※2018年3月期決算データ反映、BSデータ追加、コメント刷新

S&P100構成銘柄を中心に米国企業の業績、財政状態、キャッシュフロー、株主還元状況について過去10年分のデータをグラフ化しています。

データソースはMorningstarです。

今回はナショナル・グリッド(NGG)をご紹介します。NGGは英国に本社を置く送電ガス会社で、ADRとしてニューヨークに上場しています。

    NGG財務情報

基本情報

会社名 ナショナル・グリッド
ティッカー NGG
創業 1990年
上場 1995年
決算 3月
本社所在地 英国・イングランド
従業員数 約25,000
セクター 公益事業
S&P格付 未調査
監査法人 未調査
ダウ30 ×
S&P100 ×
S&P500 ×
ナスダック100 ×
ラッセル1000 ×

 

地域別売上構成比

 

セグメント別売上構成比

 

業績

 

キャッシュフロー

 

バランスシート

資産

負債純資産

 

株主還元

この記事を読むともっとこのグラフを理解できます!

 

過去9年間の配当成長

年率+2.5%

この9年間で配当は1.24倍になりました。

 

バリュエーション指標(2018/9/28時点)

PER:7.6倍 最新情報はこちら

配当利回り:8.0%(※) 最新情報はこちら

(※)FY17は英国ガス事業譲渡収入を原資とする特別配当があったため、このような高い利回りが算出されていると思われます。普通配当だけの利回りはもっと低いはずなのでご留意ください。

 

感想

ナショナル・グリッド(NGG)は、英国イングランドに本社を持つ電力ガス会社です。英国だけでなく米国でも事業を行っています。

英国電力事業では、イングランドとウェールズに送電網を所有しており、7200キロに及ぶ架空線と1500キロの地下ケーブルを保有しています。英国ガス配給事業では、7500キロ以上に及ぶ高圧パイプを配置し英国全土にガスを供給しています。

英国のインフラ企業でありながら米国でも事業を行っており、電力とガスを供給しています。ニューヨーク、マサチューセッツ州、ロードアイランド州の家庭や企業に電力を供給しています。ニューヨークなど北東アメリカにガス流通ネットワークを所有し、約360万の顧客にガスを供給しています。売上高ベースでは本拠地英国よりも米国の方が大きいくらいです。

2016年に、ロンドン北部など1100万人へのガス供給事業の持分61%を中国の投資家グループに売却しました。この持分譲渡による特別利益40億ポンドは、特別配当と自社株買いで株主に還元されました。なお、NGGは依然として英国ガス供給事業の39%の持ち分を保有しています。NGGにとって2016年度は、英国でのガス供給という重要事業の過半数持分を譲渡した節目の年となりました。

財務データを確認しましょう。

売上高はFY08以降、約140億~150億ポンドで横ばいです。電力ガスという公益事業ということもあって収入は安定しています。FY16に純利益とEPSが突出して増加していますが、これは英国ガス事業の持分譲渡益による一時的なものです。

FY17はわずかに増収となりました。イギリスの電力事業が減収となりましたが、米国事業の伸びが貢献し全体として増収でした。ドル安ポンド高であったことを考えると、米国事業の伸長は見た目以上だったと言えそうです。

FY17の純利益は実質的には前年比プラスです。前述の通りFY16の純利益には事業譲渡益が含まれています。当該影響を除けばFY17は増益決算です。特に米国事業の利益が大きく伸びていました。

営業CFは毎期安定しており、営業CFマージンは30%と非常に高水準です。フリーCFはやや少ないですが、インフラ事業で常に一定の設備投資が必要なためです。公益セクターはフリーCFがマイナスになっている企業もたまに見かけますが、NGGはプラスを維持できています。

バランスシートを見てみましょう。総資産の7割は工場設備等の有形固定資産で、「のれん」が1割を占めます。自己資本比率は32%。英国ガス事業の譲渡収入をきちんと株主に還元しているため、無駄に自己資本が膨らんでいないところが評価できます。

配当ですが、特別配当はDPSに反映されていません。あくまで普通配当のみの推移です。FY17はグラフ上は配当が伸びていませんが、ガス事業譲渡収入を特別配当として還元しており、実際の配当総額はFY16の2.5倍ほどありました。FY17に配当性向が急伸しているのは、特別配当も織り込んでいるためです。FY17は特別配当だけでなく自社株買いも10億ポンドほど実施しています。

ちょっと余談ですが、NGGのアニュアルレポートを見ると、とても明るくて活気のある素敵な企業だなと感じました。「こんな会社で働きたいな~」って思いました。