以下はウォールストリートジャーナルにあったグラフです。先進20ヵ国の政府債務のGDP比と金利の推移です。

(ウォールストリートジャーナルより)

この40年間、債務は増え続けているにもかかわらず、金利は一貫して低下し続けています。ご存知の通り、日米欧ともに低金利ですよね。

コロナ禍で財政支出が増える中、金利もついに上がるという見方が多いです。が、私は40年続いている金利低下圧力はそう簡単には覆せないのではとも思います。

なぜ、金利が下がり続けているのか?

それは低金利でも借金したいと思う企業が増えないからです。だから公的債務は増えているわけですが、民間債務の需要不足を補うほどではないということです。

なぜ、企業は借金しないのか?

労働集約的ないし資本集約的なビジネスが相対的に減少しているからだと思います。

米国最大のセクターであるテクノロジー系の企業は一部の優秀な頭脳にインターネットでレバレッジをかけており、多額の資本を使わずに規模を拡大させています。

一昔前は労働集約的だった産業も機械による自動化が進んでいます。労働者側の交渉力は小さくなり、賃金はさほど上がらない。これも低金利に一役買っていると思います。

低金利は社会の豊かさ、成熟度がもたらしていると言えます。だからこそ、先進国の金利が下がっています。

先進国でお金の価値が下がっているのは事実です。お金を調達するためのコスト(金利)の低下がその証です。

にもかかわらず、昔と変わらず今もお金を稼ぐのはとても大変です。汗水たらして働かないといけません。個人的な話ですが、最近は残業続きで平日は仕事して帰って寝るだけの生活です。

お金の価値が下がっていると聞いても、「いやいやお金は超大事でしょ。こんだけ働いてるんだから。1円たりとも無駄遣いはできないよ。」と思う人が大半ではないでしょうか。私もそうです。

それなりのお金を稼ぐためには、週5日1日8時間も働かないといけません。そうしないと、給料もらえませんから。働かざるもの食うべからず。

人生の貴重な時間の大半を投じて労働しないとお金を稼げないというルールが変わらない限り、いくら債券市場が「お金に価値はないよ!」と叫んだところで響きません。

政府債務は問題を起こさずに永遠に増やし続けることはできない、というのがエコノミストのほぼ一致した見解だ。一方で、借り入れコストが低ければ、たとえ債務水準が高くても問題はなく、その水準は恐らく20年前に考えられていたよりも高まっている、という見解も広く受け入れられている。問題は、どの水準までであれば問題ないかだ。

ウォールストリートジャーナル


まさにその通りだと思いました。

どの水準まで債務を増やしていいかわからない。今のところ金利は上がらないから大丈夫そうだけど、どこが臨界点なのか誰もわからない。

もしかしたら先進国は労働時間も給料も半分にし、残りは政府が紙幣を刷って補填しても社会は混乱なく回るのかもしれません。でも、そんなリスキーなこと簡単にはできません。マクロ経済は実験で検証できないのが辛いところです。

ルールはゆっくりにしか変わらないです。何が正しいか誰もわからないので仕方ないことです。

いくら金利が下がろうとも、おそらく私たちが生きている内には、「お金には価値がない」なんて言える時は訪れないと思います。

「あり金は全部使え」と言うにはまだ時期尚早です。その価値観に社会のルールが追いつくのはもう100年はかかりそうな気がします。

お金は大事ですよ。しっかり働いて、浪費を控え、貯蓄し、コツコツ投資をしてお金を増やした方がいいと思います。