ホリエモンは儲かるビジネスの条件の一つとして「在庫をできるだけ持たない」というものを挙げています。同感です。在庫を持たずにお金を稼げるならそりゃ理想的ですね。在庫を作るないし仕入れるためにキャッシュが要らないわけで、必然的にデフォルトのリスクも下がります。

しかし、在庫を抱えずに大きなビジネスを展開するなんて可能でしょうか?

簡単ではありませんが、一つ例を挙げると仲介ビジネスがあります。結婚相談所を想像すると分かりやすいですかね。結婚願望がある男女をマッチングさせて、成婚すればお金を頂く(他にもキャッシュポイントは複数あると思いますが詳しくは知りません)。これは在庫を持たずに行えるビジネスです。

こういう仲介ビジネスって私は個人的に好みです。社会にすでに存在する限りある資産を有効活用しようというエコな発想が好きです。普通に生活してるだけだったら出会わなかったであろう男女をマッチングさせるという結婚相談所のビジネスも、既存資産を有効に活用することで社会に価値を生んでいます。人を既存資産と言うのはちょっと違和感あるかもですが。

ウーバーのビジネスモデルも良いなあと思います。車を持ってても使っていない時間が大半なのが普通です。車の平均稼働率は3%というデータもあります。1日24時間なので1週間で168時間。うち3%ということは5時間。1週間で5時間しか車に乗っていないということです。う~ん、毎日通勤で使っている人はもうちょっと乗ってるでしょうか。でも、確かに週に5時間しか乗らないのに車を持ってる人は普通にいそうです。大学生の頃、ボロボロの中古車に乗ってましたが、稼働時間はそんなもんだったかな。

そもそも移動時間なんてそんなに多いわけがありません。移動は人生のメインではなくサブです。仕事をするために職場に移動するのであって、移動は短くできるに越したことはないです。旅行は移動も楽しいですけどね。

だから車の稼働率が低くなるのはむしろ健全なことだと思います。トラック運転手やタクシードライバーなど運転そのものを生業にでもしてない限り、1週間に20時間も30時間も車に乗ることなんてないでしょう、普通は。

自動車の稼働率は極端に低くなるのが当たり前。そんな非稼働状態が大半の車を有効活用することで社会に価値を生み出せるはずだ。ウーバーやリフトなどの配車アプリ運営会社が生まれるのは、こういう背景があるからだろうと思います。ドライバーへの報酬が嵩んでなかなか利益を上げれていませんが、長期的に見てウーバーのビジネスモデルは魅力的に見えます。自動運動技術が肝ですね。

エアビーアンドビーの民泊ビジネスも同類です。空いていて稼働していない住宅ないし部屋を、旅行者などに貸し出すことで資産を有効活用させる仕組みを構築して収益を上げています。子どもが自立して部屋が余っている人は結構いますよね。うちの実家もそうです。家主が嫌じゃなければ、部屋の一室を貸し出して収入を得ることも可能です。

ウィーワークが業績悪化で苦しんでいます。結果を見て言うのはズルいかもしれませんが、私は問題が噴出する前からウィーのビジネスモデルは儲からんだろうと思ってました。どう考えてもエアビーの方が筋が良いです。だってエアビーは在庫を持たないマッチングビジネスですが、ウィーはガンガン不動産を仕入れるビジネスですよね。それが悪いとは全く思わないけど、資金繰りは大変だろうなというのは容易に想像できます。

あと、グーグルも同じ仲介ビジネスだと捉えています。グーグルの使命は「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスして使えるようにすること」です。勉強や仕事、他様々な経験によって得た知識、知見を自分の脳内だけに格納するんじゃなくって、もっとオープンに発信して他人に共有しよう。その仲介役はグーグルの検索アルゴリズムが担うよってことです。情報をオープンにした人は広告収入などで金銭的に報われます。ハードルが高いですが、情報そのものを有償で提供するのもありです。

昨年夏に突然前頭痛に襲われたんですが、その時ググってかなり頭痛について勉強しました。緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の3種類に分けられるとか。所詮、表面的な知識です。ググるだけで知識が知恵に昇華させることは不可能ですが、それでも最低限の情報は仕入れることができます。おかげさまで医師とのコミュニケーションもスムーズに行えました。下手に人に聞くよりググった方が正確な情報を入手できるくらいです。

余っている資源を必要としている主体に提供して仲介手数料を得る。これはまさに銀行のビジネスモデルです。銀行は資金余剰主体から資金不足主体に資金を融通(貸出)しています。預金利息を超える貸出利息を得ることで利益を上げます。

銀行は自ら信用を創造するという点で、既存資産の仲介とはやや異質な点もありますが、資本の仲介という役割を担っているのは事実です。ウーバー、エアビーアンドビー、グーグルは銀行みたいなもんです。資産を仲介して利益を得る。

今って世界的に低金利ですよね。米国債10年の利回りは2%を割っているし、世界にはマイナス利回りの債券がジャブジャブに溢れています。この理由の一つが、在庫を持たない仲介ビジネスの勃興があると推測しています。既存資産の稼働率を上げて無駄を減らす。そうすれば新たに資本を調達して資産を作る必要がなくなります。

すごく単純な例を言うと、エアビーの民泊が普及して新規ホテルの建設が減るなど。そうすれば、ホテル業界は潤わないですが、安いコストで宿泊できる人が増えて社会全体の厚生は高まると思います。

これはあくまで分かりやすい例示です。日本では民泊はあまり普及してないし、むしろホテルは増えているくらいですから。言いたいのは、新しく資本を調達して資産をゼロから作るよりも、30しか使われていない資産を50、70ともっと有効に活用しようという流れがあって、それが低金利の一因ではないかということです。それは人々の価値観が変わったのではなく、それができるくらいテクノロジーが進歩したということです。生産性が上がっているということです。だからインフレ率も上がらないんです、きっと。

資本の仲介役としての伝統的な銀行の役割は小さくなっていく気がします。既存の資本を最大限有効に使うということは、新規での資本調達(信用創造)の必要性が小さくなるということです。資本の仲介という役割はこれからも絶対に必要なので、銀行が無くなることはないでしょうけどね。

昔は上流の資本レベルでしかできなかった仲介ビジネスが、現代では車や不動産といった下流の実物資産レベルでも可能になりつつあります。素晴らしいことだと思います。これぞ本当の「エコ」だと思いますね。需要と供給をマッチングさせて、今ある資産を有効に活用するというビジネスは個人的にとても好みです。在庫が不要だから儲かるというビジネスモデルも好きですが、なんか発想が素敵です。日本の不動産業界でありがちなスクラップ&ビルドとは真逆です。