うちの会社は午前9時が始業開始時刻です。毎日9時になると経理部全体で朝礼が始まります。9時と言えば、ちょうど東京マーケットが開く時間です。朝礼の時には部長が一言しゃべる時が多いのですが、その際によく自社の株価の話題になります。
部長のデスク横にはリアルタイムで株価や為替が確認できるモニターが置いてあるのですが、それを見ながら「今日は株価上げて始まっていますね~」などと言っていることは多いです。特に決算発表日の翌日は、マーケットがどう反応するのか気にしています。
この前、経理部の後輩F君にこんなこと聞かれました。
「ねえHiroさん、いっつも疑問なんですけど、株価が上がると会社にとって何かいいことあるんですか?? 部長とかがあそこまで株価を気にする理由が俺にはよく分からないのですが・・。」
は~、なるほど。
純粋な質問だな~と思いました。
株価が上がったり下がったりすることが「会社に」どう影響するのかF君は疑問を持っているわけですが、この「会社に」というワードがちょっと曖昧ですね。「会社」って誰?って思うわけです。会社とは法人という箱であって、それを取り巻く人は色々います。
言うまでもないことですが、株価の変動に興味関心があるのは会社のオーナーつまり株主です。株主以外は、株価にそれほど関心ありません。お金を貸している銀行は、融資先の業績が好調なのは安心材料ではありますが、株価が上がったからって別に利息収入が増えるわけじゃありません。従業員だって株価が上がったところで給料が上がるわけじゃありません。
株価に関心があるのは株主だけです。
そう、だからこそF君は疑問だったのです。株主でもない我々が株価について議論する意味って何かあるのか?、という疑問だったのでしょう。F君が言うところの「会社にとって」とは「会社で働く私たちにとって」という意味だったと推測します。
「株価が上がろうと下がろうと俺たちの生活には何の影響もないのに、なんで部長はあんなに株価の話題をしょっちゅう出すのか分からない」ということだろうと思います。
こういう質問ってちょくちょく受けるんですよね~。
やはり働く者にとっての自社の株価の位置づけがよく分からなくなるのでしょうか。特に経理部や財務部に在籍していると、どうしても株価の話題が上がりやすいので疑問を抱くことが多いようです。
まあはっきり言ってしまえば、従業員という立場である以上株価は関係ないですね。関係ないというのは、経済的な意味でです。ストックオプションでも持ってない限り、株価が上がっても社員には何の恩恵もありません。株価が上がって社内の雰囲気が明るくなって(そう感じるだけかもしれないが)、働きやすくなるという間接的なメリットはあるかもしれません。
従業員は株主・経営陣に雇われている存在で報酬と引き替えに労働を提供しているだけです。日本企業は社員を家族のように抱えるところがありますが、法律的に言ってしまえば会社と従業員の関係なんてドライなもんです。
従業員なら会社の株価を気にする意味は特にありません。株価とは勤務している会社の経済価値を示しているわけですが、会社の経済的価値が高まっても従業員が直接恩恵を受けることはありません。日本では正社員として勤務するとかなり会社へのコミットメントを求められがちです。ですが、の割に会社の業績と社員の給料に相関関係はありません。業績と給料がほぼ無関係なのに会社への忠誠を求められるのは、長期雇用という暗黙の契約があるからだと思います。
僕は今の会社好きなのですが、所詮雇われているだけという認識は意識的に持つようにしています。でも結局あまりに長期的に在籍すると単なる雇用契約以上の関係を持っちゃう面は否めません。人間関係も長く付き合うと情が湧きます。それは仕事にとってプラスの面もありますが、個人的にそういうのがあんま好きじゃないです。なので、今の環境に不満はなくても時々転職したい欲求に駆られます。
従業員の立場なら株価を気にする必要なんてないと言いました。ただ例外として、経理部に在籍している従業員は株価を少しは気にして欲しいなと思います。
経理部にとっての顧客とは投資家・株主です。決算書を作成提示して、決算説明会で投資家の皆様に適切に現状の業績と将来見通しの説明をして、納得して株式売買判断をしてもらうことが経理部の使命です。その投資家の方々が決算書を見てどう感じたのかが株価として数字で表れます。
多少業績が悪くても、その内容をきちんと説明して一時的な要因に過ぎないことを投資家・アナリストに納得してもらえば、株価は意外と下がらずに済むこともあります。もちろん、それが嘘の説明だったらダメですよ。ただ、本当に一時的な要因ならそれを正確にディスクローズして真摯に説明して、より正しい方向に株価を”誘導”することは経理の一つ大事な仕事です。広報の職務領域にもなってきますが。IRですね。
だから経理部長は株価を気にします。経理部長は別に自分が持っている自社株の価値が気になって日々株価を追っているわけじゃありません。自分達の情報開示に対してマーケットがどう反応するのか気になるから株価をチェックするし、そういう意識を社員にも持ってほしいから朝礼で話題に出すのだと思います。
ということで、もしあなたが経理部に在籍しているのであれば、せめて決算発表翌日の自社の株価くらいは興味を持って見るようにするといいかなと思います。
hiroさん、こんにちは。
経理部長となると、株主総会での質問を求めされることも関係しているかもしれません。株価が良好なときは、株主総会もそこまで荒れないとは思うものの、株価が不調なときはかなり厳しい質問が来ることが予想されます。
また、経理部長ともなると、これから役員になることもあると思います。当然、株主総会での信任が必要です。すんなりと信任されるかどうかは株価が良好か不調かも大きく関わってくると思われます。
最近の株主総会は、昔のシャンシャン総会と違って、海外の機関投資家も多いので、かなり手強いと思います。
上場企業の部長ともなると、さまざまな方面から強いストレスがかかることでしょう。部長さんもたいへんと思います。
鎌倉見物さん、こんばんは。
そうですね、経理部長クラスになると株主だけじゃなくすべてのステークホルダーを意識しています。
うちの会社は幸い業績は右肩上がりで、株主総会の追求はほとんどありません。
おっしゃる通り、業績が落ちて株価が下落すると株主の表情は険しくなります。
まあ損しているわけですから当然ですが。
>最近の株主総会は、昔のシャンシャン総会と違って、海外の機関投資家も多いので、かなり手強いと思います。
一般的な傾向はそうですよね。
うちの会社に限って申し上げると、昔から株を持っているおじいちゃんおばあちゃん株主が大半です。
あまり経営的な厳しい質問は飛んでこないです。
クスっと笑ってしまう微笑ましい質問が多いです。
平和なもんです。
海外投資家も多いのですが、株主総会では目にしません。
ただ業績が落ちると厳しい追求が来る可能性もあります。
業績が良い今こそきちんと経理部として慎重に財務分析しましょうと部長は言っています。
こんにちは。
私も後輩(厳密には経理から人事へ異動になった女の子)から同様な質問を受けました。
その時は会社の資金調達手段の種類の話をしていた流れだったので
「株価が高い方がそうでない時に比べて増資した時にお金がもらえやすくなる」
というような趣旨の話をしましたがこの答え方はどうでしょうか。
もっとも、信用が十分にあり資金調達手段が銀行借入ほぼ一択なら実現する局面はないかもですが・・
こんばんは。
従業員にとって勤めている会社の株価が上がっても、直接的な利益はほとんどないですよね。
持株会に入っていれば別ですが。あと会社の雰囲気がよくなる効果はあるかもしれません。
増資の件は良いアドバイスですね!
確かにその通りで、株価が上がると調達できる資金が増えるし、既存株主の希薄化も小さくなります。
シャープが最近増資を取りやめましたが、株価が下がって調達できる資金が目標に届かないからです。
実際にお金に紐づけて答えると納得感ありますね。