米商業銀行大手のウェルズファーゴ(WFC)に投資しています。低金利が続いていますが、過去の財務データを見ると常に一定水準以上のROEを確保できています。低いバリュエーションを鑑みれば、長期では報われるだろうと判断しました。あと、高い配当利回りが魅力で。

ただ、不安もあります。新型コロナウイルスによる経済停止が特に中小零細企業の資金繰りを悪化させ、多額の貸倒損失が発生する可能性があります。現に、この3月決算でJPモルガン、ウェルズファーゴともに多額の貸倒引当金を計上しました。貸倒引当金とは将来の回収不能貸出債権に対して、予め負債(費用)を認識するものです。また、低金利が継続して純金利マージンが改善しないのもリスクです。

銀行株のバリュエーションが低いのは相応の理由があります。が、私は商業銀行には別のもっと大きなリスクを感じています。それが政府主導の信用創造、つまりMMT的な思想、財政政策が世の中に定着することです。

コロナ問題を受けて、米政府は個人、企業救済のために2兆ドルを超える財政支援を行います。これがきっかけとなり今後も頻繁に財政出動が行われ、銀行の存在感が消えていく未来が垣間見える時があります。

銀行は貸出利息で儲けています。預金の支払利息が1%で貸出金の利息が3%なら、差額の2%が利潤となります。これを純金利マージンと呼びます。金利が下がると預金利息も下がるので(私たちは実生活で体験済みですね)、銀行は経営が厳しくなるとは言え収益を維持できます。

利息を稼ぐためには当然ですがお金を貸し出す必要があります。融資の申し込みを受け、厳しい行内の審査プロセスを経て貸出が実行されます。これを信用創造と言います。信用創造とは銀行がお金を貸すことです。いたってシンプルな話です。

日米ともに銀行は融資先の発掘に苦戦しています。お金を貸してくれ!って言ってくる事業主はそんなに多くありません。なぜなら、現代の新規ビジネス、特にハイテク系のそれは大量の資本を使うのではなく、一部の優秀なエンジニアや経営者の頭脳を使ってビジネスモデルを組むからです。過剰な貯蓄だけでなく資本の需要が少ないことが低金利の一因でもあります。

世の中に莫大な富が蓄積され金利が低くなっているのに、それを利用したいと銀行に申し出る人は少ない。そこで、MMT(現代貨幣理論)が湧き上がってきました。MMTとはつまるところ積極的な財政政策で経済にお金を放り込め、ということだと解釈しています。専門的な勉強はしてないので、間違ってたらすみません。

本来、信用創造とは民間の商業銀行が担うべき役割です。しかし、商業銀行が貸出先を見つけることができず、結果として実態経済のマネーの流通量が減少してしまうなら、政府がやろうとなるわけです。MMT、財政政策とは政府が信用創造を行うことと言えます。

もし信用創造の担い手が政府になるとしたら、商業銀行の役割はどうなるのでしょうか。商業銀行の社会的な存在意義はあるのでしょうか? せいぜいすでに流通しているマネーの仲介で手数料を稼ぐくらいしかできなくなります。

もちろん、銀行の貸出しが完全にゼロになるなんてことはないでしょう。ただ、段々と世の中の富の使い道は公的なものになっていくのではと思います。それはもはや民間銀行のインセンティブでは無理で、政府が行うしかありません。これからは「大きな政府」の時代になるのではないでしょうか。ちなみに、ベーシックインカムは政府による信用創造でしかできないことの一つです。色んな意見がありますが、私は徐々にベーシックインカム的な政策が増えていくと思ってます。

そんな未来がくると思いますか?
私の考えすぎでしょうか?

銀行株には結構なリスクを感じています。それを承知でリターンを求めて投資をしました。財政政策が幅を利かせることになったとしても、商業銀行の役割が完全に消えることはなく、今の低いバリュエーションに見合うくらいの利益は稼げるのではと踏んでいます。あと、バフェットが銀行株にたくさん投資してるのも心強いです。他力本願ですが。