米国債の利回りが2%下回ったあたりで「さすがにもう債券価格は天井だろう」と思いました。理由は米国のインフレ率2%弱を前提にすれば、これ以上の利回り低下は実質リターンをマイナスにしてしまうからです。

しかし、そんな理屈お構いなしに債券利回りは低下を続け、コロナウイルスの一件でその勢いに拍車が掛かりました。この記事を書いている2020年3月9日現在、10年債利回りは0.4%台です。債券に投資してきた人は思いがけず?凄まじいキャピタルゲインを享受していることでしょう。羨ましいっす。

債券、特に米国債は安全資産です。この安全地帯にこれほどの資金が集まっています。マーケットは何を考えているのか。もしかして、債券相場はコロナウイルスの件を予期していたのか?

いや、さすがにそれはないかな。債券利回りは1980年前半をピークに下がり続けています(債券価格は上がり続けている)。以下は1970年から現在までの10年債利回り推移。

Investing.comより)

この長期トレンドをコロナウイルスの件が、後押ししただけに過ぎないように思います。

近年の債券利回りの急落は何を意味しているのだろうか?

と、今まで考え続けてきて、ニュースとか色々読んでも答えは出ないままです。一つ確実に言えることは、みんなが債券を買っているということ。その事実だけは確かです。でも、なぜ買っているのかがわからない。

医療の発達、公衆衛生の改善で世界的に健康寿命が伸び、結果として人々が消費よりも貯蓄を重視するようになった。みなが(投資ではなく)貯蓄すれば、債券に資金が集まることになります。私たちの銀行預金が国債に流れているように。

それなら問題ないです。低利を承知で蓄財の手段として債券を選んでいる人がうじゃうじゃいるだけなら、株式投資家に害はありません。むしろ、債券と比較した相対的なパフォーマンスが高まります。

しかし、そうではないかもしれません。債券投資家は暗黒の経済を先んじて予期しているのかもしれません。1929年のような大暴落が起こったら長期投資と言えどもシャレになりません。当時の下落率は89%でした(3年かけての下落です)。

債券利回りと株式益回りはある程度近似するはずという理論があります。FEDモデルと言います。10年債利回りが0.4%なのに対して、株式の益回りはPER17倍とすると6%もあります。株式のリスクを考えても利回りは広がり過ぎです。株価が下がれば、益回りはさらに上昇します。どこかで債券から株式に資金の流れが切り替わるはずです、普通に考えれば。

と、そんなことは2010年代前半から言われ続けてきました。それでも、債券利回りは下がり続けてきたのが現実。

そもそも株式のPER17倍(益回り6%)という前提は正しいのでしょうか。今はもはや正しいとは言えません。なぜなら、コロナウイルスの1件が実体経済に影響を与えて企業利益を押し下げるのは間違いないからです。それが、どれくらいのインパクトかはわかりません。今後の決算を注視していくしかありません。

もし、企業利益が半減するなら米株の益回りは実は3%くらいしかないかもしれません(それでもまだ随分と益回りの方が高いが)。でも、仮にそうなるとしても、それを債券市場が予期していたとはどうしても思えないです。なぜなら、繰り返しで恐縮ですが、コロナウイルスの問題が表面化する以前から、債券利回りはずっと下落基調だったからです。その間、株式は危ない危ない言われ続けながらも(「暗黒の木曜日」直前とチャートがそっくりだ!とか)、結局は右肩上がりが続いてきました。

なので、私は今の債券市場が壊れているだけで、株式市場が正常なんだろうと思っています。ただの素人意見なので聞き流してもらって結構です。私のブログなので自分の考えを書いただけです。答えは時間が経てばわかります。

10年を超える景気回復が続いています。いつかはリセッション入りするでしょう。コロナウイルスの問題が広範に企業収益を押し下げるのも不可避でしょう。しかし、それでも今の債券利回りと同等の利益しか提供できないほど、S&P500構成企業の利益が落ちぶれるとはどうしても思えません。一時的な景気循環はあれど。今日は在宅勤務でしたが、マイクロソフトのエクセル、スカイプ、シスコシステムズのリモートアクセス機能が大活躍でした。米国企業のサービスなくして私の生活は成り立ちません。

というわけで、私は債券市場の誤りに1票です。いや、誤りというと語弊があるな。実際に債券が買われているわけで、今の0.4%台の利回りがマーケットプライスなのは紛れもない事実ですから。誤りというか、債券が株式と比較してリスク対リターンで優位だとは思わないということです。

もし債券投資家が正しかった場合、その時は結果を受け入れるしかありません。そのリスクを承知の上でPER20倍近い株式市場に資金を投じてきましたから。