米国株投資を始めて(=このブログを始めて)ちょうど3年半。まだまだ勉強中の青二才ですが、これまで100以上の主要米国株の財務データやバリュエーションを見てきて一つ思うことがあります。
それは、マーケットはまだ2008年のリーマンショックの暴落を忘れていない、どころかかなりの警戒感すら持っているのでは、ということです。金融市場の記憶は短いと言われますが、10年くらいじゃまだまだってことでしょうか。それとも、リーマンショックの衝撃がデカすぎて記憶に焼き付いて離れないのか。
現在の各銘柄のバリュエーションの違いから、そんなことを思います。
具体的に言えば
・特に生活必需品セクターのクオリティ株のバリュエーションが高い
・ハイテク企業のバリュエーションは利益成長力の割に低く感じる
・銀行株のPERが低い
といったあたりです。
利益が安定しているからPERが高くても不合理ではない、などと色々と後付けで説明したくなりますが、やっぱり生活必需品セクター大型株のお値段は高いです。具体的にはペプシコ(PEP)、コルゲートパルモリーブ(CL)など。2019年予想PERはペプシコが23倍で、コルゲートが25倍ほど。ちょっと高いなあと感じます。投資家が暴落に強いディフェンシブ株に資金を寄せているのかもしれません。
PERだけ見ると、ハイテクセクターにはPEPやCLと同等もしくはそれより高い銘柄が多くありますが、将来のEPS成長力を考えたらもっと高いPERでも良いのではと感じる時があります。ビザの予想PERは29倍、マイクロソフトは26倍、アルファベットは24倍です。
そして銀行株。このセクターはかなり売り込まれています。以下はXLF(金融セクターETF)とS&P500指数の1999年から2019年現在までの株価チャートです。
XLFが2008年の金融危機で暴落したのはご承知の通りですが、その後の反発はS&P500指数より弱いです。トランプ大統領が誕生して長期金利が急上昇した時は「ついに銀行株の復活か!」というムードも生まれそうでしたが、金利は思ったほど上がらず銀行株の株価は低迷したままです。
いくつか、主要銀行株のPERを見てみます。
ウェルズ・ファーゴ(WFC):9.3倍
JPモルガン・チェース(JPM):10.5倍
バンク・オブ・アメリカ(BAC):9.1倍
シティグループ(C):8.2倍
USバンコープ(USB):11.6倍
どうでしょう、軒並み8倍~11倍台です。益回りで言えば9%~12%もあります。
これはかなり安いのではないでしょうか。いやマーケットは賢いはずだから、銀行株の低PERには然るべき理由があるのかもしれません。低金利はニューノーマルで、FRBは今後利上げどころか利下げするかもしれません。そしたら、銀行株はさらに売り込まれるかもしれません。
最近バフェット(バークシャー)が銀行株を買い漁っています。BAC、WFC、AXP、USB、JPM、BKの6銘柄を足すと、バークシャーの上場株ポートフォリオの4割近くに達します。ポートフォリオの4割が金融セクターって、僕には怖くて真似できません。しかし、バフェットには銀行株が大反発する未来が見えているのでしょう。今の低PERが見直される時が来ると確信していないと、ここまで銀行株に集中投資できないはず。それはいつになるのか。マーケットからリーマンショックの記憶が消えた時が「その時」なのかもしれません。
バークシャーの話はこの辺にしておきます。僕は自分のポートフォリオが心配です。ポートフォリオの4割近くは生活必需品セクターで占められています。フィリップモリス、アルトリアグループ、コカ・コーラ、ペプシコ、ゼネラルミルズ、コルゲートパルモリーブ。HDVにも生活必需品セクターは多いです。
これら保有株がEPS成長力の割に高く評価され過ぎているのでは、という危惧の念を抱いています。リーマンショックの際に下落幅が小さかったディフェンシブ株は、投資家からの信頼が厚く相対的に高く評価されているのかもしれません。
そして、繰り返しですが銀行株は安い。まるで2008年の大暴落の記憶が、投資家を銀行株から遠ざけているかのようです。ハイテク株は銀行株ほどではないけど、やや安い気がします。少なくとも、生活必需品系よりもバリュエーションは低く見えます。これは2008年というよりは、2000年のITバブル崩壊の記憶が尾を引いているのかもしれません。
「金融における記憶の持続期間は極めて短い」
こう言われることがあります。
確かにウォール街の金銭欲がまたどこかで別のバブルを醸成させている可能性はあります。ただ、現代は一昔前よりは金融の記憶の持続期間は長くなり、マーケットの警戒感は簡単には解けなくなっていると思います。それはインターネットのおかげ(せい)です。ネット上に当時の暴落を回顧するニュースが溢れるほど流れます。特に昨年は「リーマン」10周年でもありましたから。これだけリマインドされたら、投資家は忘れたくても忘れられません。
ただただキャッシュフローが安定している優良株を買い続けるだけで、高いリターンを実現できるほど長期投資は甘くない。この3年間でそれを身をもって経験しました(3年じゃリターン測定期間としては短いのはわかってますが)。
買い値も重要。不老不死が実現しない限りは、長期投資と言えども100年、200年もの期間は想定できないです。20年、30年、いやできれば10年程度でそれなりの成果を達成したい。であれば、買い値にもこだわる必要があります。
私は「シーゲル本」に影響を受けて、生活必需品セクターを多くポートフォリオに取り入れてきましたが、その判断が本当に正しかったのか少しばかり不安です。2016年当時は無知と経験のなさから根拠なき自信に溢れていましたが、今はもう少し客観的に自分のポートフォリオを見つめています。
う~ん、どうやろなあ・・。まあペプシコとかコルゲートも法外な値段とは思ってません。もしそう思うなら売却してますから。両社とも財務データは非常に優秀ですし。ただ、ちょっと警戒はしてます。
生活必需品セクターが多すぎかな~。
これは私も感じていました。銀行株以外では、リーマンショックの際にビッグスリーのうち2社が破綻した米国自動車株も(テスラを除いて)総じて割安だと感じており、ピックアップトラックが好調な割に株価が冴えないフィアット・クライスラー株を保有しています。XLFも興味はあるのですが、利下げの可能性も捨てきれないので様子見といった感じです。
また個人的にはシーゲル本から導き出される結論は○○セクターがよいということではなく(シーゲル本人が書いてしまっていますが、、)、割安に放置されている銘柄(当時はタバコ銘柄)を世間の意見を無視して買い続けろということなのではないかと考えており、今で言えば銀行株や自動車株は長期的には良いリターンを生む気がします。
自動車株は軒並み低PERですよね。
ファンドマネージャーの堀古英司さんは最近のコラムでこんなことをおっしゃっています。
「自動車、航空、住宅建設、金融など、米国経済がリセッションに陥れば打撃を受けると見られるセクターが、軒並み5~10倍の低PER(株価収益率)という、あたかもリセッション真っ只中にいるようなバリュエーションで取引されています。」
割安に放置されている(ように見える)優良株を買い続けるのは勇気の要ることですが、そのリスクを取り続けた一握りの人が大きなリターンで報われるのでしょうね。
現在のタバコ株(BTIとか)、エネルギー株、銀行株あたりでしょうか。
いくら財務データが優秀でも、マーケットが見放している銘柄を自分一人信念を持って買い続けるのは大変なことだな~と痛感しています。
業績のディフェンシブ性が、逆に株価のシクリカル性を強める、という可能性はやはりあるかもしれないですね。
ディフェンシブな業績は継続的な自社株買いと安定した配当をもたらすので、高い株価を正当化し得ると思っていますが、どの程度のプレミアムが妥当なのかが今一つ判断が付かないですかね。
まあ、シーゲル氏が言っている実績PERで20倍~30倍というレンジを守れば大失敗はしないのかなと思っています。