投資アプリSeeking Alphaからこんなニュースが届きました。

“Pfizer Might Cut Its Dividend”

ファイザーが減配するかもしれないというタイトル。英語の長文だったので読んでませんが、私は株主として気になるところ。自分で財務データを確認して減配リスクの程度を検証してみました。

最初に言っておきますが、仮にファイザーが減配するとしても業績悪化が原因ではありません。最近、特許切れ医薬品部門をスピンオフしてマイランと統合すると発表しました。事業分割(新設分割)です。後発医薬品事業が生み出すキャッシュフローが消失するわけだから、ファイザーがこれまでの配当水準を維持するのがしんどくなるのは当然のこと。気になるのは、それが減配するほどなのかってことね。ファイザー株主はマイランとの合弁新会社からも配当を貰える訳だし、ファイザー本体が多少減配してもそれしゃーないと思った方がいいです。

という前置きはしたうえで、ファイザーの配当余力を数字で検証します。こういう時は配当性向(純利益と配当の関係)よりも、フリーキャッシュフローと配当の関係を重視します。純利益は一時的な要因でブレるからです。特に最近は米国では税制改革があったし、ファイザーはM&Aが多いから特殊要因がよく生じますし。

ファイザーの後発薬部門は意外と大きい。
確かに減配リスクはあるな・・

というわけで、過去5年のファイザーのフリーCFと配当総額を並べました。

(Source:ファイザー Form 10-K)

うん、まあ余裕ありますね。平均して毎年140億ドルほどのフリーCFを生み出して、うち配当に回しているのは70億ドル強。フリーCFに対する配当性向は50%~60%ほど。

現状のままだと減配リスクなんて全くありません。ただ、今回はここから後発医薬品事業が生み出すフリーCFが消えることになります。その影響はどのくらいなのか。ここはちょっと推測が必要かな。IR情報をしっかり読めば書いてるかもしれないけど・・。

企業は10Kレポートの中でセグメント別損益を開示しています。これは法律の要請なので強制です。ただ、セグメント別キャッシュフローは開示していません。作るのが難しいのもあって。うちの会社も試みたことありますが、未だにセグメント別キャッシュフローの正確な数字は経営陣に報告できていません。PLで精一杯。

なのでファイザーのセグメント別PLをチェックします。全体のうち後発医薬品事業がどれくらいを占めるのか確認するために。

ファイザーは事業を以下の二つに区分しています。
・IH(Innovative Health)
・EH(Essential Health)

今回、分割するのは後者のEHです。IHとEHのセグメント利益の推移を見てみましょう。

(単位:百万ドル)

(Source:ファイザー Form 10-K)

さすがにIH(新薬部門)の方が割合が大きいけど、EH(後発薬)も無視できる規模ではありません。全体の1/3を占めるほどです。思ったより大きいなあ。このオレンジ色部分が丸っとファイザーから切り離されて、マイランと統合されるわけです。

なるほど、確かにインパクトは大きい。営業利益の1/3を事業分割で失えば、分割元であるファイザーの営業CF、フリーCFも1/3くらい減ると想定すべきでしょう。

フリーCFを1/3失っても配当を維持できるか?

FY18をベースに分割後の(想定)フリーCFと配当を並べてみます。左が実際の数字、右が分割後想定(フリーCFの1/3を失う)。

ギリギリやな~。フリーCFの1/3を失っても何とか現状の配当水準を維持できそうだけど、余裕はない。

確かにファイザーが減配する可能性はありそうです。ただ繰り返しですが、現ファイザー株主にはマイランとの合弁新会社の株式が付与され、そこから新たに配当を貰えます。ファイザー本体の配当が多少減ってもやむなしです。

まあ理由はどうあれ減配は嫌なのが本音なので、できればファイザーには頑張ってもらいたい。保有株の中ではシュルンベルジェ、アルトリアなどの減配を心配してきましたが、まさかのファイザーが初減配銘柄となるかも。

こういう合理的な理由があったとしても、減配のニュースが流れれば株価には悪影響だろうな~。最近、構成比が減ってきたファイザーへの追加投資を検討していますが、配当ガイダンスが出るまで待とうかな。もし減配で株価が下がることがあれば、すかさず拾っていきたいです。