長期投資では銘柄だけでなく、セクターも適度に分散させた方がよいと思います。

歴史上、生活必需品セクターやヘルスケアセクターのパフォーマンスが強かったことが分かっています。ですが、それらのセクターのみに集中投資するよりかは、上記の各セクターに適度に分散したほうがいいと思います。

リーマンショックのような大暴落は、私たちが生きている間には二度と起こらないかもしれない。でも、信用収縮に起因する景気循環は必ずあります。

米国経済は景気拡大が8年目に突入しています。債券利回りは最近上昇しつつありますが、油断はできません。また利回りが急落して、そのままリセッション入りしてしまう可能性だってあります。このまま景気拡大が10年以上続く可能性もあります。

未来はわかりません。ただ今の景気拡大が未来永劫続くことはあり得ず、どこかで必ずリセッション入りします。そういう景気循環は必ずあるものと心得ておくべきです。

景気が循環する中で、あなたのポートフォリオの資産価値変動が少しでもマイルドになるよう、適度にセクターは分散させておいた方がよいと思います。ポートフォリオの変動をマイルドに保つことは、精神的にも助けになるし、投資リターン的にもポジティブなことです。

グワングワン価値が上下するようなポートフォリオは、長期投資向きではありません。長期投資はディフェンシブであるべきです。保守的な姿勢が格好悪いと思うことが、格好悪いです。

アップルやマイクロソフトなどのハイテク系ばかりでPFを組むと、最近のような金利上昇局面で大きく資産価値を失います。景気安定株ばかり買っていると、金利上昇景気拡大局面で周りに置いてきぼりで、ちょっと辛いかもしれません。

長期投資は、自分の感情との闘いという面があります。途中で長期投資が嫌にならないように、”稲妻が走る瞬間”に市場に居ることができるように、投資を継続することが大切です。

「俺はどんな相場環境でも動じない精神があるんだ!」って強がらずに、グルグル回る景気循環を心穏やかに乗り切れるよう、銘柄だけでなくセクターも適度に分散して投資した方がいいと思います。

 

 

と、、ここまでセクター分散を推しておいてなんですが、時期によって敢えて多めに投資するセクターがあってもいいと思いますよ。最近そう思います。

長期的にはセクターを分散させながら投資することは大事だと思いますが、特定の時期に特定のセクターに重点的に投資するのは、投資パフォーマンスを向上する一つの策だと思います。

つまり、現在のマクロ経済環境を鑑みて、投資家心理が悪化しているセクターにちょっと強めに投資するということです。

原油価格が下落して、1バレル60ドル台はとても遠く感じるところですが、エネルギー株にちょっと強気で投資するとか。

携帯電話料金が下がって苦しんでいる通信株にちょっと強気で投資するとか。

これから金利が上昇していくと、ハイテク株は一段の下落が予想されますが、その下落を掴むとか。

よくこう言われます。
マーケットは合理的だ、大型株が割安に放置されることはほぼない。

その通りだと思います。マーケットで取引されている株価は大体合理的で、自分がより妥当な株価を知っているなんて傲慢なことは思わない方がいいと思います。

でね「マーケットは合理的」って言葉について、思うことがあるんです。

(うわ~、めっちゃ堅っ苦しいウザいこと言ってるコイツって思われそうですが、、。まあ、そういうウザいことが言えるのもブログのいいところだと思うので、よかったら聞いてください。)

それはね、マーケットは合理的とは言うけども、マーケットが合理的と言っている前提となる条件(リスク)が各セクター、各銘柄毎に異なるんじゃないかってことです。

そう思うんです。

原油先物が不安定で、エクソンモービルやシェブロンなどのエネルギー株は2017年上期下落しています。たとえ株価が下落していても、それはマーケットに集約された多数の投資家の意思であり、その株価は合理的だと言えます。

なんですが。
合理的なんですがね。
その合理的ってのは、エネルギー株の将来が不安だなっていうリスクを織り込んだうえで、それを前提として合理的と表現しているだけです。

てかさ、マーケットは合理的です、神の見えざる手があります、って言われたら、もうぐうの音も出ないですよ。そりゃそうですね、私もあなたもマーケットの総意より賢いなんて、それはないですよってなりますよね。

それはいいんです。別にマーケットが決めた株価を否定する必要はないと思います。てか、否定したらいけないと思います。

S&P100に入るような大型株なんて、マーケットはそんなミスプライシングしないですよ。

投資家心理が悪化している銘柄が、ミスプライシングされているなんて決して思ってないです。

投資家心理が悪化しているセクターに属する銘柄であっても、適正にプライシングされていると思います。

されているのですが、その値付けの前提となる投資家のリスク認識は、平均よりも高いはずだと言いたいです。

 

ちょっとだけ、ファイナンス理論に走ります、すみません。数字で説明したほうが抽象化できるので。というより、数字にしないと説明できない私の文章力の問題です。

株価がマーケットで値付けされている前提としての割引率がセクター毎、銘柄毎で異なるのが普通だということです。

S&P500平均の割引率が仮に6%だとしたら、エネルギーセクターは8%くらい、通信株は7%くらいで、ハイテク株は5%ほどかな(数字は適当です)。

セクター 割引率 投資家心理
S&P500 6% 普通
エネルギー 8% ハイリスク
通信 7% ちょっとハイリスク
ハイテク 5% 楽観気味

この各セクター毎、銘柄毎の異なる割引率(リスクプレミアム)を所与として、各銘柄の株価はマーケットで合理的に算定されているはずです。

投資家心理が悪化気味で、株価が下落している銘柄であってもその株価は合理的だ、決して割安ではないという謙虚な心構えはとても大切だと思います。
その一方で、それらの売られがちの銘柄やセクターには、高いリスクプレミアムが乗った上で、合理的だと言われているだけなのも、また事実だと思います。

 

 

 

株主リターンの源泉とは、リスクだなって最近よく思います。

誰もが出資することに怯えていないところに、自分も追加で出資しても高いリターンは期待できないでしょう。やはり、周りが怯えてお金をなかなか出したがらないところに、勇気を出して出資することで高いリターンが得られるものだと思います。

ダチョウ倶楽部の上島さんみたいになっていると、株式投資での高いリターンは期待できないと思います。

「俺が株を買うよ~」
「いやいや、俺が買うよ~」
「いやここは、俺が買うよ~」
「待て待て、俺が買うよ~」
「そんなこと言うなら、俺も買うよ~」
「え~、じゃあ私も買うわ!」
「・・・じゃあ、俺が買うよ」←上島さん

どうぞどうぞ!

そうやって、周りから「どうぞどうぞ!」って差し出される株を買っても、高いリターンは期待できないと思うんです。
周りが熱狂して、誰もがリスク負担に名乗りを上げている時に、遅れて名乗りを上げても遅い。

普段ビジネスをやっているうえで、株主の姿は見られないし、株主の役割はなかなか感じられません。株主の存在価値はあんまり認知されていないのが現実です。

でもね、やっぱり、株主は必要な存在なんです。誰かが必ずビジネスの金銭的リスクを負担しなくてはならないのです。

そのリスクを負担することこそが、株主の仕事です。株主は金銭的リスクを負うという仕事を愚直にこなして、初めて対価である配当を得ることができます。

リスクを取ることが仕事であるなら、なるべく高いリスクの仕事を取ったほうがリターンは高いです。

投資家心理が悪化している銘柄とは、周りがあまり手を挙げていない銘柄です。「なんか不安だから、あまりお金出したくないな~」と思っている銘柄です。

それでも株価が合理的と言われるのは、そういう投資家の不安感を前提として、合理的と言っているだけです。だから、どんな状況でも株価は合理的と言えちゃうんです。

極論言えばさ、リーマンショックのさなかの株価だってあれはあれで合理的でしょ。ピークに達した投資家の恐怖心を織り込んだうえで、合理的に値付けされた株価ですから。

投資リターンは、短期的にはミスターマーケットに左右されるもんですが、長期的には「こなした仕事の価値」に比例すると思います。株主として価値ある仕事をこなした投資家は、きちんと報われると思います。

高いリスクを負担した株主は、高いリターンを得られるようになっていると思います。バフェットがリーマンショックの真っ只中で、果敢にゴールドマンサックスに投資して高い利益を得たように。

リスクは怖いものですし、回避できるならなるべく回避すべきものです。ですが、リスクを回避していてはリターンが得られないのも事実です。

リスクが高い銘柄やセクターとは、その分値動きも激しいし、更なる株価下落リスクもあるし、減配の可能性も相対的に高いです。

だから、なんでもかんでも高いリスクを取ればいいわけではありません。長期投資であれば、時に裏打ちされた成熟優良企業を選ぶべきです。

適度にセクター分散することも大切なことです。

そういった原則をきちんと理解したうえで、気持ちすこ~しだけ、投資家心理が悪化しているセクターの優良銘柄に多めに投資することは、長期投資リターンを向上させるはずです。

最近で言えば、やはりエネルギー株や通信株に対する投資家センチメントは悪いと思います。

リターンは将来にならないとわかりません。あまり勝手なことは言えませんが、これらの悲観セクターを目標ポートフォリオよりも、少し多めに買っておく意義はあると思います。

なぜなら、株主リターンの源泉とはリスクだからです。
そして、受託者責任のない個人投資家のあなたには、そのリスクを負うだけの余裕があるケースが多いと思うからです。

最後にMarket Hackの広瀬氏のお言葉を紹介して、記事を締めます。

安く買うということは相場のセンチメントが悪い時に買うことを意味します。それはつまりすぐに利が乗らないことを意味するし、みんなが売っている時に買いに向かうので強い信念が必要です。

『Market Hack流 世界一わかりやすい米国株投資の技法』より抜粋