先日、「日本の財政は厳しいから消費増税が急務だ!」的な記事のタイトルをチラ見しました。中身までちゃんと読んでませんが。

まず今このタイミングで消費増税をするのは悪手であることは間違いありません。

日本は長年需要不足からのデフレないし低インフレ経済が続いてきた中で、昨今はアメリカのドル紙幣バラマキのとばっちりとはいえ、物価が上昇基調にはあります。

賃金が上がってない中のインフレなので喜ばしいこととは言えませんが、経済を冷やす増税を行って止めるほどのインフレとは思えません。てか、資源高など供給起因のインフレなので需要を抑えたところで物価が下がる保証もありません。

そもそも、財務省はインフレどうこうではなく財政悪化を理由に増税したいわけですが、消費増税を行わねばならないほどの財政状態でもありません。

増税を行った方がいいのは日本ではなくアメリカです。

アメリカの高インフレの一番の原因はコロナ禍に伴う現金バラマキです。銀行システム内の架空のお金ではなく、実経済の資金流通量が急激に増えたため、教科書通りのインフレが起こったわけです。

そのインフレをいまFRBが止めようと躍起になっています。すでに3回連続で0.75%の利上げを実施しており、4回連続になる可能性が高いです。

怖いくらいの急な利上げペースですが、所詮金融政策に過ぎません。金利コントロールは直接的に経済の資金量を増減させるわけではありません。

紙幣バラマキ財政政策によるインフレを金融政策で止めるのには限界があると思います。実際、アメリカのインフレはまだ高止まりしています。本気でインフレを止めたいなら財政を引き締めれいいはずです。財政政策には財政政策をもって臨むということです。

財政引き締めとは典型的には増税です。税金を引き上げてアメリカ国民の貯金を巻き上げれば、需要はキューっとしぼんでインフレをより抑えることができるはずです。

実際はそこまでやってません。てかバイデン大統領は学生ローンの返済を一部免除するという財政緩和をやってるくらいで、むしろインフレを押し上げる政策をやってます。理由は知りませんが。まあ支持率とか色々あるんでしょう。

日本はアメリカで起きた需要過多の高圧経済とは程遠い状況にあるわけで、物価高で国民の生活が苦しくなっている今このタイミングで消費増税なんてとんでもないです。

ただし、、これは日本経済全体の利益を無視した私個人の完全エゴな理由ですが、私は心の中で多少の消費増税は歓迎だと思っています。

というのも、消費増税すれば低金利が今後も続く可能性が高くなるからです。変動金利で多額のローンを背負っている私にとっては都合のいいシナリオです。

黒田日銀総裁が2%の物価上昇を目標に異次元緩和を発表したのが2013年。以来これまで、昨今のコロナ禍の外圧を除けば物価目標は未達成で金融緩和を続けてきたわけですが、物価目標を達成できなかった主な要因の一つが消費増税です。

2014年に5%→8%、2019年に8%→10%(一部軽減税率8%)になりましたよね。これが消費を冷やしたのは統計を見るまでもなく実体験から確実と言えるでしょう。

2013年以降、消費税率アップが一度もなかったとしたら、もしかしたら日本はコロナ前の段階で2%の物価目標を達成していたかもしれません。たらればの話なので確実にそうだったと断言はできませんが。

そうなっていたら、日銀は金融緩和の出口を探り始め金利引き上げも検討していたかもしれません。

そもそも日銀は金融緩和をしつつ、政府は増税するというのは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものです。

ブレーキ(増税)の力の方がアクセル(金融緩和)よりも効きが強いです。なので、日銀はアクセルを踏み続けることができた、いや踏み続ける必要があったと言えます。

その低金利政策の結果、私のように低金利でローンを組んで家を買う人が増えました。価格はバブル期を超えたと騒がれますが、利息込みの毎月の支払額で見ればとてもバブル期には及びません。

増税で国民のお金を奪っておきながら、一方で金融は緩和して低金利を続けるというのは、債権者から債務者への富の強制的な移転のようにすら感じます。

財政は引き締め、金融は緩和、という政府と日銀の矛盾した姿勢が日本にとって好ましいかどうかはさておき、私個人にとっては好ましい面があります。金利は低いままでお願いしたいです(切実)。