コカ・コーラやクラフト・ハインツのような飲料・食品メーカー、プロクター&ギャンブルやユニリーバのような日用品メーカー、ジョンソン&ジョンソンやメドトロニックのようなヘルスケア企業、これらの企業はディフェンシブ銘柄と呼ばれます。

ディフェンシブというだけあって守備力が高いです。金融危機など強いショックにも耐えて利益を上げ続けることができます。ただし、現在のような景気拡大局面でも利益成長力は鈍く攻撃力は低いです。

ディフェンシブ株の長期保有は簡単そうに見えて実はかなり難しいです。簡単そうと言うのは、「所詮長期保有なんて株を買って放置するだけだろ?」と言われれば確かにその通りなので、やろうと思えば金さえあれば誰にでも実践可能です。

ただ、実際に株を長期保有するのは難しいです。特にディフェンシブ株は難しいところがあります。なぜかと言えば、ディフェンシブ株は市場平均をアウトパフォームする時期よりもアンダーパフォームする時期の方が遥かに長いからです。

ディフェンシブ株は一般的に景気後退局面(リセッション期)に市場平均を超えるパフォーマンスを発揮すると言われます。実際、2008年のリーマンショックの時にはコカ・コーラなどの生活必需品セクター銘柄はS&P500を大きく超えるリターンを残しました。プラスリターンというより、マイナスリターンの幅が小さいという意味ですがね。株価の落ち込みが小さいということです。

以下は2008年初~2009年末までの、IVV(S&P500連動ETF)XLP(生活必需品セクターETF)の株価チャートです。リーマンショックの威力は凄まじくXLPの株価もさすがに下落はしていますが、下落幅はS&P500よりも緩慢です。

 

リーマンショックのような急速な信用収縮は例外的としても、そもそも経済の循環として景気拡大局面の方がリセッション期よりも長い傾向にあります。
(※リセッションとは2四半期連続でGDP成長率がマイナスになることと定義されています。)

以下は1990年からのGDP推移のグラフなのですが、グレーになっている期間に注目して下さい。これがリセッション期を指しています(汚い字ですみません)。

(出典:ウォールストリートジャーナル)

1990年(当時Hiro3歳)からリセッションは3回ありました。
①1990年半ば~1991年前半
②2001年(ITバブル崩壊)
③2008年~2009年半ば(リーマンショック)

1990年から2017年まで27年という期間があるわけですが、その内リセッション期を全部合わせても3年半ほどです。割合で言えば10%ちょいです。そんなもんです。それ以外は経済は成長していた時期です。

つまり、投資期間の大半でディフェンシブ株はS&P500などのインデックスや景気循環銘柄に負ける可能性が高いのです。もちろん、景気拡大期であってもディフェンシブ株が相対的に高いパフォーマンスを出すこともあります。ただ、ディフェンシブ株が本領を発揮するのはやはりリセッション時です。経済成長の落ち込みを受けてマーケットが悲観的になり、あらゆる銘柄が売られる中にあってディフェンシブ株は耐え凌ぎます。

生活必需品やヘルスケア領域は、たとえ景気が落ち込んでも人々が使うお金の量がそんなに減りませんから、企業の儲けもそれほど減りません。よって利益が維持され配当が維持され、結果として株価の下落も限定的となります。

グロース株やインデックスに投資している人は株価値上がりでガンガン儲かっているのに、ディフェンシブ株に投資している人は配当+αくらいしか儲けがない、むしろ株価が下落して損失。そんな時期が長く続いても不思議じゃありません。もうディフェンシブ株への投資なんて止めて、FANGの成長の波に乗りたい!って思うのも自然です。

ディフェンシブ株に投資して高いリターンを得たいと思うなら、そこそこ長い投資期間の確保が必須だと思います。具体的には最低でも30年は見越しておきたいところです。それだけ長期にわたって投資を続ける忍耐力に加えて、マーケットが好調で世の投資家が浮かれている時でも「配当さえ頂ければそれで良いんだ」という姿勢で居続けなくてはなりません。

これはそんなに簡単なことではないと思います。そもそも、我慢強くディフェンシブ株を長期保有したからって本当に市場平均を超えるリターンを得られるという保証はありません。散々我慢した結果、結局アマゾンやネットフリックスの株を買ってた方が儲かったわってシナリオも当然想定されます。

優良ディフェンシブ株への長期投資は金さえあれば誰でもできるイージーゲームに見えますが、事はそんな単純ではありません。強い信念と忍耐力が必要です。