日米欧の先進国は低インフレに悩まされています。日本は2012年から黒田氏が日銀総裁に就任して「大胆な金融緩和」を宣言し、インフレ率2%実現させようとしました。
しかし、日本はデフレこそ脱却したもののインフレ率は低位で推移したままです。それは必ずしも悪いことではないかもしれませんが、兎にも角にも「大胆な金融緩和」にもかかわらず物価が大して上がっていないという事実はあります。
米国も一緒です。サブプライムローンによる金融危機以降、FRBは不動産ローン担保証券などを買い取って、資金を大量に供給してきました。それが2010年代の米国株の独り勝ちをもたらしたのかもしれませんが、やはりインフレ率は低いままです。
低インフレを反映して世界の国債利回りも低下しました。日本、ドイツの10年債はマイナス利回り、米国債の利回りも僅か1.7%です。「GDP比〇〇%の債務を抱えており、財政は極めて悪化している!」などとしばしば警鐘が鳴らされます。
では、なぜ金利は低いのでしょうか? 財政悪化と低金利はとても両立するとは思えません。企業の財務内容が悪化すれば信用格付けが下がって調達金利は上がりますよね。なぜ、国家にそれが起こらないのでしょうか。財政が悪化しているように見えて、実際はそうではないのかもしれません。少なくとも債券投資家はそう評価しているようです。
なんちゅう議論の果てに、MMT(現代貨幣理論)が俎上にのるようになったんだろうと私は考えています。これはつまり金融政策から財政政策への転換ということです。
(量的)金融政策と財政政策って何が違うのでしょうか。私はマクロ経済は全くもって専門ではありませんが、自分が普段考えていることを書いてみようと思います。間違ったこと言ってたらすみません。
金融緩和はお年玉
金利ではなく貨幣量をコントロールする金融政策を念頭に置きます。
金融緩和とはお年玉みたいなもんです。
子どもの頃、お年玉もらったらどうしてましたか。私は一つ好きなものを買って、後は貯金という名目で親に没収されていました。平均4万円貰っていたので、1万円弱のゲームソフトを1本買って残りの3万円は貯金(没収)でした。
お年玉(お金)はどう使うかは本人の自由です。お金が腐ることはありません。お札をそのままポーチに入れたままでもいいし、ゲーム買うでもお菓子買うでも良いです。使い道は本人の自由。
財政出動はお食事券
一方で、財政政策(財政出動)とは叙々苑の食事券を配るようなものです。ただし、金券ショップでの換金、他人への売却は無しとします。
そうすると、焼肉食べるしかないです。食事券をそのまま取っておいても仕方ありません。週末とかの都合が良い時に叙々苑に焼肉食べに行くことでしょう。
もし食事券をもらった人が焼肉嫌いの人だったらどうでしょうか。転売は不可ですから、何とか自分で使うしかないです。せっかくただ飯できるんだから、お肉が嫌いでもビールとナムル、キムチだけでも食べに行こうってな感じでしょうかね。
財政政策は資金使途の決まった金融政策
お年玉(金融政策)も食事券(財政政策)もどちらも財産的価値があるものを配布している点は共通です。違うのはお年玉は使わずに貯金する選択肢があるけど、お食事券は使うことがほぼ確定していることです。
つまり、財政政策とは資金使途の決まった金融政策だと解釈しています。両者はパラレルに存在するものというよりは、財政政策は広い意味での金融政策です。
金利を下げて、お金を銀行にドンドン積み上げても、一向に経済にお金が出回らない。んなら、もう直接経済にお金をぶち込んでやろうというのが財政出動だと理解しています。その際にお金が新たに刷られるわけですから、財政政策は金融政策を伴います。
そうやって貨幣の流通量が増えれば、ついに物価は上昇するでしょう。貨幣の量が増えて貨幣の希少価値が下がれば、その見合いとして物価は上がります。通貨価値と物価はコインの裏表です。
でも、財政政策にはリスクもあります。焼肉嫌いな人に叙々苑のお食事券をあげちゃうリスクです。食事券もらっても嬉しくないでしょう。嫌々使うことになるでしょうから。そんなことして幸福度が上がるとは思えません。
お金を流通させるためとは言え、必要のない施設やイベントにお金が使われてしまっては本末転倒です。いや、それでも無理矢理にでもお金を回すことが経済にとってプラスなのでしょうか。その辺はよくわかりません。でも感覚的に自然に考えて、不要な建造物などに資源を投入して国民経済が改善するとは思えません。
お金をあげて好きなものに使ってもらうのが理想(金融政策=お年玉)。でも、いくらお金を与えてもみんな倹約して使いやしないから、政府の判断で資金使途を決めた上でお金をあげる(財政政策=お食事券)。とこんな感じで理解してます。
なんか色々考えちゃいます。日本経済の未来を案じて、ではありません。自分の投資資産を案じて、です。今後の日米のインフレ率がどうなるのか興味があります。それによって投資戦略が大きく変わることはないですが、今後10年の(実質)投資リターンに甚大な影響があります。
低金利が常態化した2010年代。果たして2020年代は金利、インフレ率は上がるのでしょうか。未来はわかりませんね。
ふと思ったのですが、Hiroさんの在籍していた監査法人は株式等を所有することが認められていたのでしょうか??
監査法人時代は投資をやっていなかったので詳細には調べてはおりませんが、クライアントの株を買うのはさすがにタブーだと思います。
狭い業界で色んな情報が入ってきますから、監査法人に在籍している限りは日本個別株は控えるべきでしょうかね。
インデックスが無難だと思います。
ヒロさんに質問なんですが、MMTについてどう思いますか?
自分は最初は懐疑的に見てましたが、どうやらMMTは真実のようです。
その、貨幣信用(借用証書)論やスペンディングファースト(政府支出が最初にあり、それにより資産の総量が増える)といった概念は、MMT肯定派の言うとおりまさにコペルニクス的転回だと思います。
ランダルレイのMMTの約本は、株式投資の未来と同じか、あるいはそれ以上にこの世の真理を語っているのかと思いますが、自分はケチなんで、3700円をだし惜しみしてだ読んでません
私の意見としては、MMTは理論的には正しいけど、実務的に可能かどうかは疑問というものです。
MMTは分厚い専門書もありますが(読んだことない)、要は財政政策だと解釈しています。
債務は拡大しておりいつかクラッシュすると言われますが、現在の低金利はその意見と矛盾します。
私は人の見解よりマーケットの総意を信用したいです。
つまり、まだマネーを供給する余地があると思っています。
この低金利低インフレの時にマネーの流通量を減らす日本の消費増税なんて言語道断です。超悪策だと思います。
MMTに反対する人はインフレに歯止めが利かなくと主張しますが、これは私もMMTのリスクだと思います。
実体験はありませんが、インフレは一度進むとなかなか抑制できないと聞きます。
MMTは債務水準を適正なインフレ率でコントロールしようという発想だと理解していますが、それが現実的に可能なのかは疑問ではあります。
ご回答ありがとうございます。
私もヒロさんのご見解とほぼ同じように考えています。
プライマリーバランスではなくインフレ率の財政制約の元で、うまくインフレ率をコントロールできている状態のまま、財政支出あるいは徴税(デフレ化では減税)できるか、それは一部のエリートが主導するか国民主権による政治家が主導するのか、自分はエリート主導主義ですが、それ以上にインフレ原理主義過激派であります。デフレは万病の基だと考えています。
今の日本には20年以上のデフレに対するインフレ2%以上のオーバーシュートが必要だと考えています。
ご返信ありがとうございます。
個人の借金と国家の借金を混同してはいけませんよね。
私もプライマリーバランスを基準に債務水準を決めるのは間違いだと思います。
ただ、インフレをコントロールできるものなのかは、やはりよくわかりません。
生まれてこの方、デフレないし低インフレの世の中だったので、インフレ高進の怖さを身を以って知らないのが大きいと思っています。
金融緩和で増えるのは日銀当座預金(マネタリーベース)。
財政出動で増えるのはいわゆる預金(マネーストック)。
マネタリーベースがいくら増えても、我々の預金は増えません。
このあたりの話を詳しく説明してくれるのがMMTです。
ありがとうございます。
はい、量的金融緩和は銀行の日銀残高が増えるのみ、財政出動は市中経済のマネー量が増える、とざっくり理解しています。
時間ある時に一冊くらい読んでみたいと思います。