スターバックスのコーヒーってそんなに美味しいわけじゃないけど、一番安いブラックコーヒーのショートサイズでも302円します。結構高いです。100円のセブンコーヒーの方が味は好きですね。

でもスタバは本を読んだり、ブログを書く環境としては素晴らしいです。座り心地の良い椅子で長期間居やすいです。あと、コーヒー一杯で長時間居てもいいですよという雰囲気を感じます。図書館みたいな静寂な環境よりも、スタバみたいにちょっと騒がしいくらいが集中できます。個人的には。

スタバには素敵なサービスがあります。それがコーヒーおかわり100円(税別)というサービスです。サイズにかかわらず、ブラックコーヒーを注文した人はその日中に限りおかわり100円となります。店舗は別の店舗でもOKです。

これは未だに貧乏性が抜けない自分にはありがたいサービスです。今日は赤坂のスタバ(←ここのスタバ最近発見したのですが、とても綺麗なお店です)でゆっくり午前中本読んで、午後友人とランチして、夕方は新宿のスタバでブログ書いています。2件目の新宿のスタバのコーヒー料金は100円です。スタバ代=場所代だと思っていて、100円で素敵な空間を利用できるのは嬉しいです。

なんですが!

このスタバのおかわりサービスが改悪されるそうです。今後はおかわりが150円になるとさきほど店員さんに言われました。たった50円の値上げで文句言うなって感じだと思いますが、昔からあったサービスが改悪されるのはちょっと残念です。(一部店舗だけかも)。

でもですね、あることをすれば今後もおかわり100円ですよって店員のお姉さんに言われました。

それがスタバのプリペイドカードを使うことです。スタバのプリペイドカードに入金すれば、今後もおかわり100円のままらしいです。

ふ~んって思いました。

 

 

プリペイドってpre-paidです。”pre”とは「あらかじめ」「事前に」という意味です。predict(予言する)やprepare(準備する)などの英単語がありますね。

事前にペイされたカードがプリペイドカード(prepaid card)です。

プリペイドしてもらう(前もってお客さんから代金を貰う)ことは、ビジネス上とても大切なことです。資金繰りを改善させることは業績の改善に直結します。ビジネスでは売上高を上げることが大事なのは言うまでもありませんが、資金繰りを改善させることも非常に重要です。

かつて、日立製作所は経営改善プロジェクトの中でキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の短縮化を目標の一つに掲げていました。

CCCとは仕入れから売上代金回収までの日数です。
CCCは小さければ小さいほど良いです。

CCCは通常はプラスですが、交渉力のある企業例えばアップル(AAPL)のCCCはマイナスです。ティム・クックCEOのサプライチェーン改革の成果だと言われます。

アップルのCCCがマイナスって恐ろしいことです。鴻海などのサプライヤーへ仕入代金を払う時には、すでにアイフォンの販売代金が手元にあるということです。CCCがマイナスだと運転資金を銀行から調達する必要がなくなります。アップルはアイフォンの高い収益性にばかり注目が集まりますが、地味な資金繰り改善が業績を下支えしている点も見逃せません。

投資家はテキトーに投資判断すべきではありませんが、基本的にはアップルのような世の中に名の知れた優良企業に投資してホールドしておくことが正解だと思います。収益力が高い企業は、外部ステークホルダーに対する交渉力も強くなってより収益基盤が強固になります。一度築き上げたエコノミック・モート(経済的な壕)は簡単には崩れないと言いますが、それは強い交渉力による資金繰り改善のサポートもあるからです。

 

 

スターバックスの「プリペイドにしないとおかわり100円にしないぞ!」作戦も、CCCの改善を狙った合理的な経営戦略です。

実は前もってお金を得たからと言って、スターバックスの売上高は増えません。会計上は変化なしです。あくまでもキャッシュフローが変わるだけです。つまり、スターバックスの損益計算書とキャッシュフロー計算書の乖離が大きくなるということです。

あなたが1万円をスタバカードにプリペイドすると、スターバックスのキャッシュフロー計算書の営業CFには反映されます。しかし、スターバックスの損益計算書の売上高には反映されません。

会計の世界では、単にお金を貰っただけで売上計上することが禁止されています。きちんとお客さんに商品・サービスを提供した時点で売上計上する必要があります。それまでは売上計上は保留されます。極論言えば、1万円をプリペイドした人が、そのことを忘れてカードを放置していたら永遠にスタバの収益には貢献しません。(あまりに放置され続けるといつかは収益計上するでしょうけど。。)

普通、商品を販売してお金を貰ったらこんな仕訳になります。

預金が増えて、見合いには売上高が計上されます。こうなれば、キャッシュと損益はズレません。キャッシュ=利益となります。

でも、スタバのようにプリペイドされた場合の仕訳はこうなります。

売上高は計上されません。「前受収益」という負債科目で計上されます。要するに「まだ売上計上は認めないよ!」ということです。今はまだお金を受け取っただけだから売上計上はダメ、将来お客さんがカードを使用したら売上計上してOKということです。お客さんがカードを使用するまでは「前受収益」という科目で保留されます。

お客さんがカードを使用するたびに「前受収益 1万円 / 売上高 1万円」といった感じで売上計上していきます。徐々に売上計上していきます。

キャッシュフロー計算書としてはプリペイドされた時に一括して営業CF計上されますが、会計上はカードが使用されるまで売上計上されません。

会計で売上計上される前に、代金の入金があるビジネスは有利です。

先に入金があるビジネスは強いです。
CCCが大きく改善します。

ちょっと古くて申し訳ないですが、スターバックスの営業CF及びフリーCFの推移です。

スタバのプリペイド制度が主流になれば、営業CFは大きく改善すると思われます。と言っても、スタバの日本事業は全体の10%程度のはずなので、大勢に影響はないでしょうが。

少なくとも私はプリペイドにすることを真剣に検討しています。スタバってEdyなどの電子マネーが使えない店舗が多くて、現金をじゃらじゃら出さなくちゃいけないのが嫌なのもありますね。302円とか中途半端な値段だから、余計にお釣りが嵩むときが多くて。

ん、もしかして、、この中途半端な値段設定も顧客をプリペイドに誘導する導線なのか・・。

 

 

ところで、私はよく損益よりもキャッシュフローを見ましょうと言っています。現代の会計制度は複雑怪奇なので、それを理解するよりはシンプルにキャッシュフローを見た方が真実が見えると思うからです。その考えは今も変わっていません。キャッシュフローは大事です。

ですが、何でもバランスですね。

今回のスタバのようにプリペイドがある場合、営業CFと売上高に相当の乖離が生じます。この場合営業CFが著しく改善しているように錯覚してしまうリスクがあります。やはり事業の収益性を判断するという点では、損益計算書が有用です。きちんと売上高と売上原価が発生主義に則って計上されているからです。

投資を検討している企業のキャッシュフロー計算書をチェックすることは大事ですが、損益計算書を完全に無視していいわけじゃありません。損益計算書での収益性チェックも忘れずに。

主要米国企業の基礎データでよければ米国株銘柄分析記事で集計していますので、ご参考下さい。