効率的に黙々と働いて、いつもほぼ定時に「おつかれさまでーす」と颯爽と退社していく後輩がいます。仕事の優先度の付け方がうまくて頼りにしています。

毎日定時に帰ってるくらいだから、さぞアフターファイブを楽しんでるんだろうな。彼氏とデートでもしてんのかなと勝手に想像していました。先日ちょろっと聞いてきみました。「いつも早く帰ってるけど何しているの? 飲みにでも行ってるの?」って。

そしたら、彼女はこう言うんです。
「いやいや、平日は仕事から帰ったらほとんど何もしてませんよ。疲れて何もする気起きませんね~。真っ直ぐ家に帰って、ご飯食べてテレビ観て、後はテキトーに過ごしてさっさと寝ます。毎日こんな感じですよ。」

そうか、そうだよな、定時まで働いているのに「いつも早く帰って」とか言ってる僕がおかしいんだな。

うちの会社は週休2日(土日休み)で、勤務時間は約8時間です。平均的な会社です。1日8時間も働いたら、そりゃ誰だってへとへとですよね。ましてや経理部なんて、一日中PCと睨めっこなわけで目がホントに疲れます。仕事から帰った後に、米国企業の財務データを分析してブログを書いている私は変態ですね(笑)。耐性が付き過ぎて、四六時中数字を見てても疲れない体質になったのかもしれません。余談失礼。

こういう人周りに意外と多いです。平日は仕事だけで特に何もしないって人。平日はそういうもんだと割り切ってる感じ。もちろん、本を読んだりゆっくりお酒を飲んだりはするでしょうが、基本的に平日は「仕事の日」という認識。

いつも22時くらいまで残業している上司や同僚が、平日に仕事以外何もしてないのは何となく想像がつくけど、一見アフターファイブを満喫してそうな人でも平日は仕事だけって言ってる人が多いです。

それって何かおかしいなって思う時があります。

仕事、労働を食い扶持を稼ぐ手段だと捉えた時、週7日のうち5日をすべて労働に充てるのは何だか異常な気がします。もちろん1日は24時間、睡眠時間を除いても16時間はあるわけで、労働時間が8時間なら1日中働いているわけではありません。平日も8時間は余暇があると言えます。ただ、当の働いている本人たちからしたら「平日は仕事のみ」という感覚なわけです。行き帰りの電車でさらに疲弊が増すという理由もあるかもしれません。都内は満員電車がしんどい。

仕事はただ生きるための金を稼ぐためだけではなく、ビジネスを通じた社会貢献、コミュニティへの帰属、健全な承認欲求の充足といった役割も担っています。しかし、多くの人にとって仕事の第一義的な意味は、生きるためのお金を稼ぐ手段ではないでしょうか。私はそうです。給料出ないなら迷わず辞めます。

1週間のうち2日は休んで5日は働くというペースは常識になっています。それは仕方ないことかも。みんな学校教育の中でそういう生活習慣を身につけてきましたから。脳と心が柔軟な幼少期にそんな「洗脳」をされたら、大人になってからその呪縛を解くのは困難です。社会全体がそのルールで回っている中で、いくら自分がレールが外れようとしても難しいというのもあります。

元も子もないことを言うと、会社が規定で労働時間を定めている以上、それを破ると給料がもらえないから、やむを得ず所定の勤務時間は働く必要があるということになります。たとえ仕事が終わっていても、デスクにいなくてはいけません(そして追加の仕事が降ってくる・・)。

私たちの生物学的なDNAと社会のルールは相容れない要素が多々あると思います。ご先祖様から授かった高等複雑な頭脳によって、DNAに反する慣習もすんなり受け入れることができるのかもしれません。

今日、豊かな社会の人は、毎週平均して40~45時間働き、発展途上国の人々は毎週60時間、あるいは80時間も働くのに対して、今日、カラハリ砂漠のような最も過酷な生息環境で暮らす狩猟採集民でも、平均すると週に35~45時間しか働かない。狩りは3日に1日で、採集は毎日わずか3~6時間だ。

通常、これで集団が食べていかれる。カラハリ砂漠よりも肥沃な地域に暮らしていた古代の狩猟採集民なら、食べ物と原材料を手に入れるためにかける時間は、いっそう短かった可能性が高い。

『サピエンス全史(上)』

狩りは3日に1日。これくらいが普通なのかも。少なくとも私たちのDNAは5日間も連続で働くことに順応してないはずです(特にデスクワークには)。そりゃ毎日定時までPCカタカタしてたら疲れるのも当然。

「常識」は時代ともに変わります。数十年、数百年はとてもじゃないですが、動物のDNAが進化できる年数ではありません。しかし、私たち人間は「住めば都」の精神で社会規則の変化に柔軟に対応できる能力があります。あるようです。

かつては週休1日でした。日本経済復活のため馬車馬のように働きまくった時代もありました。工業革命、情報革命を経た現代はかなり状況が変わってきました。資本家はもはや人という労働力を当てにしなくなってきました。

日本マイクロソフトが週休3日を試験導入するそうです。今年の8月は金曜日がすべてお休みになるそうです。羨ましいな。急には社会は変わらないものですが、この労働解放の流れ自体は構造的なもので変わらないと思います。遅かれ早かれ、週休3日がグローバルスタンダードになるのではないでしょうか。そしていつか週休4日に・・。

私たちはかつて3日に1日しか働かなかった狩猟採集民だったのに、農業革命を経たあたりから働きアリのようになりました。図らずも、DNAに反して。しかし、1万年の時を経て、ようやく狩猟採集民時代の生活ペースに戻る時が来るかもしれません。週休3日、4日くらいが多分丁度いいんだと思います。

株式投資でアーリーリタイヤなんて目指す必要もない時代が来るかもしれませんね。