上院共和党でヘルスケア法案(オバマケア代替案)の採決が7月17日に見送りとなりました。過半数の賛成票を取れる見込みがなくなったからです。上院議席数100のうち共和党の議席数は52です。2人離反者が出ればもうアウトです。

ヘルスケア法案では苦渋を味わったトランプ大統領、共和党ですが、法人減税には一致団結して臨む姿勢です。法人減税が実現すれば30年越しの快挙です。

そもそもヘルスケア法案を先に審議していたことすら、法人減税に向けた布石でした。医療費予算を抑制することで、法人減税の議論を円滑に進めたいという共和党の目論見がありました。

ヘルスケア法案はダメでしたが、法人税改革の方がトランプ大統領最大の目玉公約です。

トランプ大統領の政策実現に対するマーケットの期待はだいぶ薄らいでいて、最近の好調な株価は純粋に企業業績を反映してのものだろうなという印象です。今マーケットがどれだけ将来の減税期待を織り込んでいるのか検討も付きません。ですが、仮に法人減税が破断すれば株価は下落することになるでしょう。

ところで、そもそもの話ですが、なぜ法人税を減税すると株価が上がるのでしょうか?

それは減税によって将来の税引後利益が増えると期待されるからですね。税引後利益が増えるってことは、その分配当原資が増えてDPSも増加すると期待されます。だから、減税期待で株価が上がります。

トランプ大統領の法人減税策が、各個別企業に与える影響は様々です。もちろん、法人税率を下げるんだからどの企業にもポジティブなわけですが、恩恵の程度は各社様々です。

アップルやファイザーなど海外に資金を多く持っているIT会社や大手製薬メーカーは、海外利益が課税対象外になるかどうかに強い関心があります。

エクソンモービルなどの石油・ガス会社は、掘削費を減価償却せずに発生年度に即時損金化できる優遇税制の存続に強い関心があります。

ウォルマートやターゲット、ナイキなどの小売り企業は、国境調整税が廃案になるか否かに強い関心があります。国境調整税は輸出業者優遇の制度です。これはかなり分かりにくい制度だとトランプ大統領も批判していました。私は詳細までは知りませんがね。

このように、税制改正と一言でいっても各個別企業に与える影響は様々であり、各企業の株主は自分が投資している銘柄にどれほど影響があるのか見定める必要があります。法人税率低下そのものよりも、特定の優遇税制が存続するか否かにマーケットが反応する可能性が十分あります。

一方で、S&P500ETFなどインデックスに投資している人は、そんな細かな税制まで把握しておく必要性は薄いです。インデックス投資家が寄せるべき関心は法人減税案が可決するかどうかだけでよいです。シンプルです。

これがインデックス投資のいいところの一つだと思っています。税制変更など外部環境の変化が自分の財布に与える影響を比較的シンプルに考えることができます。

法人減税で企業利益は上昇して株主は得をします。
株主は追加で利益をゲットできます。

でも、普通に考えて欲しいのは無から有は生まれないということです、少なくとも短期的には。
法人税改革で政府がやることは、あくまで富の再配分です。政府が追加で国富を創造するわけではありません。

法人減税は(短期的には)ゼロサムゲームです。

法人減税で株主=資本家が得をする反面、損をする人が必ずいます。
それを具体的に詰めて利害調整するのが政治の仕事です。
フードスタンプやメディケイド予算の削減によって、貧困層が割を食うと言われています。また、高所得層や個人事業主の優遇税制を廃止するとも言われます。

とにかく、米国企業の株主が得をする分、その見合いの損を被る人がいるのは間違いないことです。

ざっくり言えば、法人減税とは消費者から資本家への所得移転だと言えます。

消費者、資本家って言いますけど、具体的に誰ですか?
あなたはそれに含まれます?

 

 

 

言ったはずだぞ 国とは”人”なのだと!!!

私の個人的な考え方なんですが、税制やらの政策議論がなされている時は、「結局、それで得をするのは誰なのか」ということに考えを巡らせた方が議論を理解しやすいと思います。

言葉って便利です。地球上には70億人以上の人が生きています。それぞれ自分の与えられた環境で自分なりの人生を生きています。

みんな自分のことが可愛くて仕方ありません。自分の利益優先です。自分と家族が生き延びることが最優先。自分と家族が周りよりも良い生活環境を享受できることが大事なことです。この世の中は、70億人の願望・欲望が渦巻いています。だから戦争なんていう悲しいことが起こるのでしょう。

そんなウン十億人の利益を調整するのが、各国の政府です。国家 対 国家という利害調整もあるし、国家内での利害調整もあります。限られた富をどこにどれだけ配分するかというリソースの配分が政府の仕事だと言えます。

そういう利害調整の議論をする時に、各個人の都合まで考えていたら話は全くまとまりません。トランプ大統領やイエレン議長が、米国内の個別の家庭事情まで勘案するわけにはいかないのです。

だから特定の言葉を使って、ある程度似たものをグルーピング化します。利害関係が似た集団を一つの言葉で一緒くたにまとめてしまう。そうすると便利です。

ビジネスをして商品やサービスを提供する側のことをひとまとめに、「企業」とか「生産者」とか「資本家」と呼びます。

商品やサービスの提供を受ける側をひとまとめに、「消費者」や「市民」などと呼びます。

普段の生活で欠かせない飲食物や日用品を作っている企業群を「生活必需品セクター」などと呼びます。

こういう言葉って便利なんですよ。
当たり前に使っている言葉だと思いますが、こういう言葉があるから円滑にコミュニケーションできて意思疎通ができます。

私達は日々の生活の中で、無意識的に母国の言葉に縛られて生きています。人は存在する言葉の範囲でしか物事を考えることができません。青色は「」という言葉が存在するから認識できるんです。言葉がない色だと「濃い青」、「薄い青」とかで無理矢理表現するしかなくなります。

人は、国に住むのではない。国語に住むのだ。
『国語』こそが、我々の『祖国』だ。

メタルギアソリッド5より

 

特定の集団をグルーピングした言葉使うと議論が進めやすくて便利なんですが、ちょっと気を付けるべきことがあります。

それは最終的に誰に影響するのかが見えにくいということです。

法人減税は「企業」「資本家」にとって利益があると言われても、具体的に誰にどれだけ利益があるのかわかりません。

結局、最後は人なんです。この地球には70億人以上の人がいます。人こそが物語の主人公です。企業とか政府とか国家とか、そういうのは概念的なものでしかありません。企業や消費者という言葉の裏には、具体的な人が大勢いるわけです。

グルーピング化して議論を進めるのは良いのですが、最後は「人」に結び付ける必要があります。

…”反乱軍”に この宮殿を落とされるから何だというのだ…!!!
言ったはずだぞ 国とは”人”なのだと!!!

漫画「ワンピース」より、アラバスタ王国ネフェルタリ国王の言葉

漫画ワンピースってたくさん感動シーンや名言がありますが、個人的にナンバーワンはこれ。
(まあ最近のは読んでないですがね。)

ストーリーとしても感動したし、このネフェルタリ国王の(尾田先生の)考え方がめちゃくちゃ勉強になった。

これ、中学生くらいだったかな、読んでて「おお、なるほど!」ってめっちゃ感動したのを今でもはっきり覚えています。何度も何度も何度も読み返しました。

「国とは人」、、確かにその通りだ!
国とは豪華な宮殿ではない、国とは国民であり人であると。

クロコダイルにアラバスタ王国の宮殿や建物がぶっ壊されてもいいではないか、国民の命さえあれば!
人が生き残れば、国も生き延びる!
人さえ生き残れば、国は再生するんだ!

そう、国とは人ですよね。
日本=日本に住む人ですよね。

東京タワーが、平等院鳳凰堂が、姫路城が、厳島神社がぶっ壊れも最悪いいではないか、国民が無事なら。人が生きている限り国は存続する。国とは人なんだぞ!!!
それを体現したのが戦後の日本ではないでしょうか。

ああ、マジで尾田先生超カッコイイ。憧れる。子供の頃たくさん感動をもらいました。
漫画とかゲームって馬鹿にできないってホントに思う。

国家、政府、企業、家計とか色んな表現がありますが、すべて人ですよね。

私はワンピースのこの巻を読んでからは、常に「国とは人」「消費者とは人」「政府とは人」ということを意識して考えるようになりました。ワンピースから学びました。

 

 

 

トランプ法人減税の話に戻ります。

法人減税は消費者から資本家への富の移転です。
ゼロサムゲームです。
企業が得した分、消費者が損します。

で、ここでアラバスタ王国のネフェルタリ国王のお言葉を(尾田先生のお言葉を)思い出して欲しいです。

「言ったはずだぞ、国とは人なのだと!!!」

「言ったはずだぞ、資本家とは人なのだと!!!」
「言ったはずだぞ、消費者とは人なのだと!!!」

法人減税で得するのは資本家って言いますが、具体的に誰ですか?
法人減税で損をするのは消費者だって言いますが、具体的に誰ですか?

具体的に誰の利害に影響するのかまで考えないと、意味ないと思いませんか??

実は、意外にそうでもないんです。
ここまで言っておいて何ですが。

そんな深く、具体的に誰に影響するかまで考えなくていいケースもあります。
具体的に誰に影響するかまで考える必要があるケースもあります。

ケースバイケースです。

「資本家」にとってプラスの影響があるって分かれば、それでよしの人もいます。
いやいやそれじゃダメで、「資本家」の中でも具体的に誰にプラスの影響があるのか知る必要があるって場合もあります。

インデックス投資家は前者です。インデックス投資をしている限り、政策変更などの影響が資本家全体にどう影響するかだけを考えればそれでOKです。インデックス投資家は個別企業の株主に与える影響なんて考える必要はありません。全体に薄く広く投資しているのですから。

個別株投資家は後者です。税制改正が資本家にプラスの影響があるのはいいけど、各個別企業の税金費用にどれほどの影響があるのかまで気になるところです。

インデックス投資はこういう点がシンプルでいいですよね~。
物事を鳥瞰的に捉えることで事足りるケースが多いです。

法人減税が具体的にどう決定されるかまだわかりません。ですが、インデックス投資家は税制改革内容を時間かけて調べる必要性は薄いと思いますよ。法人減税が「資本家」の利益にプラスなのは確実ですから。

ただただ減税案が可決されるのを祈るのみ。