可処分時間というニューフロンティア

世界的にはまだ人口は増加していますが、日本など先進国では出生率は下がる一方です。周りを見渡すとそもそも結婚願望がない人が男女問わず多くいます。

どれだけ便利な製品、サービスを生み出そうとも、お金を払うのは人である以上、人口が増えなければ経済の拡大は限定的にならざるを得ません。

資本主義は常に拡大再生産を行うよう圧力がかかる仕組みを内包しており、新たなフロンティアを探し続けます。人口が増えなくても大家族が崩壊し、核家族、単身世帯が増えれば消費は増えます。一家に一台だったテレビも、二世帯になれば需要は2台に増えます。

しかし、それもそろそろ限界。

そこで資本家が新たに目を付けたフロンティアが可処分時間。人口が増えなくとも、一人一人が持っている1日24時間という時間を奪うことができれば富は生まれる。

高度に自動化された生産設備、個人にまで普及したPC、マイクロソフトやスラックのサービス。これらが肉体労働、事務労働両方の生産性を著しく向上させました。

そうやって人々の時間が空いてくる。もう週休2日じゃなくて3日でもいいんじゃない?という議論が出てくる。もともと何もしてなかったちょっとした隙間時間も積み重ねれば相当な量になるでしょう。

ハイテク企業が創り出したそれらの可処分時間を、ハイテク企業のサービスが埋めていく構図。iPhoneで移動時間や隙間時間にYouTubeやTikTok、Facebookを見てる人は大勢いるでしょう。ハイテクではありませんが、ネットフリックスの繁栄も可処分時間の増加と無縁ではないと思います。

この可処分時間という市場はまだ埋め切れてないと思います。

胃袋は大きくならないが

一方で、人口数と基本的に連動する飲食、日用品という領域にニューフロンティアはないように思います。

人が1日で摂取するカロリー、水分量は大きくは変わりません。むしろ、経済のデジタル化で必要カロリーは減りそうなくらいです。運動量は減るでしょうね。プロゲーマーの健康問題が先日ニュースになってました。

石鹸やシャンプー、ティッシュといった日用品の一人当たり消費量もそれほど変わりません。コロナ禍でアルコールティッシュとかマスクが増えるのはあるでしょうが。

飲食、日用品は特に先進国では突然大きく成長することは考えられません。最近のペイパルやスクエアのような決算を目にすることはないでしょう。

それは成長余地が乏しいという点ではデメリットですが、新規参入が少ないという点ではメリットです。

地元でレストランやカフェを出そうという人は多くいるでしょうが、グローバルマーケットを見据えて飲食、日用品業界で起業を考える人はほとんどいないのではと思います。ビヨンドミートの植物肉とかの例もあるし全くのゼロとは言えませんが。

マーケットの成長余地があり、かつ比較的初期投資がかからないIT業界でのビジネスを考える人の方が多いと思います。

30年後もアップルやマイクロソフト、フェイスブックが安定したキャッシュを稼ぎ優良企業と言われているかは何とも言い難いです。インターネットがこの10年で社会をどれだけ変えたかを考えれば、30年後の世界なんて想像もできません。

一方で、プロクター&ギャンブルやネスレ、コカ・コーラ、ペプシコ、コルゲートパルモリーブといった消費財系のグローバルブランドは、かなりの高確率で30年後も潤沢なフリーキャッシュフローを稼ぎ出す優良企業として存続しているのではと思います。ただし、成長のスピードは緩やかでしょうが。

生活必需品セクターはグローバル企業であっても地味な存在ですが(少なくともテクノロジーセクターに比べれば)、だからこそ新規参入がほとんどなく長期保有には向いているとも言えます。

株式価値の大半はターミナルバリューなので、30年後50年後にも存続しているかどうかというのは長期投資家として重要な検討ポイントだと思っています。

成長を取るか安定を取るか、トレードオフな面もありますね。GAFAMを始めとしたテクノロジーの勝ち組はコロナ禍が追い風になっているし、元々PLも凄まじい利益率です。いくらかポートフォリオに組み込むのは必須でしょうか。

一方で、あまり注目を浴びない生活必需品セクターのグローバル企業にも投資価値は十分あると私は思っています。

生活必需品セクターで現在保有しているのはフィリップモリス(PM)、アルトリアグループ(MO)、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)の4社。タバコに偏り過ぎか。銘柄は入れ替えることあるかもしれませんが、生活必需品セクターへの投資比率は現状の20%くらいは維持したいなと思っています。