シーゲル教授は、20世紀後半に最も高リターンな銘柄はフィリップモリスだったという事実を明らかにしました。
やっぱり、たばこ銘柄はこれからも強いと思います。強いっていうのは企業の成長が著しいという意味ではなく、株主リターンが高いという意味でです。
過大な設備投資が不要で、稼いだお金をジャンジャン株主に返還する企業の株を長期で保有して、配当再投資を繰り返すこと。これが長期投資で最も高いリターンを得る方法だと思います。
ハイテク銘柄のように成長著しくはないけど、地味に自社株買いや増配を続ける会社ってミーハーな”いけてる”個人投資家の目に止まらないので、株価も無駄に高騰しない傾向にあります。だからこその高配当利回りなわけですが。
だから、米国個別株への投資をされている方はフィリップモリス株やアルトリア株を積極的に買われるといいと思います。もちろん1銘柄がポートフォリオの大半を占めることがない様にする必要はありますが。
さて、アルトリア・グループは2003年にフィリップモリスから名称変更した会社です。フィリップモリスが米国外のマーケットを担当しているのに対して、アルトリアは米国マーケットを担っています。
アルトリアは配当利回りも3.5%近くある高配当銘柄です。稼いだ金をガンガン株主に還元している超優良企業です。
最近は株価が上昇して配当利回りが下がっていますが(それでも3.5%もある)、リーマンショックが起こった2008年から2012年くらいまでは5%を超える利回りがありました。
MOがいかに優良企業であるかは、バランスシートを見ればわかります。MOのBSは一見すると危ない状態に見えるのですが、私にはこれがとても株主想いな素晴らしいBSに見えます。
流動比率という言葉をご存知でしょうか?
流動比率=流動資産 / 流動負債
流動資産とは現預金及び1年以内に現金化できる資産です。売掛金とか在庫って普通は1年以内に現金になりますよね。
流動負債の金額は1年以内に生じる現金の流出額を指します。短期の借入金とか仕入債務とかです。
会社がつぶれる時っていつですか?
営業赤字? 最終赤字?
違いますね。
キャッシュがショートしたときです。
営業利益率30%の超高収益企業でも資金繰りの目測を誤ってデフォルトを起こせば倒産です。逆に、赤字を垂れ流し続けている会社でも、銀行が支援して資金が回っていれば倒産しません。俗に言うゾンビ企業とはそういう会社です。
つまり、流動負債(1年以内に現金流出)の金額に相当する現預金を用意できなければ、会社は潰れるということです。だって流動負債は1年以内の支払義務がある金額なのですから。
ということはですね、普通は流動負債より流動資産が多くなくてはいけないのです。
流動資産 >> 流動負債 ←これが原則
そうでなければ、流動負債を返済する資金がないということになり、それは倒産の危機を意味します。流動比率が100%を切っている会社は危険信号です。
そんな会社の株を長期投資家が買っていはいけません。
なのですが、、
MOの流動比率っていくらだと思いますか?
超優良企業だから余裕で100%を超えていると思います?
ちなみに経営学の教科書では、流動比率は200%を超えることが望ましいと書かれています。
まあ、ここまで引っ張っているのだから答えは想像ついているかもしれません笑。
MOの流動比率は100%を切っています!
86%です。
MOは倒産の危機にありますw、、そんなわけないです、安心して下さい。
でも経営学のテキストに則ってMOのバランスシートを評価すれば、失格です。ダメなBSです。危険なBSです。
こんなイメージのBSです。
繰り返しますが、流動負債の方が流動資産よりも大きいです。
普通なら経営が厳しい会社のBSです。
でもMOは違います。
なぜ、MOはこんな危険なBSでも大丈夫なのでしょうか?
なぜ、MOの経営者はこんな危ないBSを作っているのでしょうか?
それは、たばこビジネスや食品ビジネスが常に安定した営業CFを生み出すからです。その安定したキャッシュを株主に還元しまくっているからです。
一見して流動負債を返済する原資がありません。BSだけを見るとないように見えます。でもその原資はPLからやってくるということです。安定した売上高を上げているので、その営業CFを原資に負債は問題なく返済できるということです。
これは並みの会社でやれることではありません。
圧倒的なブランド力のあるアルトリアだから、やれることです。
はっきり言って綱渡りの資金繰りに見えます。
綱渡りの危険なBSになるくらいまで、株主に資金を返還しているのです。会社内部に無駄に資金を温存なんかせずに株主の財布にキャッシュを返しているのです。
MOの一見すると危険なBSは、MO経営者の株主を想う気持ちが詰まっているように見えます。
こういう会社ですよ。長期投資で保有すべき会社とはこういう会社です。
安定して高収益なディフェンシブ銘柄なのが長期投資に相応しい銘柄の要素なのですが、やっぱり最も大事なのはコーポレートガバナンスなんです。如何に経営者に無駄金を使わせずに、株主に誠実な経営をしてもらうかということです。
それは数字で表れます。配当や自社株買いという数字ではっきり見ることができます。連続増配の高配当銘柄を狙うのは正しい発想だと思います。株主に誠実な経営をしている否かを金で示せっていう発想ですね。
配当などの株主還元指標だけでなく、こうやってバランスシートからも感じ取ることができます。バランスシートから滲み出ていますね、株主重視の経営スタイルが。
ああ、やっぱり米国株投資が一番ですよ。
たばこ銘柄は将来有望です。
アルトリア・グループ(MO)への長期投資は正解ですよ。
今日は更新多くてうれしい限りです。
今月の日経マネーにシーゲル教授のインタビューがあり、米国・新興国・日本の株式に超強気でした。それぞれの強気発言のあとには必ず「トランプ政権が保護貿易主義を打ち出さなければ」と書いてありましたがw。
私はそこまで強気になれず、様子見をしているうちに年初から円安と株高が進んでしまったので、買うタイミング逃したかなと毎日悶々としていますw。
現実逃避も兼ねて、以前Hiroさんに紹介していただいた本の中から「投資で一番大切な20の教え」を読み始めました。まだ、最初の方ですが、非常に興味深く読めています。紹介ありがとうございました。
>日経マネーにシーゲル教授のインタビューがあり、
そうですか!ぜひ読んでみます。
確か1年くらい前にもシーゲル教授は日経のインタビューを受けていて、その時も日本株と米国株に強気発言だった記憶があります。
トランプ大統領は壁も本当に作る気みたいですし(冗談だと思っていた)、ちょっと読めませんね。
私は自由貿易から保護貿易にここまで転換するのはそういう時代の流れであって、必ずしも保護貿易が悪とは思っていません。
>買うタイミング逃したかなと毎日悶々としていますw。
同じくですww。
読者さんがPMをNISAで買うのがお勧めと教えてくれてから、PMを買う機会をうかがっていましたがグングン株価が上がっていってしまった。。
現実はこんなもんですよね。
>「投資で一番大切な20の教え」を読み始めました・・
投資に関わらずですけど、勉強って最初は具体的なことを学んでいくんですけど、どこかで自分の中で抽象化して理解する必要がありますよね。
具体論→抽象化というプロセスは脳が疲れる作業ですが、これができると自分の中で腹に落ちて理解できる感じがします。
「投資で一番大切な20の教え」は良書ですが抽象的で読みにくい本だと思います。
それを興味深く読めるということは、ryoさんがすでにかなりの投資の知識をお持ちだからだと思います。
具体的な知識があってこそ、抽象論が理解できるのだと思います。
いや、本当に恐れ入ります。さすがです。
紹介しておいて何ですが、私は難解で眠くなって飛ばしたページ結構あります笑。
やはりHiroさんの分析はすごいですね。
私のような素人からすると株主還元の姿勢を読み取れずに「流動比率が100%を切っている→経営状態が危ない企業」と短絡的な結論を出してしまっていることでしょう。
巷に溢れる株式投資の本でもスクリーニングの際に流動比率が100%を切っているからダメと解説するようなものばかりなのだと思います。 つまり「株主還元の姿勢」まではスクリーニングではわからないということですね。
勉強になります!
やはり私に個別銘柄の投資は無理ですわ(笑)
いえいえ、とんでもないです。
先日読者様からのコメントで、フィリップモリスとアルトリアのBSの話題が出たので興味があって記事にしてみた次第です。
フィリップモリスは債務超過で注目を浴びがちなBSですが、アルトリアも同じようなBSだなって思いまして。
やはりたばこ銘柄の安定した収益力は魅力的です。
安定した収益力が安定した株主還元に直結します。
一方で、最近「たばこは嫌いなのでたばこ銘柄には投資したくない」という深いご意見も頂いて、それはそれで素敵な価値観だとも思いました。
>やはり私に個別銘柄の投資は無理ですわ(笑)
いえいえ、そんなことはないと思います!
私は銘柄選びのためにこんな分析記事を上げているというより、単に興味を持って楽しんでもらうために上げているだけです。
個別株投資は、長期であれば誰もが知る優良銘柄を買っておくだけという単純なものです。
とはいえ、、迷いますけどね(笑)。
チェルシーさんに個別株投資が無理だとは全く思いませんが、敢えてお勧めはしません。
ETF買って放置の方が圧倒的に気楽ですから。
更に関連して、こちらの記事も再読しました。
だいぶ賢くなった気がします(笑)
PMといい、先日ご紹介したMCDといい、純資産なんて気にしない!って感じですよね。
自己資本比率とか気にしない、とにかく株主利益を最大化すればいいという米国経営者の思いが伝わってきます。
今ボーイングの財務諸表を見ているのですが、この会社も純資産が激減していました。
それはもちろん、業績不振ではなく株主還元のためです。
どれもこれも米国企業はすげえ奴らばっかりで感心します。
米国株に長期投資して損をする気が全くしません。
はじめまして。
renと言います。
2か月前よりちょくちょくホームページを拝見させて頂いております。
会計からのアプローチによる分析は大変勉強になります。
日本でもJT、日産など高配当銘柄もありますが、世界の40割以上の
金額で取引されている米国市場が有望ということも理解出来ます。
これから持ち株及び金を売却して少額からスタートしたいと思います。
定年まで20年もありませんが、毎年、決まった金額を入金して高配当銘柄に投資
していきたいと思います。
これからもシャープな分析を期待します。
はじめまして。
コメントありがとうございます。
世界の時価総額トップの企業は21世紀に急成長した企業ばかりで、いずれも米国発です。
アマゾン、フェイスブック、ネットフリックスなど。中国のテンセントやアリババもありますが。
中国の共産党の指導力も凄いですが、やはり米国の民間セクターのイノベーションには敵いません。オリジナルは大抵米国ですから。
米国株は時価総額の大きさだけでなく、企業の収益性、利益率の高さ(だからこそ時価総額も大きくなるわけですが)、コーポレートガバナンスの盤石さもあります。
株主資本を無駄なく有効に活用して投資家のリターンを高めてくれるのは米国企業だろうと判断して、米国株に投資しております。
銘柄分析ではブルーチップを中心に取り上げています。
米国優良企業の財務の素晴らしさを知ってもらえれば嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。