借金に対して良いイメージを持っている人は少ないと思います。ビジネスでもなるべく借金はしない方がいいし、個人が遊びで金を借りるなんて言語道断という感じですよね。

借金=悪というのが世間一般の認識でしょうか。私はそこまでは思ってませんが、借金はあまり好きではないです。今まで借りたことがあるのは、クレジットカードの短期債務と奨学金くらいです。低利の住宅ローンはちょっと良いなあと思う時はありますが、基本は借金嫌いです。

借金は忌み嫌れがちですが、借金を否定することはお金を否定することと同義です。なぜなら、現代のお金は信用貨幣だからです。世の中に出回っているお金の量=借金の量と言えます。

あなたの財布に入っている1万円札、これも出元を辿っていけば必ず誰かの借金に行き着きます。別の視点で言うと、どこかの銀行の貸出金に紐づきます。

信用通貨は必ず誰かのバランスシートの負債になっています。ビットコインは誰の負債でもないので、信用通貨とは言えません。

しかし、コロナ禍の今、世の中から信用通貨としてのお金が消え去ろうとしているように感じます。完全に消えるわけじゃないけど、少なくなっている。アメリカ政府は週600ドルの追加の失業給付を含む2兆ドル規模の財政出動を行いました。今後その規模はさらに増える見通しです。

そうやってばらまかれたお金はもはや信用通貨とは言えないと思います。確かに、政府のバランスシートに負債として計上されるかもしれないけど、実質的には信用ではない。銀行が信用を調査してお金を貸し出して、世の中のマネー量が増えるのとはわけが違います。信用貨幣ではなく商品貨幣に近い。

私はこれが一時的な現象ではなく、長期的な趨勢なのかなと見ています。

NY市場を牽引するハイテクの優良企業、アップルやマイクロソフト、アルファベット、フェイスブックはほとんど借金してません。保有現金とネットすれば実質無借金の会社も多いです。

借金をして他人の労働力(資本)を買わずとも、自社の有能な社員の頭脳が生み出す価値で企業が大きくなります。商品を低コストで複製しやすくなっています。個人でYouTubeやブログを始める時もほとんど資本を使わずにやれます。ユーチューバーになるために借金する人はいないでしょう。

そうすると世の中の債務(借金)は減っていきます。借金が減れば、世の中のマネー流通量が減ります。しかし、私たちの経済活動の規模は縮小しません。お金を使って社会から商品、サービスを買って豊かな生活をしたいと思います。

そうなると、どこかがマネーを供給しなくてはなりません。じゃないとデフレになっちゃいます。デフレは最悪です。

どこが供給する?

政府です。それしか考えられない。MMT的、ベーシック・インカム的な発想です。コロナ禍であれだけ財政出動しても、少なくとも今のところは急激なインフレは起きていません(食品価格はやや上がってるみたいだけど)。それは、失業者が増えても供給面に大きな障害がないからだと思います。工場や道路が壊される戦争とは違いますし、今回の件は。

紙幣を刷ってもインフレが起きないのは、社会が豊かになった証でもあると思います。

企業の借金がゼロになることはあり得ないし、個人では住宅ローンや学資ローンは引き続き必要とされるでしょう。信用通貨としてのお金が消えることはない。ただ、段々とその量は減っていくだろうと予想しています。

そうすると信用通貨を供給する役割を担っている商業銀行の未来はどうなるのでしょうか?

銀行株は低PERで長期的な「バリュー」があるように見えます。バフェットも銀行株に引き続きbetしています。

私はと言えば、ウェルズファーゴ(WFC)を売るかホールドか悩んでいます。減配したから売りたいというのもありますが、この記事で書いた長期的な懸念も理由の一つです。ただ、考え過ぎの可能性も大いにあると思っています。あと、そういうマイナス面を考慮してもなお割安であれば株は儲かりますし。

石油の未来よりも銀行の未来の方が気になる今日この頃です。