マーケットの期待が高い銘柄ほど、期待を超える決算を出してくる

株価=EPS(一株当たり利益)×PER

株価は利益とマルチプル(PER)の積です。PERは様々な要因で決まります。投資家の期待、業種、ディフェンシブ性、財務安定性など。

一般的に利益成長に対するマーケットの期待が高いほどPERは高くなります。将来の成長を見込んで今の利益に対して高い評価額が付くからです。逆に、業界が成熟していて利益成長が難しいと思われているほどPERは低くなります。通信業界などがそれに該当します。

高PER=投資家、アナリストからの期待が高い
低PER=投資家、アナリストからの期待が低い
一般的にはこう言えます。

米国株投資を始めてから実感していることですが、米国株は決算数字に素直に反応します。売上高、EPSがアナリスト予想値、企業ガイダンスを上回るか否かです。予想を超えれば大抵株価は上がるし、予想を下回ると株価は下落することが多いです。

個別株投資の世界に足を踏み入れてから3年ほど経ちます。以来、自分の保有銘柄と他気になっている銘柄、あとはアマゾンやマイクロソフトなど主要銘柄の決算をウォッチしてきました。

その中で感じていることですが、目標設定(マーケットの期待)が厳しい高PER銘柄ほどそのハードルを越えてくることが多く、目標設定が緩い低PER銘柄ほどその低いハードルすら飛び越えられないことが多いということです。「相場のモメンタムが強い」なんて言いますけど、それは株価の勢いだけでなくその根拠となる企業業績も勢いがあることが多いです。そりゃ利益成長なく株価だけ先走って上がってもしゃーないですからね。

この12月決算だとマイクロソフト、アップルはマーケットの期待をものともせず、高いハードルを飛び越えてきました(アップルは今や高PER銘柄です)。マイクロソフトはこの第4四半期に10%を超えるトップラインの伸長を期待されていましたが、結果は売上高は369億ドルで前年比+14%でした。時価総額1兆ドルを超える企業とは思えない成長スピードです。成長エンジンはクラウドです。

事業が好調でマーケットからの期待が高い銘柄は必然的にPERも高くなり一見割高に見えるけど、それでも市場の評価は保守的過ぎることが多いのかなという気がします。

『株式投資の未来』は『証券分析』を否定した

それを裏付けるデータもあります。以下はジェレミー・シーゲル先生の『株式投資の未来』で紹介されていた、1957年~2003年までのトータルリターン上位10銘柄です。

黄色は平均PERがS&P500指数(17.5倍)よりも高い銘柄です。10銘柄中7銘柄が高PERです。

なぜ、これほど高いバリュエーションが続いたにもかかわらず、優秀な成績を残せたのか。それはひとえに成長のおかげです。同期間のEPS成長率(年率)は以下の通りです。

アボットラボラトリーズ:12.4%
ブリストルマイヤーズスクイブ:11.6%
コカ・コーラ:11.2%
メルク:13.2%
ペプシコ:11.2%
コルゲート・パルモリーブ:9.0%

単年で二桁成長ならまだしも、47年間という長期でこれほどの成長を続けれるのはホントに凄いことですよね。当時は今よりもインフレ率が高かったので、そこは割り引いて考える必要がありますけどね。特に1980年前後は10%を超えるインフレが起こりました。

現代の2%を下回る低インフレ環境が持続すると仮定すれば、これほど高いEPS成長を求める必要はないと思います。とは言え、成長なくして平均を超える株主リターンは無理というのが現実です。高値を警戒するのは当然ですが、EPSを長期的に増やせる銘柄を厳選することが長期投資ではより重要です。

もちろん、他の条件がすべて同じならPERは低い方がいいに決まってますよ。低PERでありながら、EPS成長まで高ければ株主リターンはとんでもなく高くなります。それが実現したのが20世紀後半に19.8%というリターンを叩き出したフィリップモリスの事例です。配当再投資が高リターンの本質ではありません。マーケットの期待に反してEPSを成長させたことが高リターンの背景です。

単なる「バリュー株」、低位株に投資しても結果は出ません。成長こそがリターンの源泉です。

フィリップモリスの事例は例外と位置付けた方が健全だなと、今は結論付けています。そりゃ低PERかつ高EPS成長の銘柄を発掘できるに越したことはないですよ。でもこれだけ情報が効率的に末端の個人投資家まで行きわたる現代に、それを行うのは至難の業だと思います。やはり「素晴らしい企業の株をほどほどの価格で買う」というバフェット先生の言葉に従うべきだなあと感じています。

市場平均を超えるPER(=市場平均を下回る益回り)で評価されている企業は、本来はもっと高いPERで評価されて然るべきというケースが往々にしてあるんじゃないでしょうか。低PER銘柄が売られ過ぎに見えることはよくありますが、高PER銘柄が売られ過ぎに見えることはあまりありません。しかし、後者のケースは頻繁に起こっているのかもしれません。

「いつもPER16倍以上で普通株を購入する人は最終的には大損することになる」というわれわれの論理を知っておいても損はないだろう。そうした人々はいつでも強気相場の誘惑に負けて、法外な高値で普通株を買ったもっともらしい理由をとうとうと述べ立てるものである。

ベンジャミン・グレアム、デビット・L・ドッド『証券分析』より

バフェット先生が師と仰ぐグレアムの「論理」を、シーゲル先生の研究結果がバッサリ切る結果になりました。PER16倍どころか20倍を超える普通株を購入し続けることで、S&P500を大きく超えるリターンが実現したのですから。まあ時代の違いもあるかもしれませんが。『証券分析』が書かれたのは1934年です。

米国株投資を始めた2016年からずっとグロース株がバリュー株をアウトパフォームする期間が続いています。だから、高PERの成長企業の株を買うことが正しいという考えに傾いているだけかもしれません。でも、自分がもっとも影響を受けた『株式投資の未来』を読むと、高PERの成長企業こそ高リターン銘柄だとわかります。つまり、それは時代普遍的な法則である可能性が高いということです。

うーん、どういうポートフォリオにするのが正解なんでしょうね。まあ、絶対の正解なんてあるわけないんですが。ずっと言ってますが、私は配当に対するこだわりを捨てきれません。市場平均程度のインカムは欲しいです。そのこだわりを持ちながら、長期的にEPSを成長させられる企業を厳選したいです。