格安「先進国」の日本
NewsPicksのオリジナル記事に『格安の国、ニッポン「10の衝撃」』という記事が上がっていました。
日本の物価がいかに安いのか様々な視点で分析されていて面白かったです。たとえば、ビッグマックの値段は米国が5.6ドルで日本が3.7ドル。ちなみに一番高いのはスイスで7.3ドル。日本はタイや韓国より安いんです。驚きました。
日本の物価が相対的に安くなっているのはご存知の通りですね。バブル崩壊後、デフレに陥りました。デフレを脱却した今も低インフレです。コロナ禍のせいとは言え、2020年の物価上昇率は若干のマイナスでした。
アメリカのインフレ率は2000年代は3%強、2010年代は2%前後が続いていました。たった1%、2%の差でも10年20年と積み重ねれば、物価の差は大きく広がります。複利の効果は株式投資の世界だけに存在するわけではありません。
日本は黒田氏が2012年に日銀総裁になって「異次元緩和策」を打っても、さほど物価は上がりませんでした。
低インフレは雇用安定の裏返し
なせ、日本の物価は上がらないのか?
NewsPicksのコメント欄で識者がこう仰っていました。
「(物価が上がらないのは)やはり強固なジョブセキュリティの下で賃金が硬直的になっているという側面は小さくないとは思います。」
ご指摘の通りだと思いました。私もそう思います。「側面はある」というかそこがすべてだと思うくらいです。
インフレという経済事象は賃金上昇からスタートします。
好況で労働力が不足し、資本家よりも労働者が交渉力を持つと賃金が上がります。「給料上げてくれないなら辞めるよ」って言えるからです。
賃金つまり売上原価、人件費が上がると、そのコストアップ分を回収するために企業は値上げします。その連鎖がインフレというマクロ事象になっていきます。
しかし、日本ではそれが起きません。なぜなら、雇用の安定と引き換えに給料の交渉権を放棄しているからです。転職市場も未発達で、転職して給与を上げるという文化もあまりない。
よって、賃金が上がらない、物価が上がらない、となっています。
賞与査定の交渉とかしたことあります?
私は文句なんて一度も言ったことないです。良くても悪くても、淡々と会社の評価を受け入れる。評価が覆ることなんてあり得ないし、そんなこと言ったら異分子と思われて組織に居づらくなります。どうせ大して給料変わらないんだし、交渉する精神力消費量とリターンが釣り合わないです。
日本は就職ではなく就社なんて揶揄されることもあります。正社員で雇った人はその家族も含めて金銭面の面倒は見る。その代わり、丁稚奉公しっかり働け。給料は年齢とともに徐々に上がっていくから、給与の交渉とかさせないよ。
最近はジョブ型雇用なんて言葉も出てきましたが、大半の日本企業はまだまだこういう雇用文化ではないかと思います。うちはそうだと思います。
仕事で成果を上げなくても賞与の査定がちょっと下がるだけで、基本給は満額しっかり出る。ましてや首になるなんてあり得ない。一定数できない奴はいる。そういう人も含めて会社は社員を養う責務がある。そんな感じでしょうか。
この雇用の仕組みの是非を問うつもりはないです。良い面もあると思います。会社が教育してくれて、長くじっくりスキルを身につけることができるとか。あと、法律的に簡単に社員を首にできないというのは、雇われている側からしたら安心感はあります。
が、繰り返しですが、そのサラリーの安定と引き換えに、給料アップの交渉権を奪われています。奪われているというか捨てていると言うべきか。
日本の労働者って資本家に対する交渉力をそれなりに持っているのですが、そのパワー配分が偏っている。「首にしたけりゃやってみろ」的な交渉力は強いけど、「人手不足なんだから給料上げてよ」的な交渉力は弱い。つまり、安定に重きを置いているということ。
株を買ってリスク・リターンを調整した方がいい
高校、大学を卒業したらどこかの会社に所属して、一労働者としてスタートすることになります。働いて給料もらわないと自立できません。自分でビジネス、投資やるにしてもまずは種銭が必要。
ただ日本企業に入る場合、それだけだとあまりにも経済リスクを取ってなさすぎです。どれくらいリスクを取るかは人それぞれだとしても、雇用の守られた日本企業に勤務しているだけという状態が、最適リスク・リターンになる人ってほとんどいないのではと思います。
でも、実際はほとんど人がただ漫然と雇われ労働だけをやって副業も投資もやらないのは、自分がローリスク・ローリターンの立場にあることを認知できていないからだと思います。
リスク・期待リターンを引き上げるためには、株を買うのが一番手っ取り早いです。投資ブログだから言いますが。
日本のガチガチの雇用規制は判例に依存している面もあるので、そう簡単に変わらないです。ジョブ型雇用なんて掛け声だけで終わる可能性大です。
これからも雇用は守られているものの、賃金は上がらず、結果として物価も上がらないという状態は変わらないと私は思います。他国との経済格差は広がるばかり。海外旅行は贅沢な趣味により一層なっていきます。
日本の状況は変えられないとしても、あなた個人の経済状況は意識次第で変えることができます。日本が貧乏になるからって、あなたが道連れで貧乏になる必要はありません。日本は私有財産制度が認められている資本主義社会です。
適切なリスクを取って、相応のリターンを得られる立場に身を置くことです。私のオススメはつみたてNISAとiDeCoで米国株を積み立てることです。
Hiroさん こんばんは
物価が上がらない理由に関してですが、
「少子高齢化で年金&預金暮らしの高齢者が増えた」というのもあるかと思います。
何らかの要因(通貨安など)で物価上昇
↓
一定額の年金収入しかない高齢者が預金を減らすまいと消費を減らす
↓
需要不足で物価下落
ただ、これ良く考えると現預金一辺倒の現役世代でも言えることで
何らかの要因(通貨安など)で物価上昇
↓
給料は増えないし預金も超低金利で増えないため、消費を減らさざるを得ない
↓
需要不足で物価下落
というスパイラルに陥っているんでしょうね。
(あくまで私個人の持論ですが…)
それもあると思います。
昨今の世界的な低金利の一因として、高齢化による低リスクの貯蓄選好が高まっていることが指摘されています。
高齢になるとリスクを取って増やすよりも資産を守ることが重要になるので。
世界的に先進国で低インフレが続くかどうかはわかりませんが、日本はほぼ間違なくそうなるだろうなと思います。
不思議だと感じるのは、日本は物価は上がらない割には通貨がさほど強くならないことです。