昨日11月9日は第2四半期決算で社内はバタバタしていたが、私は少しソワソワしていた。
いつものように「おはようございまーす」と出社して、自分では絶対に買わないだろうなと思う高機能なオフィスチェアに腰掛けてPCの電源を入れる。
周りの上司たちは、決算資料の確認で打ち合わせしたり、カタカタPCを叩いて何だか落ち着かない雰囲気。社長や役員が頻繁に経理部フロアにやってくる。
PCの立ち上がりが遅いなとイライラしながら、朝通勤途中に成城石井で買ったアップルパイを頬張る。PCが起動している間に自販機に向かってジョージアの缶コーヒーを買いに行った。
最近買ったマイPCは起動するのにものの5秒くらいなのに、なぜ会社のPCはこんなに遅いのだろう。
ようやくPCが起動したので早速Outlookで仕事のメールを確認する、ところではあるが今日は違った。
Google Chromeを立ち上げてWSJを開く。
案の定、WSJのトップページは大統領選一色だった。
そこには、まだ青色にも赤色にも染まっていないアメリカ合衆国が映し出されていた。
左端と右端は青色に、真ん中は赤色に染まることになるだろうが、大票田である右下の半島は何色になるのか、そこが勝敗を分けるはずだと思っていた。フロリダ州の選挙人は29人もいる。トランプが勝つにはフロリダで勝つことが必須だ。
アメリカ合衆国フライドチキンの持ち手とお肉のちょうど境目に位置するのが、もう一つの注目州であったオハイオ州。選挙人の数は18人。ここはフロリダに次ぐ注目州だ。WSJによると過去オハイオ州で負けて大統領になった共和党候補はいないとのこと。つまり、トランプが勝つにはオハイオでの勝利も必須ということだ。
11月7日、8日はクリントン候補のメール問題が落ち着いた影響なのか、マーケットはクリントン候補の当選を織り込みにいってS&P500指数は大きく反発した。ドル円も105円台まで円安ドル高が進んだ。
短期的な動きに一喜一憂しても意味はないとわかっているが、やはり株高で自分の資産が増えていくのは見るのは嫌ではない。
どうせクリントン候補が勝ってマーケットは好感するんだろうな、今晩の米国市場も強気だろうなと安易な予断を持って、いつものように仕事を始めた。
そろそろ10月度月次決算締めの時期だ。頑張らなくては。
まさかのトランプ大統領
驚きましたね。
午前中、私は真面目に仕事をしていましたがちょくちょくWSJの速報を見ていました。11時前くらいでしたかね、トランプ候補優勢との一方が入ると為替相場、株価は即座に反映しました。ドル円は一時101円台まで進んだと記憶しています。
私は、まあこの後どうせクリントン候補が巻き返すだろうなと思っていました。
しかし、お昼休みにオープンスペースでお弁当食べながら、社内の大型テレビに映し出されるニュースを観て「ん、これは本当にトランプかもしれない!」と思いました。
そのニュース速報では、フロリダ州でトランプ氏優勢と表示されていました。
結局、トランプはフロリダ州だけでなくオハイオ州でも勝利を収めて、事前予想を覆す劇的な勝利を収めました。
マーケットの反応
このトランプ大統領決定を受けて日経平均株価は大幅に下落し、前日比919円安(5.4%安)の16,251円で取引を終えました。
意外だったのは、為替相場やアメリカ株式相場全体はそれほど過剰反応していないこと。為替は夕方くらいには1ドル104円台まで戻しました。
NYダウ先物も確かに下落していましたが、下落幅は2%未満でした。これを見て米国株式相場寄り付きはそれほど下落しなんじゃないかって思いました。
そして、先ほどアメリカ株式市場の取引が始まりました。
(この記事を書いているのは11月9日の深夜です。)
なんとNYダウはやや下落で始まったものの、その後上昇に転じています。
予想通り、ヘルスケアセクターが爆騰しています。ファイザー(PFE)は一時前日比+10%を超えて上昇しました。メルクやアムジェン、ギリアドサイエンシズ、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソンも強いです。
これはトランプ大統領が薬価抑制に積極的ではないためです。マーケットは今までクリントン候補の薬価抑制による業績低下を織り込んでいました。その反動が出ています。
一方で、フィリップモリスやコカ・コーラなどの生活必需品セクター銘柄の下落が激しいです。これはなぜでしょう?ちょっと理由は分かりかねます。
個人的には、相場下落に強い生活必需品セクターはこういう時に踏ん張るものだろうと予想していましたが、今のところ生活必需品セクターは全セクターで最も下げがきつくなっています。
トランプ大統領は自由貿易が米国民を貧しくした、製造業を米国内へ回帰させるべきだと主張しています。つまり、米国外売上の比率の高いアップルやボーイングの株価にはネガティブな可能性があります。
また、FRBが今回の市場動揺(あまり動揺していない!?)を懸念すれば12月の利上げを回避する可能性もあります。FF金利先物が織り込む12月の利上げ予想は選挙前まで80%ほどあったのに、現在は50%強です。
FRBが利上げを先延ばしにした場合、金融セクター銘柄にはネガティブな要因となります。のはずですが、現在、ヘルスケアセクターの次に上昇しているのが金融セクターです。ウェルズファーゴは前日比3%超上がっています。これは債券が売られて金利が上昇しているからだと思われます。
債券はやはり売られています。米国10年国債利回りは2%に届く勢いです!
ようやく予想インフレ率程度まで米国債利回りは上がってきました。
為替は現在(11月9日23:55)、1ドル104円台半ばです。
長期投資家は気にするな!
ここまで短期的な市場の反応を書きました。
S&P500指数は上昇しているものの銘柄別・セクター別に見ると短期的な市場の反応はやはり激しく、自分が保有している銘柄が暴落している人もいるかもしれません。
例えば、シーゲル流投資家に欠かせないフィリップモリスは前日比4%ほども現在下落しています。生活必需品セクターETFも2%超下落しています。
このブログをご覧になっている金融リテラシーの高い方に、こんな事は言うまでもないことかもしれませんが、敢えて言いますが、絶対に保有株を売っていはいけません。自分が保有している銘柄が時に裏打ちされた黄金銘柄である限り、このような政治経済イベントに起因する短期的な下落で一時的にでも市場を退場しようなどと考えるべきではありません。
株価は必ず戻ります。株価が下落した時はむしろ配当再投資の効果が高まるチャンスです。企業としては自社株買いのチャンスとも言えます。
大統領選が米国民、世界の人々に大きな影響を与えるビッグ政治イベントであることは否定しません。でも、ここまで盛り上げているのはメディアであり、そのメディアには莫大なマネーが流れていることも事実です。
今回の選挙ではテレビ向け広告費用に44億ドルが費やされています。フェイスブックなどデジタル広告に流れている広告マネーも相当な額になることでしょう。
そもそも米国大統領には世間が思っている以上に強い権限があるわけではありません。アメリカで法律策定で重要なのは大統領ではなく議会です。
アメリカでは上院、下院それぞれの承認があって初めて法案成立となります。
トランプ大統領がどれだけ過激な政策をぶち上げても、議会が承認しなければおしまいです。まあ、ちょっと問題かなと思うのは、肝心の議会が上院・下院ともに共和党なことです。
でも幸い、トランプ大統領と議会は仲は良くありません。次期大統領候補と期待される共和党下院議長のポール・ライアンとトランプ大統領はニュース等で読む限り、とても仲が良いとは思えません。
つまり、大統領と議会が仲良しこよしで、大統領の政策を議会がホイホイ飲み込む状況ではないということです。
誰が大統領になろうと変わらないことがあります。
それは、私たちの日々の仕事、日常生活です。
大統領選で慌ただしかった今日も、シリコンバレーでは未来の自動運転技術についての研究が続けられていたはずです。私の会社でも淡々と決算の打ち合わせが進んでいました。みな今日も変わらず、日々の仕事を目まぐるしくこなしています。
トランプが大統領になったからと言って、コンビニの冷蔵庫からコーラが消えるわけではありません。今日も僕の隣の同僚はコーラを飲みながら仕事をしていましたよ。
つまり、今日この瞬間コカ・コーラ株が暴落しているからといって不安になる必要は全くないということです。
一時的に損をすることも長期投資家の”仕事”です。
どんなに市場がパニックな時でも常にリスク資本の提供者は必要なのです。誰かがリスクを取ると名乗り出る必要があるのです。世の中のビジネスを仕事を継続するにはリスクの担い手が必要であり、私たちはそういったビジネスリスクを負担するという”仕事”をしているからこそ、長期的に株式投資で利益を得ることができるのです。
確かに暴落で一時的にリスクを負担するという仕事を放棄して、底値でうまく拾うことができる人もいるかもしれません。でも、それは現実的に非常に困難だし長期投資家のすることではありません。
どんな時も冷静に長期的にリスク資本を提供しているからこそ、長期的に利益を得ることができるということを忘れてはいけません。長期株式投資の利益の源泉は何たるかを肝に銘じるべきです。
「金融市場は荒れているけど俺たち株主がしっかりリスクを取っているから、経営者・従業員の皆さんいつもと変わらず一生懸命働いて下さい!」という心持ちが長期投資家には必要です。
市場のパニックで投げ売りすることはあなたの投資利益にマイナスだからやめるべきですが、そもそもこういうパニック時にもしっかり株をホールドし続けてビジネスリスクを背負い続けることこそ、長期株式投資家の”仕事”だと思います。
“仕事”をきちんとこなしてこその将来の大きな富です。
>一方で、フィリップモリスやコカ・コーラなどの生活必需品セクター銘柄の下落が激しいです。
>これはなぜでしょう?ちょっと理由は分かりかねます。
米金利が上昇すると、擬似債券として買われている安定配当株や安定配当株を中心に
構成される生活必需品セクターは、要求配当利回りが上昇して売られます。
こればっかりは仕方が無いです。
生活必需品などディフェンシブセクターの株式は、暴落や不況や○○ショックには
めっぽう強いですが、金利上昇局面では弱いです。
なるほど、確かにおっしゃる通りですね。
昨夜で米10年債は2%を超えましたね。
ここまで金利が上昇すると、高配当銘柄だけでなく米国株全体の下落リスクとして警戒すべきかもしれませんね。
教えて頂き、どうもありがとうございました!
トランプ優勢になってからの株価の暴落はすごかったですね。
“ミスターマーケット”に惑わされず(投げ売りせず)、安い所で買い増しをしました。
これからも「長期投資家の仕事」を継続していこうと思います。
先物の下落から、実際は大幅反発と大荒れでしたね。
私は今のミスターマーケットに大いに惑わされており、ポートフォリオ大きく入れ替えようか現在検討中です(笑)。
仰る通り、投げ売りせず静観が一番ですね。