昨日11月28日はハイテクセクターを中心に米株は全面高でした。S&P500は+2.2%、ハイテクは+3.5%。

深夜1時くらい寝る前はちょい上げていたくらいでしたが、朝起きると暴騰していて驚きました。こういう時、ちょっとスマホでニュースを見るとすぐに情報が入ってくるのが現代の投資環境の素晴らしいところです(悪いところでもありますが)。

んで、WSJによると、ニューヨークの講演でパウエルFRB議長が「現在の政策金利は中立金利を若干下回る」と発言したことを好感したらしいです。金利は良い感じのところまで上がってきた、ここからガンガン利上げはしないよ、とマーケットは受け止めました。パウエル議長の姿勢がややハト派に傾きつつあるようです。

長期金利(10年債利回り)も3.06%から3.01%まで下落しました。
一時3%を割りました。

金利(見通し)が下がると株価は上がります。

なぜか?

割引率(金利)が下がり企業が生み出す将来キャッシュフロー(配当)の割引現在価値が上がるから、と説明されます。ややファイナンス的な説明ですが。

そうです、この説明に異論はありません。

ただ、こうとも思います。

「長期的には株主利益は企業の利益と一致するはずだ。金利が下がったからって、企業の利益は上がるだろうか・・。金利見通しの低下はホントに株式の価値を高めるのだろうか・・」って。

金利が下がることで企業が得することは何か?

借入金利が下がることです。そこは間違いなくプラスです。FRBが政策金利を下げれば、新たに借金する時や、既存借入(特に短期資金)を借り換える時、契約金利は今より下がると期待できます。それは企業の利息負担を減らして利益を押し上げます。

でも、それだけとも言えます。信用力のある企業(マイクロソフトやジョンソン&ジョンソンなど)は、もともと借入金利が低いし、営業利益に占める借入利息の割合なんてごくわずかです。金利が下がって利息がちょっと減ったところで、それほど利益押し上げ効果はありません。

あと、借金してない企業は利息負担はもともとゼロなので金利が上がろうと下がろうと関係ありません。

何が言いたいかというと、パウエル発言でFRBの利上げ見通しが少しばかり下がろうとも、全体として企業の利息負担がそれほど減ることはなく、よって企業利益が大きく上がることもないということです。

企業の利益(配当)がそんなに増えないのに、なぜ金利見通し低下は株価をこれほど押し上げるのか?

最初に戻りますが、将来の利益(配当)はそんなに変わらなくても、割引率が下がるから現在価値たる株価はやっぱり上がるんです。つまり企業利益が変わらなくても、株式の価値は上がるということ。

ん、、でも、それは「株主の利益=企業の利益」が成立しないということか?

いや、やっぱり成立するんですね。

企業利益を名目で考えるのではなく、物価上昇を考慮した実質で考える必要があります。

金利が下がってもそれが企業利益を押し上げる効果がないなら、株価が上がるのは不合理だって思うかもしれません。でもそれは企業利益を名目でしか考えていないからです。

金利が下がることで、企業の名目利益(配当)は変わらなくとも実質利益(配当)は上昇するという期待が高まります(あくまで期待だが)。その期待が株価を押し上げます。なので、金利低下が株価上昇をもたらすのはやっぱり合理的なんです。

結局、政策金利が株式価値に影響を与える一番の要素は、企業の利息負担どうこうではなく期待インフレ率の変化だと思うんです。期待インフレ率変動に伴う実質株主リターンの補正が株価を大きく動かします。

だから、信用リスクが低く利息負担の小さい優良企業であっても、金利変動によって株価は大きく動く可能性があります。それは避けられない。物価調整後の実質リターンをリスクに見合った水準にするために株価は調整されます。ただし、その物価調整は期待値でしかありません。