米国株銘柄分析というカテゴリーを設けて、主要米国企業の財務データを紹介しています。今2019年度のデータ更新を行っているところです。

2016年からやってますが、毎年財務諸表を見ていて感じるのは「すべての企業がディフェンシブやん!」ってことです。どの企業の売上、利益を並べてもすごく綺麗です。ボコっと穴が開いているのはエネルギー関連企業くらいです。エネルギーセクター以外はすべてディフェンシブでは?って思っちゃうくらいです。

でも、それは仕方ないこと。なぜなら、緩やかな景気回復期が11年も続いてきたからです。

しかし、それも間もなく終わりそうです。金融市場は先に終焉を迎えました。新型コロナウイルスの問題でダウ平均、S&P500指数ともに高値から20%超の下落となり弱気相場入りしました。実体経済もリセッション入り(=GDPが2四半期連続でマイナス成長)する可能性が高そうです。

私は長期投資では、ディフェンシブ株つまり景気循環によって業績が左右されづらい銘柄が市場平均をアウトパフォームする可能性が高いと思っています。株価が安定しているからではありません。累積利益が最大化しやすいからです。

企業の利益が最終的に株主の利益となります。企業が稼いだEPSの累積が株主の長期リターンです。利益成長率よりも累積利益の方が重要。利益成長は累積利益最大化の手段です。

極論ですが、こんなEPS推移の会社があるとします。

この会社の株を10年ホールドして儲かると思いますか?

利益は初年度100で9年後に500になっています。CAGR(年平均成長率)は17.5%です。すごい成長率ですね。

じゃあ、株主も年率17.5%のリターンを得ることができる?
いや、配当加味すればもっと高いリターンになる??

んなことはないでしょう。株価がどう動くかは知りませんが、理論的に考えて株主は損失を被ります。10年間の累積EPSは▲320でマイナスだからです。

では、こんなEPS推移の銘柄はどうでしょうか?

初年度100のEPSが9年後に150になっています。CAGRは4.1%とちょっと寂しいですね。でも、この株を10年間ホールドした投資家は、(もちろん買値によりますが)相応のリターンで報われることでしょう。成長率こそ緩慢ですが、累積EPSはしっかりプラスだからです。

短期リターンは気まぐれなミスターマーケットに左右されますが、長期リターンを決めるのは企業利益、EPSです(繰り返しですが、買値も重要)。株主利益を左右するのはEPS成長ではなくEPSの累積金額です。そこに配当も加わります。

そりゃ、ベストは成長率も高くかつボラティリティも低い銘柄です。たとえば、マイクロソフトやアルファベットなんて、その条件を満たす企業かもしれません。PERはやや高いですが全然許容範囲内だと思います。

経済が不調の時にどれくらい業績が落ち込むのか。2020年はその試金石の年になりそうです。気が早いですが2020年12月期の財務データ更新が楽しみです。

過去のリセッション時の業績を見ればいいじゃん!って思うかもしれませんが、昔のデータって簡単に取れないんですよ、意外と。あと、やっぱ自分が投資家として経験している時代の業績を見たいです。今のコロナショックの雰囲気をしっかり味わってますし。

アルファベットやフェイスブックといった広告収入依存型の企業って、不況時にどれくらい落ち込むでしょうかね。広告予算は不況時に真っ先に切られます。今、航空会社は広告をほぼすべてストップさせているでしょうし。飲料、食品、日用品、通信はどれくらい粘り強い決算を見せてくれるか。たばこはどうだろうか。やっぱりヘルスケアは盤石かな。

ちなみに、これ最近WSJで発見したデータです。コロナショックの影響で中国の消費(2月)がどれくらい落ち込んだかを示しています。

観光、輸送は大打撃ですね。予想通り、食品や飲料、ヘルスケアの落ち込みは緩慢です(と言ってもかなりの下落率だが)。

気になったのは、もっとも下落率が小さい保険です。これは毎月の保険契約をわざわざ見直さないからでしょうか。保険どうこうというより、サブスクリプション型の企業が強いということかなと個人的に解釈しました。そうだとすると、たとえばアドビは不況期にも強い決算を見せてくれるかもしれませんね。

答えはあと1年後にわかります。投資家としての初めて弱気相場を経験しています。資産が溶けるのが辛いですが、勉強になります。勉強代にしては高過ぎるか。まあ、でもいずれ株価は戻るっしょ!