PERを利回りに置き換える習慣を身につけよう

去年の8月にこんな記事を書きました。

【利回りは同じ】アマゾン株と米国債、迷う余地あるか?

アマゾンはPER54倍もあって益回りで見れば1.8%しかありませんが、その利益は今後グングン伸び続けると期待できます。そういう期待があるからPER50倍超で評価されています。

一方で、当時の米10年債利回りもアマゾンの益回りと同じく1.8%でした。債券のクーポンは満期まで固定です。下がりもしないけど上がりもしない。良く言えばリスクが低くデフォルトしない。悪く言えば大きく儲かるチャンスはない。

同じ利回り1.8%でも両者が生む将来キャッシュフローの趨勢は全く異なります。

米国債:1.8%のリターン固定
アマゾン株:1.8%のリターンが毎年グングン成長する(多分)


こんなイメージです。

アマゾンの利益がここまで綺麗に右肩上がりになるかどうかはわかりません。もしかしたら衰退するかもしれません。将来の話だから確信的なことは言えません。ですが、クラウドもネット通販も成長市場ですし、いくらかいや強く成長していく可能性の方が高いでしょう。

PER50倍と聞くと、それだけで尻込みしちゃうかもしれませんが、利回りに置き換えて考えると冷静になれます。このクソ低金利時代にあって利回り2%もあればまあまあです。しかも、その利益は大きく成長する可能性を秘めているわけです。10年、20年と長期目線で保有できる投資家にとって同じ利回りのアマゾン株と米国債とで、どちらを買うか悩む余地はもはやありません。どう考えてもアマゾンに投資した方が儲かります。事業リスクを加味してもアマゾン優位だと私は思います。

このようにPERを利回り(益回り)に置き換えて考えることは大切だと思います。なぜなら、投資リターンとは利回りで決まるものだからです。企業の設備投資を考えてみてください。工場建設に投じた100億円がその投資が経済合理的かいなかは、ひとえにその工場がいくらいのキャッシュフローを生み出すかにかかっています。生産停止になって稼働がストップすれば投資額すら回収できないかもしれません。

株式投資も発想としてはそういう事業投資と同じです。100万円で買った株式がいくらのキャッシュを生むのか。株式への投資リターン(長期)を決めるのはその1点のみです。

投資額に対していくらいの利益、キャッシュが得られるのか。こうやって利回りで考えるのが投資の基本というか、それが自然ですよね。不動産だって表面利回り〇〇%、実質利回り〇%という言い方をします。

投資額は利益の何倍かというPERで投資の採算性を測ろうとするのは、株式くらいじゃないでしょうか。もちろん理由があって利回りではなくPERで呼ぶ慣行が定着したとは思いますが、やはり利回りに置き換えて考えた方が直感的で分かりやすいです。

PER30倍のマイクロソフトへの投資は儲かるか?
よりも
利回り3.3%のマイクロソフトへの投資は儲かるか?
と表現した方が考えやすいと思いませんか。

このブログではPERだけじゃなく益回りを積極的に使うように心掛けています。そう意識しているというより、自分が常日頃からPERを利回りに変換して考えているので、それをブログに書いているだけですが。

利回りをPERに置き換えるという発想も面白いなあ

PER→利回りがあれば、その逆つまり、利回り→PERと変換することも可能です。可能ですが、今までそんなこと考えたことなかったです。今週のバロンズにこんな記載があって、「なるほど面白いな」って思いました。

同氏は(バフェットのこと)、現在の10年債利回りを、「今後10年間利益が増加しない、株価収益率(PER)が70倍の銘柄」に例えている。

バロンズ

なるほど、債券利回りをPERで表現するということか。

10年債はPER70倍と言っていますが、この記事を書いている2020年3月5日時点では10年債利回りは1.0%台です。一時1%を割りました。利回り1%ということはPERは100倍です。

現在の米国債は今後10年間利益が一切増加しない、PER100倍の銘柄ということです。

PERを利回りに置き換える習慣を身につけた方がいいのは、その方が投資の本質を捉えることができると思うからです。あと直感的に投資リターンを理解できるからです。

一方で、利回りをPERに置き換える必要は基本的にはないと思います。わざわざ分母と分子を逆にする手間をかける割に、特に思考が整理されるなどの恩恵がないからです。ただ、現在の債券の割高っぷりを強調するために利回りをPERで表現するのは発想として面白いなあと思い、ブログで取り上げました。

長期投資家は今債券を買うべきではない

昨年、10年債の利回りが1.8%だった時に債券はやめた方がいいと言いました。結果として、債券利回りはその後も低下(債券価格は上昇)したわけだから、債券を買っていれば儲かったことになります。

ただ、私は依然として債券投資には否定的です。長期保有なら避けた方が賢明です。短期のリスクヘッジなら選択肢としてありかもですが、ここまで利回りが低いなら普通に現預金でいいのではというのが私の意見です。一部の著名投資家は10年債利回りは今後0.25%くらいまで下がる主張しており、債券投資家は引き続き報われる可能性もあります。しかし、それはもはや相場のリスクヘッジ目的ではなく、投機的なリスクテイクだと理解した方がいいです。投機を否定したいのではなく、今自分が何をやっているのか客観視することの大切さを訴えたいだけです。

なぜ、長期で債券に否定的かと言うと、上で書いた通りです。今後10年利益が増加しないことが確定した、PER100倍の銘柄を買いたいと思いますか。

株式のリターンが不確実なのは将来の企業利益が不確実だからです。債券は違います。クーポンは固定なので、満期まで保有した時の名目リターンは計算可能です。変動リスクはありません。ただし、インフレ率次第で実質リターンは変わります。デフレになれば得だし、インフレになれば損です。

つまり、債券への長期投資とは将来のインフレ率変動に賭けることと解釈できます。今後、米国経済が年率2%のデフレに陥るという合理的な予測があるなら、PER100倍の米国債への長期投資はそれなりに報われると思います(それでも株に勝つのは困難だと思いますが)。

私はむしろインフレリスクの方が高いと思うので、余計に債券は怖いと思っちゃいます。積極的な金融緩和政策、財政刺激の必要性が注目を集めていること、いずれもインフレ押し上げ要因です。

短期的には債券投資が報われる可能性はあります。短期ではファンダメンタルズに関係なく買われたり売られたりするからです。しかし、長期で債券投資家が報われる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。長期ではファンダメンタルズつまり利回りが投資リターンを決めるからです。