マンション価格、とりわけ都心部の価格は上がり続けています。私がよく勉強させて頂いている某マンション専門家の方も、そろそろ天井ではないか、さすがに割高感があるのではといった趣旨の発言をされています。

確かに安い時期ではないです。が、特段割高でもないと私は思っています。

そういうと、最近マンションを買ったから、自分の購買行動を正当化するためのポジショントークではないかと思われるかもしれません。無意識にそういう面があるかもしれませんが、個人的には冷静に客観的に数字でマーケットを見ているつもりです。

私が都心のマンション価格がさして割高ではないと考えている理由は大きく2つあります。

①低金利
②インフレ

低金利

こんな高値の時期に家を買わないといけない今の一次取得若年層は可哀想だと言われることがあります(私は若年層とは言えないが)。

本当にそうでしょうか?

むしろ、いま自宅を買える人は幸運なのではないでしょうか。なぜなら、住宅ローン金利は史上最低だからです。0.5%を切るのも珍しくありません。

10年前はもっとマンション価格は安かったのは事実ですが、当時は金利が今より高かったです。店頭金利自体は変わっていませんが、優遇幅が違います。

具体的に言えば2010年前後は住宅ローン金利は1.0~1.5%ほどでした。今よりも0.5~1.0%ほどは高いです。

最近の23区内にあるマンションの想定利回りは4%ほどです。10年前は平均で5.5%ほどあったと聞きます。表面的な利回りは1.5%もの格差がありますが、金利差し引き後のネットでは差が縮小します。

以下、マンション利回り-住宅ローン金利
現在:4.0%-0.5%=3.5%
10年前:5.5%-1.0~1.5%=4.0~4.5%

低金利であることを割り引いても現在の方が高値相場という結果にはなりますが、表面的な利回りで見るほど差は大きくありません。

インフレ

この10年、都内のマンション価格は右肩上がりでした。23区内のマンション価格は10年で1.5倍ほど値上がりました。

しかし、家賃水準はそれほど上がっていません。旭化成ホームズの調べでは、東京圏のマンションの賃料水準は2010年から2020年にかけて約5%の上昇でした。ほぼ横ばいと言えるでしょう。都内で10年以上、賃貸生活を続けてきた自分の感覚としても家賃が上がった印象はありません。

これは株式で言うと、EPSは成長していないのに株価だけグングン上がっている状態です。つまり、PERが上昇しているということです。

PERの拡大に頼る株価上昇は持続しません。やはり株式価値の源泉はEPSであって、EPSの成長なくして長期的な株価の上昇は考えられません。

マンションにおけるEPSとは家賃なわけですが、これまで横ばいが続いていた家賃水準がついに上向く可能性があると思います。

というのも、日本もインフレと無縁ではいられないからです。統計的には日本のインフレ率は前年比+0.1%ではありますが、実生活の感覚としてはどうでしょうか。少しずつ物価が上がっていることに気が付くシーンが増えたと思いませんか。

わかりやすいニュースで言えば、吉野家やすき家などの牛丼チェーン、いきなりステーキの値上げなど飲食店の値上げ報道をよく見聞きします。一部の家具も値上がりしているのを知っています。

また、個人的にもっとも衝撃だったのが行きつけのスーパーの玉ねぎです。半年前は1玉48円、それが2ヶ月ほど前に78円になり、最近なんと100円になったんです。2倍ですよ。今までが安過ぎただけなのかもしれませんが、日常的に買う野菜の値段が半年で2倍になるのは驚きです。

日本は岸田内閣による安定のデフレ政策の甲斐もあって、欧米のような高インフレ経済になる可能性は低いです。が世界経済は密接に繋がっているわけで、日本だけが変わらずデフレ経済というわけにはいきません。

というのも、いくら国内政策が財政抑制的だとしても、海外からの輸入価格の上昇からは免れないからです。石油、石炭、天然ガス、木材、農水産物などです、具体的には。

労働者の賃金までしっかり上昇するのかわかりません。コストプッシュ型の所謂悪いインフレになるかもしれません。がとにもかくにも、日本も物価上昇圧力にさらされていることは事実です。

そうなると、家賃水準にも上昇圧力がかかるでしょう。家賃が上がるならば、将来家賃の現在価値の合計たる不動産価格も上昇して然るべきです。

都心のマンションは少なくともバブルとは言えない

PERが高くてもEPS成長期待が高いなら株価は割高とは判断されません。それと同じで、利回りが低くとも将来の家賃上昇が期待できるなら不動産価格は割高とは言えません。

10年前:ネット利回り4~4.5%(家賃横ばい)
現在:ネット利回り3.5%(家賃上昇期待)

どっちが割高か一概には言えません。現在の方が利回りは低い(PERは高い)わけですが、家賃(EPS)の成長は期待しやすい状態です。

こうやって10年前とまともに比較できるくらいなのです。現在の不動産価格が割高かどうか断定的なことは言えませんが、少なくとも巷で言われるようなバブル状態にあるとは全く思いません。

フェアバリューないしちょっと割高かも、くらいの表現が妥当ではないでしょうか。