米国株のインデックスを長期保有するという投資戦略に行き着いた人の多くが直面するであろう問題が、NYダウにすべきかS&P500にすべきかということではないでしょうか。

もはや低コストの米株インデックス投資を選んだ時点で、NYダウであれS&P500であれ将来のリターンは手堅いわけですが、どちらがより長期投資対象として望ましいかは悩ましいところですよね。

絶対の正解はありませんが、個人的な意見を言います。私はNYダウよりもS&P500をオススメしたいです。

理由は、インデックス投資を選択するということは市場平均と同程度のリターンで満足するということですが、NYダウ指数は米国マーケット全体を表しているとは言い難く、リターンが相対的に不安定だと思うからです。S&P500は時価総額に従って幅広く米国企業にアクセスすることができて、より安心して長期保有できます。

 

S&P500指数とは

S&P500とはニューヨーク証券取引所とナスダックに上場している主要米国企業の中から選出された大型500銘柄です。有名大企業は大体S&P500に含まれています。

時価総額加重平均型です。時価総額の大きい企業ほどその株価変動がS&P500指数に影響を与えます。ちなみにもっとも時価総額が大きい企業はアップルで、2位がマイクロソフト、3位がアマゾンです。最近、一時的にアマゾンが2位にのし上がりました。

以下はブラックロック社のS&P500指数連動ETFであるIVVの上位構成銘柄です。

ティッカー 名称 保有比率
AAPL アップル 3.8%
MSFT マイクロソフト 3.1%
AMZN アマゾン 2.7%
FB フェイスブック 1.8%
JPM JPモルガン・チェース 1.7%
BRKB バークシャー・ハサウェイ 1.7%
JNJ ジョンソン&ジョンソン 1.5%
GOOG アルファベット 1.5%
GOOGL アルファベット 1.4%
XOM エクソンモービル 1.4%
BAC バンク・オブ・アメリカ 1.3%
WFC ウェルズ・ファーゴ 1.1%
INTC インテル 1.0%
T AT&T 1.0%
V ビザ 1.0%
UNH ユナイテッド・ヘルス 0.9%
CVX シェブロン 0.9%
PFE ファイザー 0.9%
CSCO シスコシステムズ 0.9%

こんな感じで時価総額に従って米国マーケット全体に投資できるのがS&P500指数です。機関投資家の運用成果を評価する上でのベンチマークにもなっています。

 

NYダウとは

ダウ・ジョーンズ社が算出する指数で米国の主要業種を代表する優良企業30で構成されている指数です。1896年に算出が始まり当初は12銘柄でした。1928年から現在の30銘柄構成となりました。

銘柄選定に明確な基準はありません。最近では2015年にアップルが追加されました。近年の米国経済を牽引する他のハイテク大手、アルファベットやアマゾン、フェイスブックはNYダウには入っていません。今後選出される可能性は高いと思いますが。

NYダウは株価平均型の指数です。
NYダウ=30銘柄の株価合計÷30(÷除数)という式で計算されます。

NYダウは株価が大きい銘柄に左右されやすいという特徴があります。時価総額平均ではなく株価平均です。規模が小さな企業でも株価が高ければ指数に大きな影響を与えます。

以下はNYダウ指数連動型のETFである[DIA]の構成銘柄です。

ティッカー 名称 保有比率
BA ボーイング 9.3%
GS ゴールドマン・サックス 7.3%
MMM スリーエム 6.5%
UNH ユナイテッド・ヘルス 6.3%
HD ホーム・デポ 5.0%
AAPL アップル 4.9%
MCD マクドナルド 4.4%
IBM IBM 4.4%
CAT キャタピラー 4.3%
TRV トラベラーズ・カンパニーズ 3.9%
JNJ ジョンソン&ジョンソン 3.6%
UTX ユナイテッド・テクノロジーズ 3.6%
V ビザ 3.4%
JPM JPモルガン・チェース 3.2%
CVX シェブロン 3.2%
DIS ウォルト・ディズニー 2.8%
AXP アメリカン・エキスプレス 2.7%
MSFT マイクロソフト 2.6%
WMT ウォルマート 2.4%
PG プロクター&ギャンブル 2.2%
XOM エクソンモービル 2.1%
DWDP ダウ・デュポン 1.9%
NKE ナイキ 1.8%
MRK メルク 1.5%
INTC インテル 1.4%
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 1.4%
CSCO シスコシステムズ 1.2%
KO コカ・コーラ 1.2%
PFE ファイザー 1.0%
GE ゼネラル・エレクトリック 0.4%

30銘柄均等とは程遠く結構偏りがありますよね。時価総額の大きさではなく株価の大小で配分が決まっています。ボーイングの割合が最も大きく全体の9%を占めます。もっとも割合の小さいゼネラル・エレクトリックは全体の0.4%を占めるに過ぎません。もはやいてもいなくても関係ないレベルです・・。

 

S&P500の方が安心してホールドできる

上で示した通りS&P500の方が銘柄数も多く、かつ特定銘柄へ偏りも小さいです。NYダウはもともと30銘柄と分散力がやや弱い上に、株価というやや不合理な基準によって特定銘柄に過重配分されています。

2017年はNYダウ投資家にとってはラッキーな年だったと言えます。ボーイング(BA)の株価は1年間で2倍近くも上昇しましたが、BAだけでNYダウの9%を占めますからNYダウに投資していた人はBA株価上昇の恩恵を享受することができました。

2017年苦境に陥ったのがゼネラル・エレクトリック(GE)です。ジェフ・イメルトCEOからジョン・フラナリーCEOへ交代となりましたが、次から次に過去の負の遺産が明るみに出てきました。業績は悪化し、配当は半分にカットされました。もちろん株価も大きく下落し、2017年初31ドルあった株価は年末には16ドルまで暴落しました。しかし、GEはNYダウの僅か0.4%を占めているだけなので、NYダウに投資していた人はGEの減配・株価暴落の憂き目を事実上回避することができました。

2017年は運が良かったと言えます。NYダウ指数の特定銘柄への過重配分が良い方向に働きました。でも今後その逆が起きることもあり得ます。もしかしたらボーイングやゴールドマン・サックスの株価が暴落することだってあるかもしれません。この2銘柄だけでNYダウの17%を占めます。その場合、NYダウはS&P500を大きくアンダーパフォームすることでしょう。GEが復活を遂げて株価が急回復してもNYダウ指数の押し上げ効果はほとんどありません。

NYダウはブルーチップの宝庫という意味での安心感はありますが、分散効果が弱く米株マーケット全体を表していないという不安感があります。

私はNYダウよりS&P500をオススメしたいですが、それはS&P500の方がリターンが勝ると考えているからではありません。米株市場平均と同じパフォーマンスを目指すならNYダウよりS&P500の方が適していると言いたいだけです。

結果としてNYダウのリターンがS&P500を超える可能性は十分あると思います。やはり優良銘柄が中心ですし、長期的に底堅い業績が期待できる企業ばかりです。ただ、一部の保持比率の高い銘柄のパフォーマンスが悪化するとS&P500を下回るリスクもあります。将来は分かりません。

低コストで市場平均と同じパフォーマンスを得られることがインデックス投資の特徴であり、メリットです。米株は歴史的に実質7%のリターンを投資家に提供してきました。今後も米株インデックスに投資することで実質7%のリターンが期待できると思います。自分で個別銘柄のポートフォリオを組めば、市場平均を超えるチャンスもありますが負けるリスクもあります。個人が(特に頻繁な売買を繰り返して)ポートフォリオを作っても、そう簡単には市場平均を超えることができないと一般には言われます。私は個別株投資を2年くらいやってきましたが(まだ短い経験ですが)、S&P500を超えることがいかに大変なことか痛感しています。

低コストで市場平均と同じパフォーマンスを得ることができるのが(しかも基本ほったらかしでOK)、インデックス投資の魅力です。米国株で市場平均と言えば普通はS&P500を指します。より安心して長期保有できるのはNYダウよりS&P500かな~と思います。

 

とは言え、両者のパフォーマンスはそれほど変わらない

S&P500とNYダウの構成銘柄って結構違いますよね。でも意外なことに、両者のパフォーマンスはかなり近似しています。

1996年からのNYダウ(青)とS&P500(赤)の比較ですが、二つのラインはほとんど被ってますよね。これだけ構成銘柄が異なるのにパフォーマンスが近似するのはちょっと不思議な感じです。

ただ個人的な意見としては、今後はS&P500とNYダウのパフォーマンスに若干乖離が出やすくなるだろうと思います。と言うのも、現在の米国経済で時価総額上位に位置するハイテク大手の大半がNYダウには含まれていないからです。具体的にはアマゾン、アルファベット、フェイスブックです。あとネットフリックスもかな、まだ規模では3社には及びませんが。

ま、NYダウとS&P500でどちらが勝つかは予想できませんね。仮にハイテク銘柄が暴落するようなことがあれば、少なくとも短期的にはNYダウがS&P500をアウトパフォームすると思います。

S&P500もNYダウもどちらも優秀なインデックスなので、最後は自分の好みで決めてOKだと思います。ですが、両者の特徴、特にNYダウの特定銘柄への偏りは知った上で判断したいところです。