ボーナス金額に反映される毎年の人事評価は、部長を始め各部門の管理職で議論されて決定します。その後、人事部の承認を経ます。そこで覆されることはないですが。

ただし、役員は違います。役員の評価方法はブラックボックスです。人事部すら詳細は知りません。もちろん役員の口座にいくら振り込まれているかは把握していますが、どういう基準でその金額が算定されているかは知りません。恐らく人事部長クラスでも知らないはず。

では、どこが役員の人事評価を牛耳っているのか。うちの会社の場合、報酬委員会のような組織があって、そこが役員の報酬を決めています。一定の算定ルールがあります。

先日ですね、とある業務上の都合でその報酬委員会の人と仕事をすることがあり、役員の報酬算定基準の一部を見ることができました。全部は見れませんでしたが。一部だけです。

その評価基準の一つにEPSがあったんです。EPSとは一株当たり利益ですね、お馴染みの。これを知って僕はちょっと安心しました。「そっか、さすがに役員クラスとなるとEPSがボーナス査定の基準になるのか~」と。

なぜ安心するかと言えば、EPSが評価基準になっているということは、役員と株主の利害が概ね一致するからです。EPSが上がれば普通は株価も上がるから株主はハッピー。経営陣も役員賞与が増えてハッピー。Win-Winです。

役員ではない従業員(事業部トップクラスでも)が、EPSで評価されることは先ずありません。従業員が一株当たりの数値を気にする場面はありません。

米国企業はストックオプションをたくさん付与することで、経営陣と株主を同じ船に乗せようとします。ストックオプションで経営者と株主の利害が完全一致するわけではありませんが、効果はかなりあります。株価が上がればみんなハッピーというわけです。

うちの企業も役員にストックオプションは付与されていますが、そんなに多くはないです。株式報酬制度が作られてから10年も経ってないはず。なので、米国企業の経営陣ほど「何としても株価を上げたい!」というインセンティブは働きません。

しかし、EPSが役員賞与の算出基準になっていることが、少ないストックオプションを補完しています。株価を上げたいという発想よりも、EPSを向上させたいという発想の方が健全ですし。株価はマーケットの心理状況に左右される面もありますから。

うちの会社は毎年そこそこ自社株買いをしてます。キャッシュリッチな割に配当は少なめだから、自社株買いは良いことだなと私は思ってました。役員の人事評価にEPSがあれば、そりゃ自社株買いしたくもなります。株式数が減ればEPSは上がります。自社株買いで株価が上がって、株主も喜んでると思います。

常に自社株買いが善と思っているわけではありませんが、投資の効率性を厳しく見極めてEPSを向上させていく必要があります。自社株買いで株式数を減らしてEPSを増やす、という選択肢は常にあってよいものだと思います。

役員の評価基準にEPSがあるからって、毎年自社株買いをしているわけではないと思います。が、まあとにもかくにも、EPSが役員の人事評価基準の一つになっているのは、うちの株主にとって良いことだなと思いました。

ま、僕は自社株を1株も持ってないので、ぶっちゃけどうでもいいんですけどね(笑)。株主利益を守る立場の経理部として、ちょっと安心したということです。