以下はジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』に書いてあった、20世紀後半の高リターン銘柄一覧です。
ティッカー | 会社名 | 年率リターン |
PM | フィリップ・モリス | 19.8% |
ABT | アボット・ラボラトリーズ | 16.5% |
BMY | ブリストル・マイヤーズ | 16.4% |
TR | トゥーツィー・ロール | 16.1% |
PFE | ファイザー | 16.0% |
KO | コカ・コーラ | 16.0% |
MRK | メルク | 15.9% |
PEP | ペプシコ | 15.5% |
CL | コルゲート・パルモリーブ | 15.2% |
CR | クレーン | 15.1% |
この中で先ず目に付いたのがコカ・コーラ(KO)です。「おお、さすがバフェット!」って思いました。バフェットは1988年からコカ・コーラ株を買い始めました。無数にある企業の中からこれほど高リターンを記録する企業を選び出すなんて、凄い目利き力と胆力です。さすが投資の神様。
一方でこうも思いました。「あらそう言えば、コカ・コーラより高リターンな消費銘柄のフィリップモリスはバフェット銘柄じゃないよな。バフェットはフィリップモリスの将来性は気が付かなかったのかな?」って。
タバコの製造販売ってバフェットが好みそうなビジネスだと思うんです。
・消費者向け
・単価が安く、回転が早い
・事業継続に多額の資本投資が必要ない
・高いブランド力を持つ
・参入障壁が高い(有料ブリッジ)
こういった観点がバフェット銘柄にピッタリな気もします。
でも結果としてバフェットはタバコ会社には投資していません。
なぜか?
バフェットはタバコが嫌いだった?
どうやろ。バフェットがタバコを吸っているところは見たことないから、吸わないのかも。でもだからって投資しない理由にはならない。タバコは吸わないけど、タバコ会社に投資している人はたくさんいるし。あ、僕もそうです。
タバコは健康被害をもたらして社会に悪影響だから、タバコ会社には投資しないという人もいます。ESG投資が盛んに言われる昨今、タバコ会社や石油会社には投資しないと表明している機関投資家もいます。バフェットもそうなのか?
どうだろうか・・。これは勝手な推測ですが、バフェットは自分が理解できて儲かると思った企業であれば投資する人だと思います。その事業が「道徳的」だとか「非道徳」だとか、そういうことはあまり考えてなさそう。
なんでバフェットは、高収益な消費者向け企業であるタバコ会社に投資しなかったのか?ってずっと疑問でした。ググっても出てこないし。ま、そんな気にしなくていいやって思ってきました。
が、、先日とある書籍を再読していると、こんな文章を発見したんです。引用します。
19ドル近辺のフィリップモリスの最近の株価は、2000年最大のバーゲン品かもしれません。
バフェットがどうしたか、だって? 1970年代から80年代初めにかけて両社
『億万長者をめざす バフェットの銘柄選択術』より
(レイノルズとフィリップモリス)に投資していたが、最近は一切保有していない。バフェットは将来が確実な企業にしか投資しない。両社の見通しはいずれも確実というのは程遠いのだ。
知らなかったのは、バフェットはかつて1970年代にタバコ会社に投資していたんですね。
バフェットは1990年代に、売られまくっていたタバコ会社を再び狙っていたことだと思います。投資するかどうか迷ったと思います。
でも、結局買わなかった。それはタバコ会社について100%の確信を持てなかったから。バフェットはそういう人です。自分が100%(せめて99%)未来を確信できる銘柄でないと投資しない人です。一度投資しても、自分の未来予想が誤っていたとわかるとスパッと売却します。最近のIBMのように。
バフェットはわからなかったんです。ウン兆円の多額の賠償負担を背負わされ、消費者、政治家から大批判されているタバコ業界が今後も繁栄し続けるかどうか確信を持てなかった。だから投資しなかった。
でも結果としてフィリップモリスは爆益を上げた。年率20%近い凄まじいパフォーマンスを達成した。バフェットはその爆益を取り逃してしまった。バフェットはそれを後悔しているのだろうか?
いや、多分後悔してないと思います。自分が確信を持てない銘柄に投資して(偶然性のある)100のリターンを得るよりも、自分が完璧に理解している企業に投資して80のリターンを得る方が価値がある。バフェットはそういう風に考えていると思います。
フィリップモリスに投資して(偶然性のある)100のリターンを得るよりも、コカ・コーラに投資して(偶然性が排除された)80のリターンを得ることを選ぶのがバフェットです。
ある投資家がどれくらいの投資リターンを上げたか、それはポートフォリオを見れば推定計算できます。バフェットのようにポートフォリオを公開している著名な機関投資家であればなおさらです。
でも、ある投資家がリスク調整後でどれくらいのリターンを得たか、それは周囲は知り得ません。その投資家がどれくらいリスクを感じていたのか、そんな心の奥底は誰もわからないからです。
タバコ会社への投資を避けたバフェットの姿勢を僕も見習いたいです。ただ、どれだけ勉強しても、自分がバフェットのように未来を100%確信できるようになるとは思えないです。70%くらいの確率で繁栄している未来を思い描ける優良企業に分散投資します。自分の能力、株式投資へのコミットレベルではそれが限界。
(自分が100%納得できる)素晴らしい企業を、そこそこの値段で買いなさいってことですかね
私にもそんなコミットメントは無理そうです(笑) 私はバフェットにはなれない。
個人投資家って究極的には自分なりに悩んで、頭を使って、自分で納得して虎の子をぶち込んで、お金持ちになっていくしかないんでしょうね。本当に自己責任の世界です。
ですね。
30年後、もし自分のポートフォリオが市場平均を超えたとしても、それが自分の実力とはとても思えません。
最低限の銘柄選別をしたら、後は運の要素も大きいと思います。
金融の世界は実力と運の境界線が曖昧と言われます。
リターンにこだわりつつも、後は業績があーだこーだ言って楽しく続けることができればそれでいいかな~という心境です。
もちろん結果にもこだわりますが、ライザップみたく「結果にコミット」は無理です。
たばこ銘柄の投資判断 黄金銘柄は続くのか
https://www.keeping-safety.com/2017/08/blog-post_28.html?m=1
上のブログの分析によれば、たばこ銘柄の長期的リターンはマイナスになるそうです。
プレミアムが付いて投資妙味がないどころか危険域に達しているようです。
投資には安全域が無いと絶対勝てないので、やはり、財務健全性の安全域、割安性の安全域、収益性の安全域、成長性の安全域の順番で分析していく必要があると思います。
長期リターンがマイナスになるのはしんどいですね。
せめて債券には勝って欲しいものですが。
タバコのマーケットが大きく広がるとは思えず、バリュエーションはそうなってないということですね。
『株式投資の未来』を読んだからではなく、実際にフィリップモリス等の財務諸表を見てあまりの高収益に感動して投資している経緯はあります。
でもやっぱり心のどこかで「かつて高リターンだったから」という期待があるのも事実です。
私は今でもタバコ会社は平均以上のパフォーマンスになりそうな気がしています。
今後も検証を続けながら、慎重に投資していきます。
タバコ会社のリスクが特に大きいのは,政府規制の影響を大きく受けるからだと考えています。通常の企業であれば業績が悪化するのは徐々にでしょうから,財務状況や市場シェアを良く見ていれば,不調を察知して株を売却することが可能です。しかし,タバコ事業の場合,政府の規制で一夜にして状況が変わる可能性があります(もちろん,そうならないようにタバコ会社は思いっ切りロビー活動をしているとは思いますが)。これはタバコ会社特有のリスクで,株価のスペシャルディスカウントの理由になり得ると思います。
私は,自分のお金はちょっとでも世の中に役に立って欲しいので,いわゆる”sin stocks”への投資には抵抗がありますが,これは個人の考え方次第ですね(“sin stocks”の定義もいろいろみたいですが)。
最近のブリティッシュ・アメリカン・タバコの株価を見ると、政府規制の影響の大きさを痛感します。
政府の規制で大企業がつぶれることなんてあるのか、、信じ難いですが予断を持たず最悪のリスクは想定しておきたいです。
根本的にはタバコが社会から求められるか否かです。ここが減退すれば規制云々関係なくタバコ会社は衰退するでしょうから。
タバコ会社はそこそこディスカウントされるようになってきました。
キャッシュフロー創出の効率は依然として高いですから、ディスカウントが続けば今後も高いリターンが見込めるかもしれません。
がやはり予想はできませんので、過度な投資は控えたいと思います。
アルトリアが最近1年以内に2回増配当したことから
この会社の経営陣の強い意志を感じました。
さすがに、毎年増配で異例の増配2回後の翌年に減配はできないと思う。
株価は経営者が決められませんので、どうしようもありませんが。
巨額訴訟の時代と今の時代では、タバコ銘柄の外部環境は変わりましたが、
アルトリア(フィリップモリス)の経営管理は、どの環境でも動じない
のが強みではないかと感じるようになりました。
紙巻きたばこの原材料が天候不順で供給不足だったりするニュースを聞い
たことがありません。
生産管理、資金管理、輸送管理は当然ですがしっかりしている会社だと
言えると思います。
バッフェットは幼少期、新聞配達、コーラ売り、ピンボールレンタルを
経験していたので、新聞・コーラ銘柄に多少の執着はあったのかも、
ピンボールの投資先はなかったから、しなかったのかなぁ。
アルトリアはしっかり増配してくれますよね。
配当性向は80%近くあって決して余裕はありません。
経営者の意志の強さだけでなく、将来に対する自信の表れとも思います。
マリファナや電子タバコなど、既存のタバコとは異なる分野が出てきていますが、これまで築き上げたブランド力と資金力を活かしてうまく立ち回ってくれることを期待します。
昔ある一貫して同じビジネスを続けているので、オペレーション的なところは年々強くなるでしょうね。
物流網の広さは見落とされがちですが、広いMOATの源泉になることがあります。コカ・コーラやアンハイザーブッシュインベブもそうです。
バフェットは消費銘柄だけでなく、メディアにも好んで投資していましたよね。
確かに馴染みがあったのが大きいかも。
バフェットは最近は銀行株への投資に積極的です。
どういう意図があるのか気になるところです。
Hiroさん
Btpです。下名の調べたところ、バフェット氏は間接的にタバコに投資しています。webでも確認できますが、バークシャーの子会社にMclane社という卸会社があります。確か、元々はwmtの子会社だったのを買い取ったと記憶しています。
一方、MO の10K 2018のp3にmoの最大顧客としてMclane社の記載があります。更にraiの10K 2016(btiに買収されたので、この年が最後か?)のp8にも最大顧客としてMclane社が出ています。この2社分のシェアだけでも全米の20%超あります。買収される前のloの10Kにも最大顧客として記載あります。そしてディスカウントタバコのvgr 10Kのp4に2つの顧客とあり、名称は不明なるも、おそらく1社はMclaneと推定されます。(もし、ページがズレていたら、また同名の会社だったら、ごめんなさい。でもロゴが同じなので多分同一です。)
若輩者の愚考ながら、バフェット氏は巨額の訴訟を避けることのできる形(被告はタバコメーカーに引き受けてもらい?)で儲かるタバコビジネスに関与しているものと推定します。
BTPさん
情報ありがとうございます。
メアリー・バフェットさんによれば、バフェット氏はマールボロブランドを持つフィリップモリスへの投資を迷っていたそうです。
100%の確信は持てないからという理由で見送ったそうですが、間接的に投資していたのですね。
タバコって卸も儲かるんですかね。そこだけ少し疑問に感じました。
タバコは出荷量が多いですから、ボリュームで粗利を稼げるのかもしれません。
あるいは、何か大きな強みがMclane社にあるのか・・。
ご返信ありがとうございます。
卸もメーカー程でないにしても、儲かっていると推定しております。在庫は確実かつ即座にcashに変わるビジネスなのでしょう。そうでなければ、定期的に年二度も値上げしているにもかかわらず、Mclane を含むmo(正確にはpm USAのcigarettes)の顧客が3日前払いの取引条件を受け入れることなど、ありえないと考える次第です。
Mclaneは、moの値上げ後は即座に顧客(小売)へ価格転嫁が出来る体制なのでしょう。
またsnuff(smokeless)のust部門も翌日支払の条件です。このため、moはreceivables (ワイン他?$142m)がほとんどなく、bad debt expenseを計上していないようです。
私のいる完全負け犬業界ではこんなことは絶対にあり得ません。支払は90日前後が当たり前で時々キャンセル、踏み倒し(訴訟沙汰も日常茶飯事、各種引当金多し)ありです。
Moは、My portfolio でMsft (長短のunearned revenueで$28bの前払いあり。世の中の不平等を通り越して、本当に羨ましい独占的ビジネスです。)に次いで、銀河帝国度(暴利な取引条件を相手に強制出来る点数)第2位です。
後は株価との兼ね合い(価値と価格)を分析するみですが、これが難しいところです。
3日前払いってえげつない取引条件ですね(笑)。
>moはreceivables (ワイン他?$142m)がほとんどなく、bad debt expenseを計上していないようです。
へ~、そうでしたか。
アルトリアのBS改めて見てみます。
交渉力のある企業は地道にこうやって資産回転率を上げて、ROEをさらに高くしていますよね。
マイクロソフトもそうだし、アップルやアマゾンもそうです。CCCマイナスですし。
やはり長期投資は勝ち馬に乗るのが手っ取り早いなと思う次第です。
Btpさんの銀河帝国度評価1位のマイクロソフトは決算が良くて、さらに遠くに行ってしまいました・・。
見えなくなる前に早めにポートフォリオに入れたいところですが、なかなか決断できません。
>後は株価との兼ね合い(価値と価格)を分析するみですが、これが難しいところです。
同じくです。