるを得ない」と言われる始末でした。後手に回って期末近くになって「減損計上必死」となると余計に風当たりが強いので、ルールに基づいて実績や経過との乖離などをチェックし、早めにコーションを出すなり収益予想に反映するなどの対策を講じるようにしました。(始めからそう運用すべきでお粗末な場当たり対応でした。当たり前の事に気づくのが遅すぎたですね。)
減損会計に限らず、税効果会計(見積り計上した損失の確定時期や連結子会社の配当還流に関するスケジューリングなど)とか退職給付会計における様々な予測だとか、ロートルの身からすると「理屈でいえばはそうだろうが何となく腑に落ちない、結果は実態と合わないのでは」感じながら会計処理をしてきたように思います。また逆に、各種の処理に用いる”割引率”など過去の実績に基づくしか無いとは理解していても「マイナス金利などいつまでも続けられる筈がない。急激なインフレ・金利上昇が起きたらどんな影響がでるか」と危惧したりもしています。特に連結決算における判断や算定において難しいことが多く、自分の能力不足で危うく計上漏れや計算ミスを起こすところを部下に助けられました。実務を任せられる優秀な部下が育ってくれたことに感謝しています。
>「会計基準策定面でも実務面でも難しいのは百も承知なのですが、今の会計では企業の実態を表せていないな~と思います。そこは会計の限界として理解して・・・」その通りですね。
いわば生き物でどんどん変化してゆく事業経営を、全てが納得できる合理的な基準で財務諸表の数値に表現するなど土台無理な話で、可能な限りで・・ということでしか無いと私も思います。
>余談ですが、個人的には原子力発電事業の廃炉に関しての会計上の考え方(減価償却期間に廃炉作業期間も含めるとか廃炉に関する将来費用を解体引当金として定額法で計上する)は納得がいきません。原子力設備は当然ながら発電のための設備であり発電終了と共に償却を終了すべきだと思いますし、廃炉費用も「資産除去債務」の考え方を適用すれば良いはずで例外的な引当計上は整合性がとれません。
コストを電気料金の算定に含めることとの整合性だとか、早期の債務認識ではBSが持たないとか・・・既存の枠組みの中で電力会社の経営を維持するために仕方ない判断という理屈でしょうが、むしろ、経済的合理性に基づき、あるべき会計処理を適用して経営が持たないというなら電力事業の在り方・枠組みを見直すことこそ国民の利益に繋がると考えるべきだと思います。勿論東電始め電力各社の事業存続を妨害したり従業員の方の雇用を脅かしたりする意図は全くありません。しかし、国民全体に係わる公共財である電力事業・施設運営が正しく効率的に行われることこそ、最も優先されるべきと思う次第です。知識不足、勘違いなどありましたらご容赦下さい。
>調子に乗って長々と駄文を書き連ねてしまいました。
財務分析は基より、Hiroさんがブログに書かれている視点には気づかされる事が多々あります。一方的に勉強させて頂くばかりで恐縮ですが、宜しくお願いします。
SOUTHPAW-YASU様、
こんばんは。
2000年前後の会計ビッグバンを超える会計実務の変革は今後は先ず起こり得ないと思っております。
特に、単体会計から連結会計中心へと移行したのは大変だっただろうと思います。
会計士の勉強している時も、連結会計の資本連結関係は非常に難解でしたし、理解をすっ飛ばしてテクニックで乗り切った論点もありました。
実務的にはハイペリオンなどの連結会計システムに任せて大丈夫ですが、やはり経理担当者もきちんと知識を身に着ける必要があったことかと存じます。
(というか、初期は精度の高い連結会計システムもなかったのでしょうか・・。)
机上で勉強するのも大変でしたが、実務の中でそれをこなすのはもっと大変だっただろうと容易に想像がつきます。
また、退職給付会計なども大きな進歩ですよね。
退職金を払ったときに費用処理するなんて、今考えたらあまりに不正確な会計で信じられないくらいです。
将来キャッシュを割り引くという点でどうしても見積もりの要素が入ってしまいますが、きちんと退職金を負債認識するという点は企業の財務諸表をより正確に投資家、債権者に報告できるようになって良かったことだと思います。
どうしても批判的な意見は出てきてしまうものですが、あの時の会計ビッグバンで日本の証券市場は大きく前進したと思います。
公正な情報開示あってこその資本主義経済ですから。
SOUTHPAW-YASU様のような先人の方々の努力のおかげで、今の日本の証券市場があるんだと思います。
僭越ながら、その努力を無駄にすることないよう次の世代の私たちがその精神を引き継いで、より公正な財務情報の開示を継続していきたいと思います。
土地の売却を営業活動として報告するのは、かなりハードルが高い話ですね。。
そんなことがあったのですか。
よく監査法人が認めたなと思います。
キャッシュに影響を与えない所詮会計ではありますが、どうPLで表現するかで株価の反応は大違いですからね。
あと、日経の報道の仕方によっても・・。
経営陣の方が会計処理に拘るのも理解できます。
しかし、、メーカーが不動産分譲を営業取引として会計処理するとは初耳です。
まあ、会計はどうしても政策的な面がありますよね。
銀行に土地の時価評価を認めて、純資産をかさ上げしたことありましたよね。
土地再評価差額金なる科目で。。
減損判定についてですが、将来キャッシュをバラ色で持っていくとうのは、これはもう完全に”あるある”ですよね。
会計業界”あるある”だと言ってもいいかもしれません。
予想なら何とでも言えますからね。
うちの会社も、買収した米国子会社ののれん減損テストで問題になったことありますが、そりゃまあ現地米国法人が提出してくる今後の5か年計画はバラ色でした。
今期まで売上減少しているのに、翌期から急回復してその後CAGR7%みたいな・・(笑)。
何が起こったら、そんな急激に改善するのか全くわかりません。
監査法人もその計画を疑うのですが、何とも言えません。
「本当に達成できるのか?」と疑問に思いますが、事業の未来についてその事業責任者以上に監査法人側に情報はありませんから。
監査法人も決してサボっているわけではなく、きちんとあるべき財務報告をするよう一生懸命仕事していると思います。
それでも、このような会社側の主観的データに基づく会計処理については、よほど非合理でない限りNOとは言えません。
正しい財務諸表を作ろうとすればするほど、将来の見積もりの要素が大きくなってきます。
そして、外部監査人はそのような会社の主観的な見積もりに対してNOと言いにくいという問題があります。
繰り返しですが、その事業の将来についての情報格差があり過ぎるので。
どうしても情報弱者の監査人側が不利になってしまい、会社側の会計処理を容認せざるを得ないです。
将来キャッシュフローを会計処理に反映させることの大きな弊害だと、私は思っています。
日本企業のPBRが1倍を割ってしまうのは、やはり特に欧米の投資家から日本の経営が信頼されていないからだと思っています。
今まで散々株主資本を毀損する経営をしてきたので、それは仕方ないかもしれません。
とある調査によると、欧米機関投資家は日本企業が保有する現預金を半値評価と見なすそうです。
そんな評価しかされないなら、PBRが1倍を切ってしまうのでしょう。
ご丁寧にお返事頂き、どうもありがとうございました。
またいつでもお気軽に、ご連絡下さい。