先日、ファイナンスに関する某書籍をドトールで読んでいて、コーヒー吹き出しそうになるくらい驚きの文章を読んでしまいました。一橋大学教授が書かれている書籍です。
そこにはペイアウトの意思決定として、こんな主旨のことが書かれていました。
配当金は、すべての株主に「広く薄く」資金を還元する。
自社株買いは、特定の株主に「狭く厚く」資金を還元する。
これは「えっ」て思いましたね。
これは違いますよね!
自社株買い=EPS濃縮化
確かにお金の動きだけを見れば、自社株買いは自社株買いに応じて市場で売却してくれた株主だけに資金が還元されます。しかし、自社株買いに応じた株主だけに利益が還元されているわけではありません。
自社株買いをすることで、企業の発行済み株式数が実質的に減少(償却すれば正式に減少)することで一株当たり利益(EPS)が増加することで株主に利益を還元します。
EPSが上昇すればそれをマーケットが織り込んで通常は株価が上昇します。
株価が上昇することで、自社株買いに応じた人だけでなくすべての株主に広く恩恵があります。
むしろ、自社株買いはストックオプション保有者にも恩恵がある点で配当金よりも範囲が広いくらいです。
ストックオプションを発行することで潜在株主が誕生することを、EPSの希薄化と表現します。
この表現を借りるとすれば、自社株買いとはEPSの濃縮化です。
利益自体が増えなくても、パイ自体が増えなくても、一人当たりの取り分が増えれば株主もハッピーということです。
何もピザ自体をどんどん大きくして余計なトッピングを付けていくことがすべてではないのです。今まで8等分だったピザを4等分にすることでもお腹いっぱいになれるということです。
自社株買いが特定の株主への還元というのは、完全に間違いです。
自分が保有している銘柄で自社株買いが発表されたら、あなたも喜んでいいということです。
米国企業は自社株買いを積極的に実施することで、株主利益に貢献しようとしている企業が多くあります。
最近だと2016年9月20日にマイクロソフト(MSFT)が400億ドルの自社株買い計画を発表しました。
当然わかっているとは思うが…
当たり前ですが、一橋大学教授が自社株買いが特定の株主のみへの利益還元と本当に思っているはずがありません。
表現の問題だとは思いますよ。
自社株買いは特定の株主に「狭く厚く」資金が還元される、という表現ですが、資金自体が還元されるのは特定の株主なのは事実です。だって、自社株買いに応じた特定の株主のみに株の売却代金を支払うのはその通りですからね。
でも、そこは自社株買いの本質ではないです。
確かに資金が還元されるのは特定の株主のみですが、利益が還元されるのはすべての株主です。
繰り返しで恐縮ですが、自社株買いとはEPSの濃縮化であってすべての株主に恩恵がある資本政策です。