社会人何年目?って聞かれることがたまにあって、え~っと10年くらいかなっていつも答えてました。今日もとある人から同じことを聞かれて、改めてカウントしてみたらこの4月で12年目に突入していました! もう「若手」とカテゴライズされる時期はさすがに終わりですかね。ここまで長かったようなあっと言う間だったような。

これまでのキャリアは会計監査が3年、上場企業経理が8年(9年目)です。経理は財務会計(投資家向けに有価証券報告書を作る)も管理会計(経営者や事業部向けに収支報告、分析レポートを作る)もどちらもやったことあります。まだまだ勉強足らずな点は多々ありますが、この分野については一通り経験できたかなあと思っています。経理という仕事であれば、別の会社に移ってもすぐに戦力になれる自信があります。

会計監査では監査調書を、経理では有報、短信はもちろんのこと様々な決算分析資料を作ります。取締役会用の財務報告、棚卸資産の推移、勘定科目明細、売上分析、セグメント別PL、地域別PL、その他営業収益費用分析、借入金明細などなど挙げればきりがありません。

これまでの実務経験を踏まえて、経理財務関連の資料を作る上で大切だと思っていることを3つ紹介します。

①網羅性を確認する
②検証可能性を担保する
③単位を資料ニーズによって使い分ける、単位を明記する

①網羅性

網羅性というのは、取ろうとしている情報を漏れなく収集できているということです。これを意識するようになってから資料の作成ミスがかなり減りました。

売上の製品別明細を作る時は、各明細の合計が損益計算書(PL)の売上高と一致していることを確認すべきです。製品明細の合計が99.5億円で、PLの売上高が99.7億円だとしたら、明細が0.2億円相当抜け落ちているということです。

拠点別の在庫残高を集計する時は、その合計値が貸借対照表の棚卸資産と一致していることを確認しなくてはなりません。

明細の合計と損益計算書、貸借対照表が一致するというのは当然ですが、決算などで忙しい中様々な資料を作っていると、この網羅性のチェックが疎かになりがちです。エクセル内にチェック式を入れておくとベターです。

当ブログの米国株銘柄分析で地域別売上やセグメント別売上を紹介していますが、そのデータは各社のForm 10-Kからエクセルに集計してグラフ化しています。各地域、セグメントの合計値がPLの売上高と一致しているかは必ずチェックしています。不一致だと”Error”と表示されるようエクセルに式を組んでいます。なので、よほどボーっと更新してない限りミスは起きないと思います。

網羅性と直接関係はないですが、財務諸表間の関係性を理解できるとさらにミスを減らせます。勘所とも言えますかね。まあ、慣れでしょうか。ここの数字とあそこの数字は整合してなきゃおかしいみたいな。そういうことです。数字の横の繋がりです。

②検証可能性

どういうロジックで数字が集計されているのか容易にトレースできた方がいいです。そうすると上司がチェックし易い、異動で引き継ぎの際に後任の人が理解しやすい、監査法人に説明しやすい、数カ月数年後に資料を見返した時に理解しやすい、といった利点があります。

紙で資料を保存する場合は、アウトプットの数字の根拠資料も合わせてプリントアウトします。また、各資料のフッターには保管先ドライブのアドレスを表示させておくと便利です。

データのみで資料を保存する場合は、値貼り付けはなるべくやめる。数式を追えば元データに辿り着くようにした方がいいです。ただし、重要なアウトプットは数式を切って値化したファイルも残しておいた方が安全です。

会計の役割は数字で業績を説明することです。投資家に直接開示されない資料でも説明できる体制を整えておくことが大切です。業務が人依存にならないためにも、数字の根拠となる資料やデータをしっかり残しておいた方がいいです。

③単位

些細なことですが、すごく重要なのが単位。うちの会社は売上高、時価総額ともに兆円クラスの大企業なので、必然各種レポートの数字も大きくなります。資料に表示させる単位を円か千円か百万円か億円か、あるいはUSDか千USDか、これらを資料ニーズによって使い分ける必要があります。

たとえば、CFOや取締役会に財務報告をする時に円単位で表示しても見にくいだけです。上流の意思決定に携わる人は細かい数字のチェックをしたいのではなく、大まかな自社の業績、これまで進んできた方向を把握して、これから進むべき方向性を判断したいはずです。今期の北米の売上高は28,544,107,532円でしたと取締役に報告するのはナンセンスです。285億円、せいぜい285.4億円で十分です。

これが実務を担う担当者間でやり取りする資料だと、正確に円単位で表示した方が良い場合もあります。1円単位で数字が合っているか確認できるようにしたいからです。

この資料は億円単位、あの資料は千円単位と画一的に決めるのではなく、資料の読み手のニーズに合わせて柔軟に変えることが大切です。一般的に、より高いレベルの意思決定を行う人に提出する資料ほど単位は大きい方がいいです。

私は直属の上司くらいの人に報告する時は結構迷いますね。百万円単位か、それとも億円単位にすべきか。単に報告するだけなら億円単位、一緒に分析を行うための資料なら百万円単位がいいかなあとか自分なりに相手の立場になって考えるようにしています。CFOとか社長に報告する時は迷わず億円単位です。

あと、海外の担当者に資料を送る時は外貨にすべきですね。米国ならUSD、ユーロ圏ならEUR、イギリスならGBP。

んで、もういっちょ付け加えると、きちんと資料に単位を明記することです。「億円」とか「Million USD」とか、使っている単位を書かないと相手は不安になります。単位を書かなくても、なんとなくわかることが多いです。でも、ちゃんと書いた方が親切です。

私は監査法人時代に監査調書に単位を書き忘れていたことがよくあって、しょっちゅうマネージャーに怒られてました。怒られないために単位を忘れないようにしてましたw。その甲斐もあって、今では単位の入力忘れはほぼ無くなりました。