トルコリラ暴落から学ぶこと。
→高金利通貨だから危険なんじゃなくって、通貨の長期保有自体がアウト。
トルコリラが暴落して、マーケットを動揺させています。
以下は米ドルとトルコリラの為替レートのチャートです。
ご覧の通り、8日以降急激にトルコリラが売られています。
(上のグラフは米ドルの対トルコリラの価値を示しているので、上昇しています。)
トルコリラは米ドルに対して年初から40%も暴落しています。
トルコリラは、高金利のスワップポイント生活を夢見る投資家たちに人気です。2018年8月現在のトルコの政策金利は18%近くもあります。これでも、マーケットの期待を下回る金利水準です。中央銀行がエルドアン大統領を気にして、思うように利上げできていません。
高いスワップ収入に魅了されて、トルコリラのような高金利通貨を買い持ちする人は少なくありません。
しかし、断言しますが、トルコリラに限らず通貨は長期保有で儲かる対象ではありません。
今回トルコリラが暴落したから言っているのではありません。
(記事を書くきっかけにはなりましたが。)
トルコリラであろうと、スイスフランであろうと、豪ドルであろうと、米ドルであろうと、日本円であろうと、通貨を長期的に保有してあなたの購買力が上がる可能性は低いです。いや、、ゼロとすら言いたいです。
高金利通貨の長期保有は危険とよく言われます。
はい、その通りです。高金利には相応の理由があります。通貨の減価ペースが早いから、資本逃避を避けるために中央銀行は金利を引き上げます。高金利の分減価リスクがあります。トルコリラは18%のインカムゲインがあるかもしれませんが、18%以上のキャピタルロスのリスクを抱えています。そのリスクが今回顕在化しただけです。ちなみに、トルコのインフレ率は10%を超えています。
が、私は高金利であることが通貨投資の危険性の本質ではないと思っています。
トルコリラのような脆弱な通貨、日本円のように有事の際に買われる強い通貨、さらに基軸通貨として最強の地位が与えられている米ドル、何であろうと通貨は長期保有には不向きです。
なぜ、通貨の長期保有はダメなのか?
下のグラフで一目瞭然です。
↑
このグラフで、長期的にグングン下がっているのが米ドルです。
つまり、通貨です。
これが現実です。米ドルですら、このペースで価値が目減りしていくのです。ましてや、トルコリラのような高金利通貨は・・(以下略)。
通貨が長期的に減価していく2つの理由
なぜ、通貨の長期保有は儲からないのか?
理由は二つあります。
①通貨はそれ自体が価値を生まない
②中央銀行が意図的に減価させたがる
①
先ずは、通貨それ自体は何も価値を生まないからということが挙げられます。
株式に投資することは、企業の生産活動に参画することを意味します。企業は日々価値ある製品・サービスを提供して利益を上げています。賃貸マンションは、居住者に快適な住空間を提供して賃貸収入を稼いでくれます。株式も不動産も長期保有する価値があります。両者とも社会に価値を生み出しています。
一方で、通貨はそれ自体に何ら価値がありません。しかも、現代は不換紙幣なので、正真正銘お金はただの紙切れでしかありません。お金は使わないと意味はありません。ただの紙切れを持っているだけなのですから、長期的に富が増えるわけがありません。
②
二つ目に中央銀行は意図的に通貨価値を引き下げようとします。それがインフレ目標です。FRB、日銀は2%程度のインフレを目標としています。
実際に米国では2%程度のインフレで安定してきましたが、これは別の角度から言えば米ドルの通貨価値が2%減価しているということです。物価上昇=通貨価値下落です。
なぜ、インフレを起こす必要があるのか?
それは、インフレ経済の方が国民の金離れが良くなるからです。
金を貯め込み過ぎると経済は元気がなくなります。「来年物価が上がるなら、なるべく今の安いうちにお金使っておこう~」ってなりますよね。「消費増税の前に車買っておこう!」ってなりますよね。
そういうことです。単純な話で、通貨価値を一定のペースで下落させて物価を引き上げた方が世の中に金が回りやすくなるのです。血圧が安定するんです。ただ、あまりに金融緩和し過ぎて高血圧になると、それはそれで危険なんですがね。ただ、低血圧よりも高血圧の方がマシというのが経済です。
通貨に”投資”するという発想は持たないようにしよう!
というわけで、通貨の長期保有はオススメしません。生活資金として一定の現預金を持っておくことは合理的ですが、利殖のために通貨を(長期保有目的で)買うのは止めた方がいいです。
通貨は短期で売買して利ザヤを稼ぐのには向いていますが、長期保有には全く向きません。この世で一番長期保有に適さない対象といっても過言ではありません。
負け戦ですよ、通貨を長期投資の対象に選ぶなんて。国家が意図的に価値を下げようとしているものに投資したって、儲かるわけがありません。
今回トルコリラが暴落して「ああ、トルコリラ持ってなくて良かった~」って思ってるかもしれません。それはよかったです。損しなくて良かったです。ただ、今回の件から知って欲しいのは、トルコリラに限らず通貨の長期投資は儲からないということです。
私はFXやったことないし、通貨のトレーディング経験もありません。自分の体験に基づいて通貨投資の危険性を語ることはできません。スイスフランで大損して痛い目に遭った経験もありません。
ただ、「お金とは何か?」、「通貨の本質って何だろうか?」ということについて、結構本を読んで勉強してきたし、脳ミソに汗かいて自分なりに考えてきたつもりです。資本主義経済の中でお金の果たす役割は大きいし、お金で人生を棒に振る人もいるくらいです。そんなお金の正体って一体なんだろうか?って自分なりに考えてきました。
思考が完全に煮詰まっているとは言えませんが、現時点ではっきり断言できることがあります。それは、通貨の長期保有は社会に価値を生まない(むしろマネーが停滞して有害)、よって通貨の長期保有は儲からないということです。
私の昨日のコメントがきっかけ?で素晴らしい記事がまた読めたので良かったです。
円だろうと外貨であろうとも「通貨の長期保有は儲からない」というわけですね。
マネー雑貨などでは「安易に高金利通貨ではなく、ドルを保有しましょう」の主張ばかりですが、ドルであろうと通貨は価値を生まないのですよね。
ある程度の生活に必要な円(日本で暮らすのであれば)と素晴らしい米国株を買う前に「やむを得ず」ドルを買う、そして米国株を買えばよいのですね。
チェルシーさん、ありがとうございます。
やむを得ず通貨で持つならドルや円というのは賛成ですが、投資対象として通貨は最悪です。「投資」という言葉を使うのすら憚られます。
株は短期売買でも長期投資でもどっちでもやりようがあります。債券もです。
でも通貨だけは短期トレードオンリーにすべきです。
本質を考えれば、通貨の長期保有でリターンを得るのはほぼ不可能です。
自分と家族の生活を守る必要があるので預金は必要です。
通貨は長期保有に適さないからと言って、必要な分の預貯金までもを全部投資する必要はありません。
グラフで見てもらえば分かる通り、米ドルが減価するといっても超長期の話ですし。
ただ「なるべく通貨は持たないようにしよう」というマインド自体はあっても良いと思います。
ブログの内容とは関係が薄いかもしれませんが、NIKKEI STYLEで興味深い記事を拝見しました。
『個人投資家1.3万人調査 負け組はハイレバレッジ好き』
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO33778270T00C18A8000000?channel=DF280120166590
対象期間の長さや母集団のサイズが違うので同一に並べることはできませんが
チャールズ・エリス氏やバートン・マルキール氏が著書で述べていた理論が、
時代や国境を超えて普遍性を維持しているという事実を、身近に(生々しく)再確認できたようで、ほっこりしました。
シリーズ物らしいので、続きも楽しみです。
日本人は特にリスクの高い短期的なトレーディングを好みがちと言われますよね。
振れ幅がすごいというか・・。
普段は超低リスクの預貯金ばかりしておいて、いざ運用となるとハイレバレッジの通貨取引やら、ビットコインやらに群がります。
ミセス・ターワタナベという言葉もあるくらいです。
ほどよくリスクを取って長期的に資産を増やしていくという発想を持てる人は少ない様に思います。
まあ、別にどっちが正しい間違い、良い悪いっていうわけじゃありませんが・・。
やはり、株式会社制度の仕組みや、お金の本質とかをきちんと勉強する仕組みが学校教育に組み込まれていないことが最大の問題と思います。
従順な労働者を育成するという国の暗黙の教育方針通りになっています。
自分で本で読んだりネットで調べたりして、18年間染みついた常識を打破するのは簡単なことではないですね。
リンクまで貼っていただき、ありがとうございました。